「待ち合わせは”東京”で。」次のデートの指定場所にそう言われたら意外に思うかもしれない。

東京駅エリアのイメージは、一見デートとはかけ離れている。出張帰りのサラリーマン、丸の内OL、観光客…色んなシチュエーションが浮かんでも、デートをする場所としてはあまり頭には入っていなかっただろう。

しかしそんな東京駅も、夜にはガラリと顔つきが変わる。真正面に緑深い皇居が広がり、背後には荘厳に灯された駅舎…このシチュエーションが大人のデートに相応しくないとは言わせない。



ここでしか見られない壮観な夜景が味方をしてくれる『AUXAMIS TOKYO』

出張帰りになんとか新幹線に滑り込んだ。約束の20時には間に合いそうだとほっと息をつく。彼女には「待ち合わせは東京で。」と伝えてある。

4つ下の彼女はよく気のきくしっかり者。普段は歳の差を感じさせないのに、笑うとあどけなく、仕事で疲れた時こそ彼女の笑顔が見たくなってしまう。

「あの辺はランチしかしたこと無いの、なんかワクワクする!」彼女からの返信を見て頭に浮かんだ店が、『AUXAMIS TOKYO』だ。丸ビルの35階から夜景を見下ろし、正統派フレンチを楽しめる。以前ランチミーティングで訪れた際、取引先の女性社員に大好評だったのを思い出したのだ。

待ち合わせた彼女と店内に入ると、大きな窓から広がる圧巻の景色が目に飛び込んでくる。高層階から見えるのは、光輝く東京駅のプラットホーム。ホームに滑り込む新幹線のなめらかな動きと光が幻想的で、ベタな夜景じゃないのが逆に良い。



大きく取られた窓から、贅沢な景色が一望出来る。

この店のディナーコースは全部で3種類。一番リーズナブルなコースでも、前菜とメイン、どちらも好みのものを選べるのが嬉しい。

前菜だけでも5品と充実しており、ペアリングのワインと楽しめば、お腹も心も満たされるはず。

メインは、こだわりの黒毛和牛だけでなく、鴨や仔羊なども用意されていて選択肢が多い。たくさんの前菜をいただいた後でも重すぎず、女性を喜ばせるコースであることは間違いない。



『骨付仔羊ロース肉のロースト』しっとりとした肉質と、軽めのソースの相性が抜群の一品。(メニューは一例)

「こうして新幹線見てると、なんだか旅行したくなっちゃうね。」
窓から広がる東京駅を見ながら、にこにこと話す彼女を見れば、出張帰りの疲れがじんわりとほぐされていく。

「この夏、京都の川床でも遊びに行こうか。」
いつもよりワインが早く回ったのだろうか、思わず誘ってしまった。

驚いた顔の彼女を見て、唐突過ぎたかと思っていると、満面の笑みで「約束ね!」と返してくれた。

『AUXAMIS TOKYO』からの夜景が、一役買ってくれたのだろう。デザートで歓声をあげたばかりの彼女が、遠くに見えるディズニーランドで上がった花火にまた喜ぶ姿を見て、この店にして大正解だった!と心から思うのだった。


八重洲の喧噪から一転!八重洲で寛げる焼鳥はこの店。



路地裏に灯る行灯が、風情ある入り口。
八重洲でサシ飲みならここ!しっぽりできるこだわりの名店『焼鳥 本田』

地元・大阪の高校の同窓会で、片思いだった彼女と再会して盛り上がり、「今度は二人で」と決まったのは先週のことだった。お互いの職場が同じ八重洲だと分かった途端、「飲もうよ!」とシンクロしたのは嬉しかった。

八重洲は美味い店が多いが、どうしても大衆的になりがちだ。男同士で一杯ひっかけるには最適なのだが、久しぶりの、しかも東京であか抜けた彼女と一緒なら、もう少ししっとりとした店がいい。

思いついたのは八重洲の裏路地にひっそりとある『焼鳥 本田』である。食通の先輩が「女性とサシで八重洲ならここ」と話したのを思い出したからだ。

「待ち合わせは東京で。」
分かりにくい場所なので、駅から一緒に行く事にしたのだ。八重洲口から歩いてすぐだが、注意しないと見逃してしまうほど細い径を入ったところに、この店はある。

サラリーマン達のガヤガヤとした喧噪が途絶え、二人の世界に入り込める場所である。



鶏も野菜も、絶妙な焼き加減の串たち。

「大阪から出てきてもう何年も経つんやもんなぁ…。さすが、ええ店知ってるやん。」
のんびりとした彼女の関西弁に、そうそうこんな感じだった!と懐かしい気持ちが込み上げる。

シラフの時のお互いの方がよく知っているという感覚は、大人になってからは経験しないので、なんだか照れくさい。彼女に少し緊張しているのがバレないよう、勢い良く生ビールで乾杯する。

『焼鳥 本田』は夜のコースが一つのみ。希少部位や一品、〆の食事は追加で注文出来る。歯ごたえを楽しめる程新鮮な比内地鶏の焼鳥はいたってシンプル。

それもそのはず、この店では”たれ”の串は一切無い。鶏そのものを楽しめるよう、部位ごとに塩、オリーブオイル、バルサミコ、山椒などレパートリーに富んだ味付けがされている。

こりこりのハツに手を伸ばしながら、突然彼女が可笑しそうに笑い出した。
「放課後にいつも出てた屋台で、甘いたれべったりの焼鳥、よう食べたん思い出したわ」
すっかり忘れていた思い出が彼女の言葉で鮮やかに蘇ってくる。

「それが今やこんな大人な焼鳥屋で、旨い酒まで飲んでなあ…」
気を許して笑顔で掛け合うことができる相手に、東京にいてこそ分かる、同郷という安心感をひしひしと感じる。



カウンターのほかに、小さなテーブルと小上がりのあるこじんまりした店内。

「反対側やけど、丸の内の方から駅舎を見て帰らへん?」

彼女ともう少し一緒に居たくてそう誘えば、いいなぁ!と明るい声が帰ってきた。地方から出てきた人間にとって、暖かいオレンジの光に照らされた駅舎は、しみじみと感慨深い。

八重洲と丸の内、全く違った空気感を見せてくれる東京駅は、やっぱり面白い場所であり、同郷の彼女と歩けばより一層魅力的に映るのだった。


前菜から大満足!厚切りローストビーフの名店!



賑やかさが程よい店内は、どんなデートも気まずくさせない雰囲気。
傷心のあの人も笑顔にさせる、絶品ロースビーフの店『ステーキ&トラットリア カルネジーオ』

「長年付き合って結婚も考えていた彼と別れた」と落ち込む彼女を誘ったのは、もちろんずっと気になる人だったからだ。

彼との問題の相談を受けるたび、「彼女を幸せに出来るのは、この自分なんじゃ無いか」という想いが募るばかりだった。

金曜日の昼過ぎに、「お願い…元気が出るものが食べたい」と呟くように送られてきたLINEを見て、すぐさま予約をしたのが『ステーキ&トラットリア カルネジーオ』である。



メープルシロップとホイップバターをつけていただく「ポップオーバー」は、食べ過ぎに注意したいほど、クセになる美味しさ。

『カルネジーオ』は、東京駅から歩いて5分ほどの距離にあり、休日は予約必須で、平日でも多くの人で賑わう店だ。

一番のおすすめは「ローストビーフのコース」。名前の通り、メインは厚切りのローストビーフだが、初めに出される、そして好きなだけいただけるという「ポップオーバー」から、料理の質には期待が出来る。

彼女が美味しいお肉に目がないのはもちろん知っていたが、金曜の夜でも彼女の話をじっくり聞ける場所がいいと、丸の内のこの店にしたのだった。



「前菜三種盛り」は内容が日ごとに少しずつ異なるので、行く度に楽しめる。

「前菜の3種盛り」は、前菜と名乗るには十分すぎるボリュームで、話をしながら少しずつつまめば、どんどんお酒が進んでしまう。レバーパテやアボカドのタルタルなど、存在感はメインに負けないものがある。

ワインが進むにつれて彼女の口から出てくるのは、別れた彼の話ばかりだ。責任ある仕事に没頭する所が男らしくて好きだったこと、しかし家事能力は皆無、深夜帰宅続きで結婚するには自分がキャリアをあきらめないといけない状況だったということ……。次第に聞くのがつらくなってくる。



唸ってしまうほど柔らかなローストビーフは一度に食べきらず、スタッフに声をかけて炭火で炙ってもらうことも出来るので、飽きずに味わえる。

この店のローストビーフは、リブロースを味付けした後丸一日寝かせる事により、しっとりと瑞々しい柔らかさを堪能させてくれる。脂身と赤身を一度に楽しめるローストビーフは、肉好きには堪らない一品である。

しかし、そのメインがくる頃には、彼女はほとんど泣きそうな顔をしていた。たっぷりとしたローストビーフを口いっぱいに頬張った彼女が、目に涙をためながらも「うん、美味しいって思える。まだ大丈夫ね」と笑うのを見て、ほっとする反面、自分の不甲斐なさに嫌気が差すのだった。



「春菊のサラダ」は、さっぱりとさせてくれるので、お肉の付け合わせとして相性抜群。

傷心の彼女も、絶品のローストビーフを食べ進めるうちにどんどん前向きになったようで、最後の一口は幸せそうな顔で堪能している。

二軒目にはパレスホテルのラウンジバー『プリヴェ』で一杯…なんて考えていたが、彼女の安心しきったような顔を見て、今夜は止めにして、駅まで送っていこうと思い直した。


並んで歩く駅までの道、いつもよりずっと彼女との距離が近いように感じる。

「東京の駅舎は元気がでるから大好きなんだ。綺麗だね…」
少し寂しそうに言う彼女の顔を見て、本当に気持ちが落ち着いたら、やっぱり改めて想いを告げようと思う。そしてその場所は、この街”東京”にしようと心に決めるのだった。

色んな人間が混ざり合う街だからこそ、様々なドラマが生まれるのだろう。定番のデートコースに飽きたなら一度、「待ち合わせは”東京”」を試してみて欲しい。