協定の再交渉も匂わせたが…… ©共同通信社

 6月1日、トランプ大統領は、ホワイトハウスにおける演説で地球温暖化対策の国際枠組「パリ協定」から離脱することを表明した。

 トランプ氏は離脱の理由を「(協定に縛られることで雇用喪失や賃金低下などを招き)米国の労働者に負担を強いている」と語ったが、翌日付のニューヨーク・タイムズ紙で、スーザン・ライス前大統領補佐官はこう綴った。

〈トランプ大統領は短期間に大惨事を起こした。中核となる同盟国との関係を弱め、米国の価値観と指導力を放棄してしまった〉

 米国産業界でさえ、石炭業界などの一部を除いて、離脱を批判しており、国際社会もフランスやイタリアなど同盟国が遺憾の意を表明した。

 トランプ氏は大統領選の公約にも〈パリ協定からの離脱〉を掲げていたとはいえ、なぜこのタイミングで、国内外で大きな反発を招く政治決断に踏み切ったのだろうか。

「今回の決定には、首席戦略官のスティーブン・バノン氏が深く関わっている。逆に、これまでトランプ氏の政治決断に影響を与えてきた娘のイヴァンカ氏とその夫で上級顧問のクシュナー氏は、協定離脱に反対し続けたとされています」(現地ジャーナリスト)

 実際、離脱を発表した演説の場にクシュナー夫妻の姿はなかった。

「2人はユダヤ教のシャブオット(五旬祭)のため午前中、礼拝堂に行き、その後、子どもたちと過ごすため自宅に戻っています」(同前)

 トランプ氏がバノン氏の提言を受け入れた背景には、「ロシアゲート」疑惑の影響もあるという。

「疑惑で支持率が40%台まで下がった。政権を維持するには、トランプ氏の最もコアな支持層である“保守派”を固めるしかない。バノン氏はその保守派の代弁者であり、彼らに最もウケる政策を提案した面がある」(日米外交筋)

 一方で、前出のライス氏の原稿はこう続く(一部中略)。

〈米国は世界から孤立し、欧州と中国がパリ協定を必死になって守っていくことになった。新たな危機が起きるのに時間はそれほどかからないだろう。もし中国が南シナ海で攻撃的行動をとったら西側諸国が中国と対峙するだろうか〉

 日本にとっても、離脱の代償は高くつく可能性がある。

(小山 貴)