プロフェッショナルな医師になるためには

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患者の個人情報をSNSに出してしまう、がんの告知中に居眠りをする、無断で遅刻や欠席を繰り返す――。倫理観や態度に問題のある医師に、万が一診断されることになったら不安で治るものも治らないかもしれない。

こうした医師を世に送り出さないためには、学生のころから「プロフェッショナリズム」を評価・指導することが重要であると考え、京都大学医学部医学科が4年前から「アンプロフェッショナルな学生の評価」という取り組みを行っている。

学生のうちに問題を洗い出し改善する

京都大学医学部医学科医学教育・国際化推進センターのウェブサイト上で公開されている評価の書式によると、「アンプロフェッショナルな学生」とは、

「診療参加型臨床実習において、学生の行動を臨床現場で観察していて、特に医療安全の面から、このままでは将来、患者の診療に関わらせることが出来ないと考えられる学生」

と定義されている。つまり患者の診療にあたっている現場での実習で、医師として明らかに不適切と思われる態度や行動が見られた医学生を指導している医師が報告するというものだ。あくまでも成績とは独立した評価だが、報告があった場合は指導の対象となり、報告が複数の診療科から出された場合は留年もあり得る。

なぜこのような評価を始めたのだろうか。評価法の考案者である同センターの錦織宏准教授にJ-CASTヘルスケアが取材をしたところ、「医療現場で起こる可能性のあるトラブルの原因を、学生のうちに見つけだし改善させる」ことが目的だと答えた。

「(卒業後に経験を積むための研修を受けている)研修医になってしまうと忙しくなってしまい、こうした指導を受ける余裕がありません。学生の段階で評価が必要であると考えました」

医師にプロフェッショナリズムが徹底されていないことで起きるトラブルは医療現場でも常に問題になって、早期の改善が求められているという。では、具体的にはどのような態度がアンプロと見なされるのか。「アンプロフェッショナルな学生の報告例」に上がっている事例を見てみると、

「ナースステーション内でゲームをしていたので看護師が注意をすると『看護師のくせに』と逆ギレした」
「患者に失礼な態度を取り、クレームが来たことを伝えると『あんな患者は来なくていい』と言い出した」
「実習で担当した外国人の患者からクレームが入ると、差別的な発言を患者に聞こえるような大声でした」
「インフルエンザに感染していることを隠して患者に接していた」

など、全12例からいくつか抜粋しただけでも常識はずれの驚きの内容だ。すべてが実際に報告された内容ではなく、多施設での事例などを参考に作成したものだが、類似したようなトラブルが起きているとすれば大変なことだ。

評価に賛否はあるが

錦織准教授は、

「気をつけなければパワハラやアカハラの原因となる危険性もあるため、賛否を含めた意見やフィードバックを踏まえつつ、今後も評価の設計を考えていくつもりです」

ちなみに、現場でアンプロフェッショナルな医師が増えているという実態はあるのだろうか。都内で総合病院に勤務するある医師は、J-CASTヘルスケアの取材に「現場全体がどうかはわからないが、私が把握する限りここ数年で急にコミュニケーションや態度が原因でトラブルを起こす医師が増えたとは思わない」としつつ、こう話した。

「かつては治療に関する技術や知識を有していれば、多少の"欠点"には目をつぶるという風潮もあったかもしれません。診療をしていればいいのではなく、プロとしてどのような姿勢で医療を提供するかがより問われるようになったのではないでしょうか」