なりきりウチワの使用見本

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…中編「生アフレコって何だ!?『キンプリ』が仕掛けて大流行!」より続く

【映画作りの舞台裏】『キンプリ』西浩子Pに聞く/後編
ビギナーもまずは熱気あふれる応援上映の空間を楽しんで

面白さが口コミで広がり、スマッシュヒットを放った劇場版アニメ、通称『キンプリ』こと『KING OF PRISM by PrettyRhythm』。前作の予想以上のヒットを受けて劇場版新作『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』が公開される。見るだけでトリップしそうな摩訶不思議な世界観もさることながら、声援、コスプレ、ペンライトの使用などが許可された参加型の上映形態・応援上映の楽しさも『キンプリ』を語るうえで欠かせない大きな要素だ。作品と共に応援上映の魅力を西浩子プロデューサーに語ってもらった。

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初回から手応えがあったという応援上映だが、劇場側の反応はどうだったのだろうか?

「実は『キンプリ』より以前は、なかなか実施が難しい状況が続いていました。不適切なことを叫ばないか、コスプレの着替えで劇場内が混雑しないか、という不安がこちらにもありましたし、オペレーションが難しかったのだと思います。でも、『キンプリ』の応援上映が好評いただいてからは、劇場側からぜひ応援上映を実施したいと言ってもらえるようになりました」

それだけでなく、劇場側が自主的にキャラクターの衣装を作って展示したり、キャラクターの誕生日にはバースデーケーキを作ってお祝いしたりするそうだ。それらは公式のものでなくても暗黙のうちに了承されている。

「上から目線で了承するどころか、そんなにしていただいてありがとうございますと頭を下げたい思いです。劇場のスタッフの方は上映前に『みなさん、準備はいいですか? 愛のある応援上映をしましょう』と注意喚起と共に会場の空気が温まるように声かけをしてくださったりもします。観客の方はそれを“前説”と呼んで、楽しみにしてくれてるようです。劇場の方の支えがあって応援上映が楽しく実施されてます。また、もし観客のマナーが悪ければ応援上映はここまで続かなかったと思うので、マナーを守って応援してくださるお客さんにも感謝です。みなさんの愛があってここまで盛り上がることができました」

さらに、「好きなキャラクターが隣に座っていると思って応援上映して欲しい、そのキャラクターが悲しむようなことはしないでね」と、ファンの心をくすぐるコメントを続けた。

“応援上映”というネーミングに関しては、 “プリズムスタァ”を応援するという意味あいをこめてつけられた。西プロデューサーは、「アーティストを担当していた頃、お客様が応援してくださるのがアーティスト本人にとっても我々にとっても励みになっていましたし、『応援する・される』というのはお互い幸せな気持ちになりますよね。応援上映という名称は当時の宣伝担当が提案してくれて、それがここまで広がっているのは感無量です」と微笑む。

新作の『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』ももちろん応援上映を実施。まだ応援上映は未体験だけれど、これから応援上映に行ってみたいというビギナーへの西プロデューサーからのアドバイスは、「とりあえず、生アフレコシーンだけは声出ししてみていただければと思います。テロップが出るので、初めてでも安心して声出しできますよ。そして、回りのお客さんがコールしたりアクションしたりしている熱気あふれる空間を楽しんでください。でも、一回洗礼を受けると、次は私もこれを言ってみたいって思うはずです。ぜひ、次にも見に来てチャレンジしてください。きっと何回も見に来たくなると思います!」とのこと。ぜひ自身で体験して欲しい。

さらに、新作『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』は前作よりもパワーアップ。前作にはなかったような応援上映の演出も、自信を持って工夫を凝らすことができたという。観客がキャラクターのセリフを声出しする際に、より盛り上がるように“なりきりウチワ”というグッズを来場者プレゼントとして用意する。透明なウチワにキャラクターの髪と目が描かれていて、自分の顔に当ててキャラクターになり切ってセリフを言うことができるというアイテムだ。そして声出しだけでなく、アクションが起きやすいシーンを挿入。前作では、想定していなかったが観客から自然発生でアクションが起きたことに制作スタッフがヒントを得た。キャラクターが“修羅場”と書かれたデカいウチワを猛烈な勢いで扇ぐシーンだ。作中と同じく“修羅場”と書かれたウチワも販売。応援上映がより一層楽しく盛り上がること間違いない。通常の映画なら作品を鑑賞したあとにグッズ売り場に立ち寄って作品の余韻に浸りながら商品を選ぶことが多いが、『キンプリ』は鑑賞前にグッズ売り場でアイテムを購入してから鑑賞するほうが良さそうだ。ここでまた映画鑑賞の常識を覆したと言っていいだろう。

これだけ盛り上がるを見せる応援上映、これからもどんどん発信してくれるだろうと西プロデューサーに聞くと、意外な答えが返ってきた。「応援上映を楽しんでくれることはとても嬉しいですし、お客様が楽しんでくださる限りは続けていきたいと思いますが、応援上映に頼り切っていこうとは思っていません。あくまで劇場の楽しみ方の一種だと考えています。」とシビアだ。

それでは、西プロデューサーがこれから注目しているキーワードを尋ねると、しばらく考えたのちに「多幸感」だと答えてくれた。「これまでも、これからも多幸感は大事だと思っています。私自身、他の作品でも、幸せな気持ちにさせてくれるものに強く惹かれます。映画以外にも数多くの娯楽がある中で、わざわざ時間を割いて何かをするなら、終わった後に幸せな気分になって帰りたいですよね」。確かに、『キンプリ』もキャラクターが披露するプリズムショーという作中のライブシーンはテンションが高く、見る者は多幸感に包まれる。

西プロデューサーは「ファンの方から『日々が辛かったけど、『キンプリ』に元気をもらったおかげで乗り越えられました』という手紙をいただくことがあって、そういう声を聞くとこちらも嬉しくなります」と笑顔で話してくれた。これからも見る者が幸せな気分で元気になる作品を作り続けて欲しい。

前作『KING OF PRISM by PrettyRhythm』が予想を超える大ヒットとなった『キンプリ』シリーズ。劇場版新作『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』では新たな快進撃をどこまで見せてくれるのか、大いに楽しみだ。(文:入江奈々/ライター)

『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』は6月10日より全国公開される。

入江奈々(いりえ・なな)
兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。