連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第10週「谷田部みね子ワン、入ります」第58回 6月8日(木)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:黒崎博


58話はこんな話


すずふり亭に就職が決まったみね子(有村架純)は、愛子(和久井映見)に付き添ってもらい、住む予定のアパート・あかね荘を訪ねる。

最終面接


すずふり亭に就職が決まったと愛子に報告するみね子。人がいないと、食堂の声が響くという描写があるのがいい。ガランとした食堂には、愛子とみね子しかいない。そのみね子ももうすぐここを出て行く。
愛子は、みね子の就職を心配し、ほかにないか探してくれてもいたようで。ようやく肩の荷が降りて、自分の職探しをすると言うのを聞いて、みね子ははっとなる。
愛子は最後のひとりという責任を全うしようとしていた。
そんなことも気づかず、自分のことばかり考えていたことを反省し、年末年始は乙女寮に残ると言う。
愛子が、大晦日は一緒に紅白を見ようと微笑む。とくに何も言わないが、嬉しかったんじゃないだろうか。
「おいしい」とご飯を食べるみね子の「おいしい」は愛子への思いやりのようにも感じた。

涙のメニュー


手土産を「安い」と口すべらす愛子に、鈴子は、安くて美味しいのが一番と言い、その流れから、すずふり亭も不況のせいで値上げしたときの悲しみを語りはじめる。
こういうふうに、人の話を自分の話にすり替えてしまうことは、本来、良いこととされず、むしろ嫌われるものだが、鈴子のキャラだから許される。
涙でメニューが滲んでいるのだと見せられた愛子は、「涙のメニュー」を「歌謡曲みたいですね」と言う。
今度は鈴子が、愛子に思いを向けて、戦争中、東京で大変な目にあった愛子をお互い大変だったと共感を示す。
コミュニケーションは、キャッチボールのようだとはよく言ったもの。自分ひとりでボールを抱えずに、パスをしていくことが大切だ。会話するとき、ボールのやりとりをするところをイメージすると良いと聞きます。
それはともかく、岡田惠和は、時々、人々に戦争のつけた傷をちょっとだけ描く。ほんとうにちょっと、カーテンが風で少しだけ開くみたいに。

白石加代子登場


あかね荘の大家さんで、この地域の主・富さん(白石加代子)登場。
昔は、赤坂の人気芸者だったそうで、よーっ!て、派手な掛け声のSE付きだった。

着物にストール巻いて、モダンな感じでおしゃれ。
愛子の手土産・佃煮を「200円ってとこかしら」とずばり当て、物事を見る目もあるようだ。
「人生の日も暮れてるわ〜」なんて、言ってることも気が利いている(書いてるのは岡田惠和だが)

昔は「赤坂小町なんて言われてた」が、いまや、ガラスに映った自分をみて、おそろしくて叫んじゃったなどと言って笑わせるが、鈴子以上に、話が飛ぶし、長いし、それは皆、自分語り・・・やれやれ、先が思いやられるといったところ。でも悪い人ではなさそう。

白石加代子は、舞台を中心に活躍する女優で、岡田惠和ドラマには「泣くな、はらちゃん」「ど根性ガエル」「奇跡の人」と続け様に出ている。唯一無二の強烈な個性と確かな技術の持ち主で、彼女がいると、作品の質がぐいぐいぐいっと上がる。
相手役をつとめた藤原竜也のデビュー作「身毒丸」は、義理の息子(藤原)と禁断の恋に陥るという衝撃のストーリーで、蜷川幸雄の演出のもと、芝居がはじめての、15歳の新人藤原をリードしながら、激しく美しい芝居をつくりあげ、ロンドンでも絶賛された(97年)。

はじめての一人部屋


みね子の部屋は、かわいらしい設計の四畳半。このアパート、全体的に窓がかわいい。
部屋の窓にちゃんとカーテンもついていた。
窓から東京タワーが見えるなんて最高じゃないか。でも、ほかは、キャバレーとスナックという、ちょっと風紀的にどうなのかという感じもしますが、偏見は良くないですね。

あかね荘は、すずふり亭の裏庭の向い側に建っている。
入り口そばの藤棚みたいなところに、ギターがぶらさがっているのを見て、みね子、「時間ですよ」(65年、TBSで日曜劇場の単発で放送され、人気になって90年までシリーズ放送されたホームドラマ)の浅田美代子みたいになることを想像してしまった。
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