臨時収入の「無申告」は摘発対象になるか

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■20万円以下でも侮ってはいけない

その道の専門家として評判が広まるなどすると、講演や原稿の依頼が舞い込み、思わぬ臨時収入を手にすることがある。そこで気になるのが、みんな正直にその所得を申告しているのだろうかということだ。

「そもそもサラリーマンの場合、給料や退職金以外の所得(下図参照)が20万円以下であれば、所得税についての申告は不要です。一方、臨時収入が20万円を超えた人がみんなきちんと申告しているかというと、その実態はわかりません。しかし、少なからぬ漏れがあると見るのが妥当でしょう」(税理士・高山弥生氏)

高山弥生税理士は、現状把握の難しさを指摘する。では申告しないほうが得するケースなら、ダンマリを決め込めば見落としてもらえるのだろうか。

「税務署は、雑誌やテレビを細かくチェックしています。今まで税務署からお尋ねがこなかったとしたら、それはたまたま、と考えたほうがいいでしょう。そして、なんといってもバレるきっかけは『支払調書』です。講演料や原稿料の場合、報酬を支払う側が同一人物に対し年5万円を超えて支払った場合には、税務署にその金額を報告しているわけです。特に今後は、マイナンバーによってしっかりと捕捉されます」(同)

しかも、マイナンバーの実績を上げるために、これまで取り逃していた講演料や原稿料にかかる税金は狙い打ちされるとの見方も出ている。

申告を怠る人の中には「源泉徴収されているのだから、税金を納めていないわけじゃない。見つかっても大目に見てくれるだろう」と高をくくる向きもあるのではないか。

「税務調査が入る前に、『忘れてました』と自主的に期限後申告すれば、無申告加算税は納付税額の5%ですみます。しかし、『無申告のまま』となると、罪はさらに重くなる。50万円以下なら15%、50万円超なら20%が加算されます。悪質な隠ぺいと判断されれば、さらに重い税が加算されます」(同)

しかも、それだけではすまない。

「当然、過去に遡って支払調書や銀行口座などを調べられます。次から次へとホコリが出る、という事態にもなりかねません」(税理士・高山弥生氏)

一方、先に挙げた「20万円以下なら申告しなくてもOK」というのは所得税の話。住民税については市区町村に申告する必要がある。

「これまでは、所得税が無申告だと、その分の住民税は実質的に取れないケースが多々ありました。しかしマイナンバーによって、しっかりと徴収される可能性が高くなります」(同)

納税者としては、無駄に税金を支払わない知恵も必要だ。

「講演料や原稿料などの雑所得は、経費を差し引いた金額が課税対象となります。交通費や書籍などの資料代、文具代など、かかった費用もしっかり申告しないと損をします」(同)

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高山弥生
税理士。一般企業に就職後、税理士事務所へ。試験組と国税OB税理士という師匠を得て、恵まれた環境で税理士業務を学ぶ。宅建、CFPの資格も有し税金だけにとどまらない、お客様の家族全員が幸せになれるアドバイスを心がけている。
 

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(小澤 啓司)