<窮地に追い込まれ、ISISがますます残酷さを増している。逃げ出す住民を狙う卑劣極まりない行為>

陥落間近とされているテロ組織ISIS(自称イスラム国)最後のイラク拠点、モスル西部で子供を含む住民を標的にした殺戮が増えていると国連が警告した。

シリア政府軍はモスルの一部を奪還したものの、モスル西部にはまだ住民が人間の盾として捕らわれている。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によれば、5月26日からの1週間で少なくとも231人がISISに殺された。

殺害された住民はアル=シファ地区から脱出を図ったところを見つかった。大規模な殺戮は5月26日(27人)、6月1日(163人)、4日(41人)と立て続けに起こり、遺体は数日間路上に放置されたままだった。

5月26日の死者には子供が5人含まれる。ゼイド・ラアド・アルフセイン国連人権高等弁務官は「家族と一緒に逃げようとした子供が撃たれた。卑劣極まりない行為に言葉もない」と述べた。

(荒れ果てたモスル西部から脱出する住民)


モスル西部の旧市街には依然、20万人の住民が残されているとされる。ニューヨーク・タイムズによれば、イラク軍はこれまで戦闘と爆撃に巻き込まれないよう家の中に留まるよう住民に指示していたが、最近は脱出を促す小冊子を落としているという。

【参考記事】モスル西部奪回作戦、イラク軍は地獄の市街戦へ
【参考記事】モスル奪還作戦、死体安置所からあふれ返る死体

有志連合にも殺されている

住民を殺すのは、ISISだけでない。OHCHRは、米軍主導の有志連合が5月31日に実施した空爆で、モスルのザンジリ―地区に住む50〜80人が死亡したと報告した。

モスル奪還作戦は昨年10月に始まり、旧市街を含む北東西部を残すのみだった。BBCによれば、作戦開始からこれまでにモスルを脱出した住民は58万人に達する。

(先週、西部モスルで有志連合が実施した爆撃)


5月中の作戦完了を見込むというイラク陸軍参謀総長のコメントが報じられ、陥落は時間の問題だと思われていたが、ここ数カ月で窮地に立たされたISISは自爆に狙撃と、なりふり構わない攻撃を増やしている。

OHCHRのラビナ・シャムダサニ報道官は、「(ISISは)イラク政府軍の進撃に圧倒され必死に抵抗している。これは逃げようとする住民が危険にさらされる可能性を高める」と指摘。有志連合とイラク政府軍へ、住民が多く残る地区の空爆を止めるよう求めた。

【参考記事】ISISの終わりが見えた
【参考記事】モスル空爆で多数の民間人が殺された責任は誰にある?

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部