cinema staffが迎えたライブバンドとしての新境地 自主企画『シネマのキネマ』を観て

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 cinema staffの自主企画イベント『シネマのキネマ』が、5月19日に東京・東京キネマ倶楽部にて開催された。

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 cinema staffが後輩バンドを招いて対バンを行う同イベント。2回目の開催となる今回は、PELICAN FANCLUB、SHE’S、Age Factoryの3バンドがゲスト出演し、それぞれの個性をぶつけ合うようなライブパフォーマンスを繰り広げた。

 トップバッターを務めたのは、5月10日に1stフルアルバム『Home Electronics』をリリースしたPELICAN FANCLUB。新アルバムの1曲目に収録されている「深呼吸」からスタートし、続けて「Night Diver」へ。疾走感のあるギターロックナンバーで、一気に会場のボルテージを上げる。そこから彼らの名前を一躍有名にした「Dali」を披露。捉えどころのないふわふわとしたサウンドは、PELICAN FANCLUBが持つ多面性を表しており、彼らの全容を理解しかけていた観客を煙に巻く。2015年、結成から3年という短い期間でインディーズシーンから突如出現し、新世代ドリームポップバンドとして一躍注目を集めた同バンド。彼らの持ち味であるドリームポップやシューゲイズという洋楽的なアプローチを損なうことなく、より一層日本のギターロックに接近した最新アルバム『Home Electronics』は、リスナーの想像を大きく飛び越えた1枚と言えるだろう。そこから短いMCとcinema staffの「奇跡」のカバーを挟んだ後、歪んだギターとエンドウアンリ(Vo/G)の伸びやかな歌声が調和を見せる「記憶について」、心地よい美メロが印象的なミディアムバラード「花束」で締めくくった。

 2番手で登場したピアノロックバンド・SHE’Sは、PELICAN FANCLUBが会場にもたらした多幸感を増幅させるように、「Un-science」と「Freedom」のポップナンバー2曲を立て続けに演奏。井上竜馬(Vo/Key)の躍動感溢れる歌声と鍵盤にパワフルなバンドサウンドが共鳴し、メロディアスでありながらも力強いサウンドを会場いっぱいに響き渡らせる。3曲目では井上がアコースティックギターを構え、6月21日に発売されるミニアルバム『Awakening』より新曲「Over You」を披露。開放感のあるストリングスとフォーキーなギターをベースに、観客が自然と参加できるようなクラップハンズや掛け声もふんだんに取り入れられた同楽曲。最近のリリース作品から見ても、彼らがライブに比重を置いていることは一目瞭然だ。これまで以上に観客との距離感を縮めようとする取り組みには、ライブバンドとして新たなステージへと踏み出そうとする強い意思が感じられる。日本のロック文化から一歩距離置き、ロックとピアノによる新しいスタイルを模索してきたSHE’S。その姿勢を崩さずにライブバンドとして大成することは、彼らにとっての大きなポイントになりそうだ。一方、次曲「Ghost」では、ドラマチックなバラードナンバーを丁寧に届け、最後は「遠くまで」で観客のエネルギーを一気に発散させてステージを後にした。

 3組目を務めたAge Factoryは、佇まい、サウンド、パフォーマンス、どこを切り取っても今回のラインナップの中で異彩を放つバンドだ。清水エイスケの力強くザラついたボーカルに、轟音のベースとギター、パワフルなドラムが絡み合い、頭から爪先までビリビリと痺れるようなパフォーマンスが繰り広げられる。1曲目「Yellow」で会場に衝撃を与え、2曲目「金木犀」の重々しく暴力的なサウンドが、呆気にとられた観客にさらに追い討ちをかける。MCで清水は7月26日にリリースする最新アルバム『RIVER』を「反時代的なアルバム」と形容した。彼らのスタイルには、“反抗”や“焦燥感”という言葉がしっくりくる。90年代のハードコアやオルタナシーンを再解釈した音楽性も、“踊れるロック”に重きを置いた今の音楽シーンに則しているとは言えないだろう。時代と逆行している。だからこそ新鮮に映る。MC後に新作『RIVER』の収録曲「left in march」が始まる。堅骨なスタイルはそのままに、彼らが持つ美しい部分を切り取ったような同曲は、Age Factory流のポップを表現しているようだった。

 そして満を持して登場したcinema staffは、2008年にリリースした1stミニアルバム『document』の1曲目「AMK HOLLIC」からスタート。出演バンド3組の熱量を受け取ったメンバーは、彼らに先輩としての貫禄を示すように初っ端から暴れ出す。フリーキーにギターをかき鳴らす辻友貴(Gt)と激しくビートを刻む久野洋平(Dr)が先導し、そこに飯田瑞規(Vo/Gt)の優しさを孕んだ歌声、三島想平(Ba/Cho)のシャウトが重なり合う。色褪せるどころかブラッシュアップしてインディーズ時代の楽曲を演奏する姿は、過去から現在に至るまで、バンドの芯にブレがないことを証明している。そして2013年のシングル曲「西南西の虹」から、5月21日にリリースした新アルバム『熱源』の収録曲「返して」へと繋げる。原点に立ち返る気持ちで制作されたという同アルバム。しかし、この作品が持つ自由度の高い音楽性は、原点回帰という言葉で片付けることはできない。彼らはデビュー当初から、既存の音楽に囚われない表現や、自分たちのスタイルを模索し追求し続けてきた。『熱源』は、これまでに積み重ねてきたポストロック的なアプローチを色濃く残しながら、さらに前作『eve』で得たポップネスも落とし込んでいる、彼らのキャリアと進化を感じさせる一枚だ。ライブでは、三島のベースが冴え渡る「pulse」や辻の変則的なギターが炸裂する「エゴ」といった新曲を披露。どちらの曲もライブ版が完成形と言えるダイナミックなステージングで会場を沸かせ、改めてライブバンドとしてのポテンシャルの高さを示す。ラストは会場全体での「ワン、ツー、スリー、フォー」の掛け声からの「theme of us」で本公演を締めくくった。

 cinema staffは、10月14日に行われる日比谷野外音楽堂での初ライブ決定とあわせて、所属レコードメーカー・ポニーキャニオンとマネージメント契約を結んだことを発表した。ライブのMCで野音決定を報告した三島が「このタイミングですごい良いもの(『熱源』)が出来て……いい流れが来ているんじゃないかなと感じる」とコメントしていたように、ここから始まるバンドの新展開にも注目が集まっている。さらに、野音前の9月23日には地元・岐阜にて今年で5回目となるイベント『cinema staff presents“OOPARTS 2017”』の開催も後日発表された。現在『熱源』リリースツアーで全国を回っているcinema staff。各地でバンドのスキルを更新しながら、野音のステージまでノンストップで突き進んでいくのだろう。(泉夏音)