女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは、普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、現在、無職の早川智世さん(40歳)。東京都江東区内の実家に住んでいます。智世さんの実家は夜から営業する飲食店を経営していますが、お店を手伝ったことはないそうです。

智世さんは洗いざらしたボーダーのTシャツに、レンガ色のカーゴパンツをはいています。足元は迷彩柄のビーチサンダルで、爪水虫になっているのか、足の親指の爪が真っ白。かかとのひび割れたスキマに、黒い汚れが入りこみ、幾何学模様を描いています。

ヘアスタイルは、伸ばしっぱなしのセミロングで、こめかみ部分が白髪になっています。全身から犬を飼っている家のような匂いが立っています。

待ち合わせは、智世さんの自宅近くのファミリーレストラン。ビールの中ジョッキをオーダーし、来るや否や半分ほどイッキ飲み。まずは学歴から伺いました。

「日本で一番学生数が多い大学に、一浪して入り卒業しました。父親が高校中退でで苦労したみたいで……“絶対に大卒の勤め人になれ”と子どもの頃から塾に行かされて、勉強をさせられたんですよね。勉強が大嫌いなのに、成績が悪いと“金をかけているんだからきちんとやれ!”と、叩かれたり殴られたりしていました。中堅の都立高校に入って、ちょっとワルな友達と遊んでしまったから浪人。親はポンと予備校代を出してくれて、“大学に入るまで勉強させられる、ヤバい”と、1年間頑張ったんです」

大学だったらどこでもいい、と言う両親のために、ムリせず合格できる有名校を厳選して選んだ智世さん。

「学費が割安なところもよかったんですよ。4年で卒業し、当時、東証二部のメーカーに内定をもらいました。親は万々歳でしたね。でも女子は単調なデスクワークばかりで、会社のオジさんたちの小間使いみたいな仕事ばかり。その一方で男子は営業や開発など、未来が見える仕事に就いて、会社のお金でいいものを食べたり、人と会ったりして経験を重ねている。結局、大卒の総合職扱いで入っても、女は安い労働力でこき使われるんだな……と思い、3年目に転職をしました」

転職先は憧れだったテレビ業界だったが……

「テレビ関連の制作会社だったのですが、ワンマン社長が経営する、想像を絶する会社。“明日の朝までに、同僚が逮捕された経験をもつ上場企業に勤務する男を3人集めてこい”とか、“1個5万円の高級クリームを使っている40代の主婦を2人探してこい”など、そんなリサーチばかりさせられていました。できないと“バカ!”とか“死んでお詫びしろ”とか社長が怒鳴る。この会社は1か月でバックれて、給料も経費も支払われませんでした。今思い出しても、あのときの電話代や喫茶店代、交通費などの5万円を返してほしいと思います。その後、知り合いに誘われて、CMの制作会社に転職。ここには5年間勤務し、寿退職しました」

しかし、結婚生活は2年しか続かず、離婚したという智世さん。相手はどのような人だったのでしょうか。

「31歳のときに、どうしても結婚したかった時期があったんですよ。そのときに紹介された、48歳の人とパッと入籍しちゃいました。親にも相談しませんでしたね。その元夫はFランクの大学で非常勤講師をしていて、年収は300万円くらい。彼の家に転がり込んで新婚生活スタート。世田谷区八幡山駅から徒歩20分くらいのところにある、超オンボロアパートで、流し台の下の扉を開けると、大きなドブネズミがいたことも。離婚の原因は、彼の束縛とアルコール依存、滋賀県の実家に戻るというのについて行かなかったこと。離婚してから音信不通だったのですが、去年共通の友人から、彼がガンで亡くなったと実家に電話がありました」

25歳くらいのときから、お酒が手放せなくなっていた。昼間から飲むことも。

一度大手企業を辞めてしまうと、二度と正社員にはなれない。後悔するうちに、お酒に手が伸びて……〜その2〜に続きます