拡大するコワーキングスペース市場、サービスは「ハイブリッド化」へ

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さまざまな業種の個人やグループがオフィスを共有するコワーキングスペースは、世界全体での利用者数が2017年末時点までに約120万人に達すると見込まれている。また、同時期までには世界各地で、合わせて1万4000か所が稼働していることになると予想される。

コワーキングスペース全体の60%程度が利益を上げていない状況だとされるが、働く場所を共有するというこのサービスはこの10年間、大きなトレンドとなっている。当初はニッチ市場だったコワーキングスペースは、オフィスを一つのサービスとして提供することで、従来型のオフィスのデザインや利用形態も変えようとしているのだ。

コワーキングスペース市場をリードするウィワーク(WeWork)は、スタートアップ企業やフリーランサーを中心とする約10万人の会員向けに130か所以上でスペースを提供している。また、同社は先ごろ、自社が管理するオフィスビル「88 University Place」の全スペースをIBMに貸し出すことで合意したと発表した。収益性の高い法人向け市場のシェア拡大を図っている。

ニーズの拡大と相次ぐ新規参入

コワーキングスペース市場ではここ数年、ウィワークの他にも、将来の「職場」を形作ろうという目標を掲げたいくつかの革新的なサービス提供者が登場している。その代表格がノーテル(Knotel)だ。

エドワード・シェンデロビッチチとアモル・サルバの二人のシリアル・アントレプレナー(次々と起業する人)が創業した同社は、「サービスとしての本社機能」という新たな発想の下、顧客である中規模企業のニーズの変化に対応可能なオフィス・スペースを提供している。

ノーテルの顧客企業は、高い保証金の支払いや長期の賃貸契約なしで、すぐに新たなオフィスで業務を開始することができる。また、利用中はスペースを管理するノーテルの専任サービス担当者による迅速なサポートを受けることが可能だ。さらに、顧客はそれぞれの企業文化や社風に合わせてスペースをコーディネートでき、各社のブランドが際立つようなデザインを採用することができる。

ノーテルは創業からわずか1年半足らずで、シリーズAラウンドで2500万ドル(約27億3000万円)を調達。それにより、ニューヨーク市を中心とした15か所に総面積約2万3200平方メートルのスペースを提供している。

一方、同じく米国でコワーキングスペースを運営するインダストリアス(Industrious)の共同創業者でCEOのジェイミー・ホダリは、「商業用物件の市場全体が、大きな転換期にある」と指摘する。

インダストリアスは起業から一定期間が経過した企業へのサービスに重点を置いており、主な顧客は「全ての従業員が快適に働けるようにオフィスをもう一段階アップグレードしたい」と考える企業だ。顧客リストには、配車サービスのリフトや音楽ストリーミングサービスのスポティファイ、高級ホテルチェーンのハイアットなどの有名企業の名が並ぶ。

「企業は規模にかかわらず、従業員の満足度と生産性の向上のためには職場への愛着心を高めるような環境作りが必要だと認識するようになっている。だが、これは企業にとって実現が難しい問題だ。一か所のオフィスに配置する将来的な人員の数が読めなくなっていることに加え、長期的な賃借契約が企業の業績に与えるインパクトは増大している」とホダリは語る。

インダストリアスはまた、1978年から約40年間にわたり、オーストラリアのサーブコープ(Servcorp)が開拓してきたニッチな高級レンタルオフィス市場にも注目している。

サーブコープは小規模企業や起業家向けに、各国の大都市に約150か所の拠点を構え、手頃な料金でエグゼクティブ・スイートやバーチャル・オフィスを提供してきた。同社はここ数年で1億ドル以上を投じ、事業拡大に向けた技術面の強化に注力している。ビーコン技術による位置情報を利用したシステムを開発・展開中で、同システムを利用すれば会員は、共有デスクの空き状況を簡単に把握できるようになる。

北米での事業拡大を狙うサーブコープの最高執行責任者(COO)によれば、同社は2018年には北米市場での知名度を大幅に引き上げたい考えだ。さらに、同COOは今後のコワーキングスペース市場について、次のような見方を示している。

「全体として、よりハイブリッドなビジネス・モデルへのアプローチが求められるようになっていくと考えている。単にコワーキングスペースやエグゼクティブ・スイートだけでなく、柔軟性の高いあらゆる職場環境のモデルが求められるようになるだろう」