18節の千葉戦でU-20W杯後初めて試合に出場した冨安。井原監督は、その成長の跡を認めたが、本人はまだ満足のいくパフォーマンスではないようだ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

写真拡大

 日本のCBとして異国のアタッカーたちと死闘を繰り広げてから早2週間が経過した。U-20ワールドカップで奮迅の活躍を見せた冨安健洋がJリーグの舞台に戻って来た。
 
 コンディションを整えさせたいという井原正巳監督の意向で、出番は今節の千葉戦からとなった冨安。しかし、この日は難しい立ち回りを強いられる。3バックの左CBでスタートしたが、前半15分過ぎに「想定した相手のシステムと違うものがあった」と指揮官が4バックへの移行を決断。そのため、ポジションをボランチに変えることになったが、後半途中からは相手の布陣に対応するべく再び3バックの一角に移された。しかし、その難局に動じないのが冨安の真骨頂だ。最後まで集中を切らさず、チームの勝点1獲得に貢献した。
 
「守備のところでは経験から来る力強さや余裕が出てきたのかなと思っている。今日は最終ラインとボランチをやったけど、フレキシブルに対応できる能力がより高くなってクラブに帰って来てくれた」
 井原監督もワールドカップを経験した冨安の成長に目を細め、復帰初戦のプレーに満足感を示した。
 
 しかし、冨安自身は大舞台で力の差も痛感させられた。
「U-20ワールドカップでできなかったことは、プレッシャーを掛けられたなかでのビルドアップやロングボールの質。そして、ゴール前のここというピンチで身体を張って何がなんでも守り切る力」世界との差をそう語った冨安だが、戻ってきたJのピッチでは、上々の再スタートを切ったと言えるだろう。
 
 ただ、世界の舞台で手応えを得た「しっかりと意図を持って、予測をしながら相手を動かしていければ通用すると感じた」という守備が100パーセント発揮できていたかと言えば、そうではない。代表からクラブに戻って2週間ほど、自身が離れていた約3週間でチームの守備は成熟し、個々の連係も見違えるように良くなっていた。
 
 だからこそ、守備を束ねる岩下敬輔は「(冨安とプレーを)合わせる時間が1週間しかなかった。トミ(冨安)がU-20に行く前からチームも変化しているので、自分たちからズレやギャップを作りたくなかった」と考え、冨安にどこまで守備を任せるかを悩んだ。
 
 一方で岩下は、千葉戦の冨安についてこうも語っている。
「トミに任せても良かったかもしれない。彼の能力からすれば、もっと広いエリアで守備ができたと思う」
 
 試合後、ベテランCBが明かしたように、試合の状況を踏まえたうえで敢えて動きを抑制した側面があるのだ。世界大会を通じて成長したプレーを出すためには、周囲との関係性を深める作業が今後必要になるだろう。
 
「世界大会を経験してからのJの試合でしたけど、自分の中で余裕を持ってできた感触はないし、今日に関しては90分で何かしたかなと思えるような出来だった」
 
 この言葉から分かるように当然、本人も千葉戦のプレーに納得していない。しかし、その向上心こそが彼の源流であり、20年の東京五輪、その先にあるA代表入りへの礎となるはずだ。
 
 自身の飛躍のために――。冨安は韓国での悔しさをバネに、チームで結果を残すことを誓う。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)