シリア北部ラッカのメシュレブ地区で建物から立ち上る煙(2017年6月7日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が首都と称するシリアのラッカ(Raqa)を奪還するために、米国が支援するクルド人とアラブ人の合同部隊「シリア民主軍(SDF)」が攻勢を強めている。

 ラッカをISから奪取すれば、問題は一つ解決するかもしれない。だが、また別の問題を生むだろう。この都市はシリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権とその北側のライバルであるトルコ政府も狙う戦略的要所だ。ISを追放した後、誰がラッカを支配するのだろうか。

■ラッカには今、誰が住んでいるのか?

 トルコとの国境から80キロに位置するラッカの人口は約30万人とされる。うち約8万人は、シリア内戦勃発後に、国内の他の地域から逃げてきた人々だ。

 フランスの地理学者、ファブリス・バランシュ(Fabrice Balanche)氏によると、内戦前のラッカの人口の大半はアラブ人だったが、約20%は「市の北部のスラムに集中していた」クルド人だった。

 だが内戦開始から2年後の2013年、反体制派と国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系の武装勢力がラッカを掌握。その1年後にはISの手に落ち、少数派の住民の大半が逃げた。

 クルド人、アルメニア人、シリア系キリスト教徒が逃げた今、「ラッカの人口は99%がスンニ派アラブ人だ」とバランシュ氏は言う。

■ラッカを統治するのは誰か?

 4月半ば、シリア民主軍はIS敗退後のラッカを動かしていくために「市民評議会」の創設を発表した。メンバーはラッカ出身者で構成するとしている。しかし、この評議会は、アラブ系の反体制派やその同盟相手のトルコなど、クルド人と敵対する勢力から認められていない。

 2015年に組織されたシリア民主軍は、米軍主導の有志連合の戦闘機や特殊部隊のアドバイザーらの支援を受けている。そしてその有志連合の主力は、民兵組織クルド人民防衛部隊(YPG)だ。米国は最近、YPGに初めて直接武器供与を行うことを決めた。

 この決定はYPGを「テロリスト」とみなすトルコ政府を激怒させた。YPGは、トルコからの分離独立を求める非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」とつながっているためだ。

 トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は以前、クルド人抜きという条件の下ならば、ラッカの攻勢にトルコ軍も加わると主張していた。「米国はエルドアン首相に、クルド人がラッカを奪取するまで辛抱強く待つよう要請した」とバランシュ氏は言う。

 シリア政府は曖昧な態度を取っている。米国が支援する部隊が支配する領域の拡大を懸念する一方で、最近はシリア民主軍によるISとの戦いは「正当だ」と述べている。

■部族間紛争の可能性?

 バランシュ氏によれば、クルド人部隊はシリア北部マンビジ(Manbij)で起きたことの再現を期待しているという。

 アラブ人が多数を占めるマンビジはかつてISの主要拠点だったが、昨年8月にシリア民主軍が制圧し、市民評議会に引き継がれた。評議会はシリア民主軍による支配の隠れみのだと対抗勢力は批判しているが、マンビジの少数派クルド人は評議会への支持を続けている。

 しかし「これはラッカには当てはまらない。ラッカの部族はクルド人による支配を容認できない」とバランシュ氏は言う。

■アサド政権は?

 シリア政府はラッカ奪還の戦いは政府軍が主導すると長らく主張してきた。だが戦場では「シリア民主軍がやってくれるのならば、自分たちの兵士は一人も失いたくないというのがシリア軍の立ち位置」だとバランシュ氏は言う。同氏によれば、政府は武力行使よりも「交渉を経て市内に入る」ことを望んでいるという。

 しかし、シリア民主軍のタラル・セロ(Talal Sello)報道官は、シリア軍自らがラッカ攻勢に加わる可能性を除外していない。「シリア軍の参加は(米主導の)有志連合軍とロシアとの合意内容に左右される」と同報道官はAFPに語った。
【翻訳編集】AFPBB News