南米チリ北部の砂漠にあるアルマ電波望遠鏡(2013年3月12日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

写真拡大

【AFP=時事】惑星が形成される前の太陽に似た誕生間もない星の周囲で、生命に欠かせない要素とされる化学物質を初めて検出したとする2件の研究報告が8日、発表された。

「英国王立天文学会月報(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)」に発表された論文の共同執筆者で、イタリア・フィレンツェ(Florence)にあるアルチェトリ天文台(Arcetri Astrophysical Observatory)の科学者ビクトル・リビッラ(Victor Rivilla)氏によると、今回検出された分子「イソシアン酸メチル(C2H3NCO)」は「生命の基本構成要素であるタンパク質の形成において極めて重要な役割を果たす」という。

 この研究成果により、数十億年前の地球上ではどのようにして化学物質が生命発生の口火となったかに関する手がかりが得られる可能性もある。

 同誌に発表された2件目の論文の主執筆者で、オランダ・ライデン天文台(Leiden Observatory)の研究者のニルス・リグテリンク(Niels Ligterink)氏は、生命の発生に欠かせない要素が「惑星系形成の最初期段階ですでに得られていた可能性が非常に高い」ことが少なくとも今回の研究で明らかになったと指摘した。

 研究チームは、地球からへびつかい座(Ophiuchus)の方向に約400光年の距離にある3つの若い恒星を取り巻く濃密な星間塵(じん)とガスの領域で、この有機化合物を発見した。

 南米チリ北部の砂漠にあるアルマ(ALMA)電波望遠鏡を使い、2つの研究チームはそれぞれ独立してイソシアン酸メチルの化学的特徴を同定した後、この分子の起源を調べるためのコンピューターモデルの作成と室内実験を実施した。

 リビッラ氏は、AFPの取材に「最新の望遠鏡の驚くべき性能のおかげで、恒星と惑星の形成領域の周囲でますます多くの有機分子が発見されている」と語った。

■生命の元だが有毒

 最近では、「グリコールアルデヒド」と呼ばれる化合物を含む糖類が宇宙空間で検出された。グリコールアルデヒドは、DNA構造の形成に関与する化合物の一つだ。

 太陽系内の地球や他の惑星は約45億年前、太陽形成時に使い残された物質から形成された。

 3重連星系「IRAS 16293-2422」について書かれた今回の研究論文によると、このような進化のごく初期段階では、その形成に使われる物質がそれぞれの星の周囲を円盤状に回転しているのだという。

 このガスと塵は、一部が星に落下し、残りが惑星を形成する。

 逆説的ではあるが、イソシアン酸メチルなどの生命の前駆物質は、人や他の動物に対しては非常に毒性が高く、生命に危険を及ぼす恐れがある。

 リグテリンク氏は、電子メールで「これが実験室での作業を難しくしている」ことを指摘した。

 実際に、1984年12月2日にインド・ボパール(Bhopal)で発生した大規模災害では、夜間に殺虫剤生産工場から漏出した有毒のイソシアン酸メチルが原因で3700人以上が死亡した。

 だが、水などの他の分子と結合すると、イソシアン酸メチルは性質が変化し、最終的に生命の素材となる化合物をもたらす可能性がある。

 今回発表された論文の一つには、ボパールの犠牲者への追悼文が記載された。
【翻訳編集】AFPBB News