「メーカー側も多彩になったニーズに合わせて、商品を作らなければいけません。しかも、菓子業界は“千一”といわれ、千の商品を出しても、当たるのは1つくらいという時代。『定番スナック菓子があるから安心』というわけにはいきません」
 
こう話すのは、お菓子勉強家の松林千宏さん。それにつけても“カール・ショック”は、あまりに大きすぎた!'68年に日本初のスナック菓子として誕生した「カール」が、8月の生産分をもって全国販売を中止。西日本地域だけで販売することが発表されたのは、5月25日のこと――。マーケティング調査を行う流通経済研究所の鈴木雄高主任研究員が語る。
 
「複数のスーパーのチェーン店で調査した昨年1年間のスナック菓子の売上げランキングで、『カール』は1,200商品中20位。これだけ知名度、ブランド力のあるロングセラー商品の全国販売中止が与えた影響は、スナック菓子業界だけにとどまりません」
 
そうなると、子どものころから慣れ親しんできたロングセラーですら“リストラ”されてしまうことも!?「カール」に続く商品が今後、出てくる可能性もあるのだろうか?
 
'62年に発売の「コイケヤポテトチップス のり塩」をはじめ、「カラムーチョ」「スコーン」などを世に送り出している湖池屋の広報担当者に聞いてみると--。
 
「弊社の定番商品は、発売開始から月日がたった現在も、多くの皆さまにご愛顧いただいている商品であり、弊社としても大切なロングセラーブランドです。今後もスナックの老舗メーカーとして、今までと変わりなく皆さまにお楽しみいただけるよう努めたいと考えています」
 
また、'64年に発売した「かっぱえびせん」のほか、'75年には「ポテトチップス」を売り出したカルビーの広報部はこう答える。
 
「『かっぱえびせん』や『サッポロポテト』『じゃがりこ』などのロングセラー商品がございますが、おかげさまで発売以降、今も変わらず多くのお客さまにご購入いただき、人気となっております。今後も変わらずそれらの商品をお客さまに楽しんでいただけるよう、これからも努力を続けてまいります」
 
さらに、「キャラメルコーン」や「ポテコ」「なげわ」の定番商品がある東ハトの広報もこのように語る。
 
「変わることはありません。今後もご愛顧いただければと思います」
 
しかし、大手経済紙の記者が気がかりな情報を寄せた。
 
「カルビーや湖池屋、東ハトは、スナック菓子がメイン事業であることが明治と異なります。たしかに『カール』は、ロングセラーではありますが、明治のメイン事業での商品ではありません。そこから考えると、ハウス食品の『とんがりコーン』は、『カール』と似ています。ハウス食品にはカレーという主戦場がある。そこで勝ち抜くためには、ロングセラーの商品があったとしても、スナック事業を撤退する可能性もあるのです」
 
そこで、ハウス食品の広報に聞いてみた。
 
「弊社にとって『とんがりコーン』は大切な商品であり、6月から『シーザーサラダ味』も加わります。今後もお客さまにお楽しみいただけるように努めます」
 
ホッと胸をなで下ろすことができたが、“カール・ショック”はまだまだ尾を引きそう……。最後に松林さんがこう語る。
 
「長年親しんでいたものがなくなる寂しさを痛感した人は多いはず。だからこそ、“カール・ショック”をきっかけに、スナック菓子のことを、見直してほしいです。日本のスナック菓子はまだまだ進化していくはずですから」
 
大好きなスナック菓子が、これ以上“リストラ”の憂き目に遭わないよう、“食べて応援”するしかない!