シリアを相手にホームで引き分け。これがW杯最終予選本番だったら、失態のそしりは免れないところだが、これはあくまでテストマッチだ。結果は、ほぼ度外視していい。

 試合内容を好意的に解釈するなら、テストマッチとしての価値を見出せる要素は少なくなかった。

 まずは、DF昌子源の先発フル出場だ。

 はっきり言って、出来は悪かった。失点の場面がクローズアップされがちだが、全体的にボール処理の拙(つたな)さが目についた。鹿島アントラーズでの(昨年のクラブW杯をはじめとする)プレーぶりを考えれば、起用の期待に応えたとは言い難い。だが、こうした経験を重ねていくことが重要なのだ。

 しかも、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、従来の主力であるDF森重真人を招集せず、事実上、「次のイラク戦も含めて、お前に任せるぞ」とのメッセージを送っている。昌子の気持ちを刺激する意味でも、最終予選を前に、テストマッチを効果的に活用した起用だったと言えるのではないだろうか。


後半途中から出場してキレのある動きを見せた乾貴士 スペインで好パフォーマンスを見せている、FW乾貴士の起用にしてもそうだ。

 活動期間が短く、クラブチームに比べて組織的な構築が難しい代表チームでは、調子のいい旬な選手を見逃さずに使っていくことは必要なことだ。代表歴は乏しくとも、旬な選手が起用され、自分の特長を発揮できたことは、確実にオプションを増やすことにつながる。テストマッチにあるべき選手起用だった。

 さらには、攻撃があまり円滑に進まず、前線の選手が孤立しがちだったことで、逆にFW大迫勇也のボールを収める能力や、キープ力といったものが、改めて際立った。また、ミランでも日本代表でもプレー機会が限られていたFW本田圭佑も、後半途中から入った右インサイドハーフが意外とハマった。先発で90分間このポジションで、とは考えにくいが、オプションの可能性をうかがわせるという意味では、興味深いテストだったと言える。

 以上のように選手個々に目を向ければ、ポジティブな点を拾い上げることは可能だろう。テストマッチとしての意味をそれなりに持つ試合ではあった。

 ただし、それはやはり、好意的に解釈するならば、だ。もう少し試合全体を俯瞰し、内容を振り返ると、非常に物足りない試合だった。残念ながら、その印象は強い。

 例えて言うなら、昨年10月のW杯最終予選、ホームでのイラク戦に近い、攻守両面で何もできない試合だった。

 現在の日本代表は、ビルドアップからの攻撃については、すでに大きな期待をしにくくなって久しい。ポゼッションが安定せず、DFラインの背後へ長いボールを蹴るだけの攻撃に頼ることもしばしばだ。

 つまり、点を取る(あるいは、フィニッシュまでつなげる)には、基本的にいい形でボールを奪ったところから、それほど手数をかけずに速く攻め切ることが必要となる。

 実際、最終予選に入って以降、日本代表が狙いどおりにゲームを進め、勝利を手にした試合というのは、守備に軸足を置いた戦い方が選択されている。大別すれば、リトリートしたオーストラリア戦(アウェー)と、プレスをかけたUAE戦(アウェー)という違いはあるが、どちらも相手のよさを消して、狙いどおりにボールを奪い、そこから攻撃につなげる戦略がうまくハマったものだ。

 おそらくハリルホジッチ監督は、次のイラク戦(アウェー)でも、3月のUAE戦と同じような狙いを持っているのだろう。

 指揮官は、すでにイラク戦の試合会場となるテヘランのスタジアムはピッチ状態が悪いとの情報を得ており、中盤でのボール争奪戦に備える準備があった。

 だからこそ、このシリア戦でもUAE戦と同じ4-3-3を採用し、右サイドハーフには、負傷から戦列復帰して間もないにもかかわらず、MF今野泰幸を置いた。森重が昌子に代わった以外、シリア戦の先発メンバーはUAE戦そのままである。

 ところが、日本は相手ボールを取り囲むように選手が集まり、距離を縮めていくのだが、「相手に寄せ切れず、中盤にたくさん人はいるのだが、5mくらい遠いところに立っていた」(ハリルホジッチ監督)。ボールを奪えないばかりか、中途半端なプレスをかいくぐられ、スピードに乗って攻めてこられる回数を増やした。

「特に中盤に問題があった。攻撃でも守備でも相手にコントロールされていた。私の指示が理解できていたのかどうかわからないが、試合への入りが軽い選手がいた。考えられない試合への入り方だった」

 ハリルホジッチ監督もそう語り、おかんむりだったが、まさにそのとおり。スタンドの記者席からピッチを見ていると、日本の選手が集まってはくるのだが、あっさりとかわされ、青い集団がただただ右往左往するシーンは多かった。「前からのプレスがハマらなかった。(監督からは)もっと一人ひとり厳しく行けと言われた」とは、今野の弁だ。

 DF長友佑都も「後半、相手がバテてからは日本らしいサッカーができた」と言いつつも、「(前半のうちに)1点取られていたら違う試合になっていた」と振り返る。

 そもそもボールを保持して攻撃を組み立てることが期待薄なうえに、守備までもこのありさまでは、試合内容がよくなるはずはない。シリアの拙攻に助けられた部分も多く、失点はもっと増えていてもおかしくなかった。

 現在の日本代表は、守備の狙いが明確に形となって表れないと、見るも無残な試合内容になってしまう。前述したホームのイラク戦でも同様の事態に陥っており、これが初めてではないだけに、いかにテストマッチとわかっていても不安は残る。

 国際Aマッチのカレンダーの都合上、今回の最終予選は昨年9月のスタート以来、2試合1セットで組まれることが多い。日本代表は比較的1試合目の出来が悪く、2戦目に立て直すパターンが多いので、今回も(最終予選ではなかったが)1試合目のシリア戦を教訓に、2試合目のイラク戦ではきっと立て直してくるだろう。

 また、海外組にとっては、すでにシーズンが閉幕して2週間ほどが経過しており、コンディション調整も難しかったはず。シリア戦をひとつこなしたことで、コンディションも上がってくるはずだ。次のイラク戦に関してだけ言えば、さほど心配する必要はないのかもしれない。

 だが、最終予選突破の先にある、W杯本大会を見据えた場合はどうか。1試合目の反省を生かし、2試合目では同じ轍(てつ)を踏まない戦いぶりも、言い方を変えれば、同じことを何度も繰り返しているだけのこと。一向に進歩が見られないとも言える。

 笛吹けど踊らず、なのか、そもそも笛の吹き方に問題があるのか。こんな内容の試合を見るのが初めてではないだけに、テストマッチだからと割り切れないもどかしさを感じたのも事実である。

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