今週の特集は、「緊急特集 驕るな!安倍首相」と題して、「総理のご意向」文書をめぐっての文科省内の動きや、私的な場での政権批判で更迭された釜山総領事の事件などを伝える。

 記事には加計学園の問題について、現役の文科省職員からも内部告発があり、前川前次官は「私以外にもこの問題を告発している文科省職員が少なくとも三人はいるようです」と証言している。野党議員のもとに匿名の省内メールがFAXされ、「送信元は文科省にあるローソンと判明」している事例もある。ヘッダーに印字される発信元で出どころを明らかにし、怪文書ではないと暗に伝える、これが現役の職員にとっての精一杯の抵抗なのだろう。


驕れる安倍内閣 国会で菅官房長官と声を交わす首相 ©共同通信社

理論武装する「巨人軍」と「安倍内閣」

 記事は官界での話にとどまらず、「中曽根、福田両元首相の嘆き」との小見出しが躍りもする。“中曽根”と“福田”が並ぶと、三角大福中の福田赳夫? と思ってしまいかねないが、康夫のほうだ。

 それによれば、福田康夫は近しい関係者に、こう漏らしたという。

「安倍政権の公文書管理はなっていない。森友の件も加計の件もそうだ。保存のために作った法律を廃棄の根拠にしている」

 法律を逆手に取って文書を廃棄する。そのあり様に、週刊文春記者・西崎伸彦が昨夏に著した巨人軍「闇」の深層』(文春新書)を思い出してしまう。

 その序章にはこうある。「江川事件以来、巨人軍は法律解釈を徹底的に駆使した理論武装によってすべてに対処するようになった。それが“抜け道”や“盲点”と世間から非難されようとも、法律的に正しいと主張し、自らのやり方をよしとしてきた。その姿勢は、球界の盟主としての“驕り”とも受け取められた」(注1)

 なにやら、巨人軍を安倍内閣と読み替えても意味がとれそうな一文である。


江川卓「空白の一日」事件の記者会見 ©共同通信社

読売記者の質問に見え隠れする「コンプラ軍団」の一端

 こうした規約や法律を徹底的に研究し、抜け道や盲点を見つけ、居直る読売グループの勢力を、西崎は「コンプラ軍団」と呼ぶ。

 このコンプラ軍団を率いていたのが山口寿一で、現在の読売新聞グループ本社の社長だ。その読売新聞はいま、厳しい批判にさらされている。もうひとつの特集記事「読売『御用新聞』という汚名」によれば、前川前次官の出会い系バー記事についての批判が読者センターに相次いで寄せられているという。また現在の社会部長は山口社長に近く、「“山口組”と呼ばれる側近の中でも“直参”と評される存在」だそうな。

 前川前次官の記者会見の場で、「守秘義務違反では?」と問うたのも読売新聞の記者である。これに対し、「本来、守秘義務の壁と戦う記者の側からそうした質問をしたのには驚きました」と他紙の記者の批判が前掲記事にあるが、守秘義務を持ち出すあたりに、“コンプラ軍団”の一端が見えもする。

福田康夫の義憤と予見

 ところで福田康夫が公文書管理について、現政権に義憤をいだくのは、公文書管理法の制定を主導したのが、ほかでもない福田康夫だったからだ。


いつも恬淡としている福田康夫元首相 ©榎本麻美/文藝春秋

 今年2月、朝日新聞に掲載されたインタビューでこう語っている。

「文書が残ることで日本の歴史は残っていく。正しい信頼できる資料を、みんなが納得できるような形で残していくことが必要だ。何が真実なのかわからないままお互いに言い合いをした結果、争いが生まれる。そういうことにしてはいけない」(注2)

 森友学園の土地売買の交渉記録の廃棄や、前川前次官の「総理のご意向」文書など、ここ数ヶ月の森友・加計の騒動を予見するかのようなコメントである。

 なお週刊文春史上、屈指のスクープといえる「野坂参三、同志を売った密告の手紙」(1992年)は、大粛清の最中、同志を売り処刑に追い込んだ野坂参三の手紙を見つけ出したことで生まれる。この共産党の名誉議長だった野坂参三を100歳にして除名させたスクープは、手紙ひとつを半世紀以上残していた、ソ連の徹底した文書保存の賜物であった。

注1)7ページ
注2)朝日新聞デジタル2017年2月2日

(urbansea)