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 こんにちは、微表情研究者の清水建二です。

 私たちは、対面のコミュニケーションにおいて様々な表情を使い分けます。心の奥底から湧き出てくる本当の感情が思わず表情に現れる場合もあるでしょう。一方で、相手に合わせるために表情を作ることもあるでしょう。

 表情分析の世界では古くから、本当の感情の発現である真実の表情と意図的に作られた表情との違いについて、科学者の純粋な好奇心からだけでなく実利的な側面からの必要性に応じて様々な研究が重ねられてきました。これまで幸福表情、驚き表情、恐怖表情、恥表情、悲しみ表情、痛み表情の真偽を特定するための研究が行われてきています。本日はこの中の悲しみ表情をご紹介させて頂きたいと思います。

◆どんなときにウソの悲しみを見抜く必要があるのか?

 みなさんは日常のコミュニケーション場面で、真実の悲しみとウソの悲しみを見分ける必要を感じることはありますか? もしくは、「これはウソ泣きに違いない!」と感じるような場面はありますでしょうか?

 愛想笑いや愛想の驚き表情に比べて、ウソの悲しみ表情を意識するときはあまりないかも知れません。その厳密な理由はわかりませんが、私たちは他者の悲しみ表情を見ると助けてあげたくなってしまう習性を持っているため、その表情が真実かウソかを考えるよりも先に感情的に「かわいそう!」と反応してしまうからなのかも知れません。

 悲しみ表情を浮かべている人を助けるという行為が、それほどコストのかからないことならば問題ありません。しかし、場合によっては大きなコストを伴うこともあります。相手の情に訴えてダマそうとする詐欺師や犯罪被害者を装った犯罪者などがその典型例です。こうした人々のウソ泣きに騙されてしまうと大きな痛手を負ってしまいます。

 では、真実の悲しみ表情とウソの悲しみ表情との違いはどこに現れるのでしょうか?

 これまでの研究からわかっていることは、特定の表情筋の有無から推定するというものと微表情から推定するというものの2つの方法です。

 最初に問題に挑戦して頂こうと思います。AとBの表情を見て下さい。どちらが真実の悲しみ表情でだと思いますか?答えは本記事の最後で発表します。

 悲しみ表情の典型的な特徴は、眉の内側が引き上げられる+口角が引き下げられる+下唇が引き上げられる、というものです。この中で、眉の内側が引き上げられるという動きは、意図的にすることが難しいとされている表情筋の動きです。本当に悲しければ眉の内側は引き上げられ、ハノ字眉が形成されるのですが、悲しみ表情を作ろうとして意図的にその動きをしようとしても中々できないことがわかっています。

◆泣きっ面の一瞬の表情を見逃すな

 この知見は次のような研究にも応用され、犯罪捜査の実務に活かされています。

 子どもが失踪してしまい、情報提供をテレビカメラの前で訴える両親をテレビで見たことがあるかも知れません。両親は悲しみ表情で子どもに関する情報提供を呼びかけています。

 こうした親たちの表情分析の結果から、子どもの失踪にその親が関わっている場合には(自らの手で子どもを殺害しているケース含む)、眉の内側ではなく、眉全体が引き上げられる傾向ならびに口角が引き上げられる傾向が観察されています。これはハノ字眉を演技しようとしても上手くいかないという理由と騙す喜びという心理(後述)が関わっていると考えられます。

 注意としては、この傾向は両親が悲しみ表情を抑制していないときに限られます。悲しみ表情が抑制されるときは(例えば、お葬式の挨拶をする場面などでは、泣いてしまい挨拶できなくなると困るため、悲しみは抑制されることがあるでしょう)、悲しみ表情を形作る表情筋の一部の動きしか生じない場合の方が普通なため、こうした場合、ハノ字眉の有無で悲しみの真偽を判断することは出来ません。