北朝鮮が8日、地対艦ミサイルを発射した。同国によるミサイル発射は4月に3回、さらに5月14日に火星12型を発射するなど、実に4週連続という異例の事態だ。

北朝鮮の国営メディアは、連日のように核とミサイルの能力を誇示しながら、「いつでも、どこからでもかかってこい」と言わんばかりに米国を挑発し、気勢を上げている。

北朝鮮がミサイルの精度を向上させていることは間違いないように見られる。核もしかりだ。一方、こうした「飛び道具」の開発への注力と逆行して、一般の軍事力はどうやら戦争どころではなくなっているようだ。

手術部位をかきむしり

北朝鮮軍の総兵力は120万人とされており、韓国軍(66万人)と在韓米軍(2万5千人)の合計よりも圧倒的に多い。しかし、長引く経済難で弱体化し、その実態は「飢える軍隊」と揶揄されている。

末端兵士に十分な食料が行き渡らず、中朝国境地帯では飢えた兵士がたびたび略奪・強奪事件を起こしている。2014年には初級将校が脱北し、中国側で70代の老夫婦など4人を射殺する事件が起きた。将校は、中国人民解放軍と銃撃戦を繰り広げ、腹部を負傷して捕らえられた。病院で手術を受け、一命はとりとめたものの、強制送還とその後の罰を恐れ自殺した。

他の国家機関同様、経済難にあえぐ北朝鮮軍は、生き残りをかけて金儲けに走っている。

北朝鮮軍のビジネスの内、最も大規模なのが水産業だ。人民軍の水産事業所所属の漁船が獲った魚を、人民軍系の貿易会社が中国に輸出し、莫大な額の外貨を稼ぎ出す。中国では「北朝鮮の海は汚染されていない」というイメージがあり、かつてはそこそこ売れていた。しかし、それもここ最近は不振が伝えられている。

また、中国に領海の漁業権を販売しているが、大挙押し寄せてくる不法中国漁船を襲撃するなど度々トラブルを起こしており、決して順調とはいえない。

水産業が不振のせいか、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮軍は「警備兵付き駐車場」という新手のビジネスに手を広げているという。

軍隊内での性行為強要

RFAのある情報筋は、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の長津(チャンジン)郡から両江道(リャンガンド)の三水(サムス)郡を訪れた。利用した交通手段は、工場や企業所の名義を借りて営業運転する「白タク」である「ソビ車」だ。

200キロちょっとの道のりだが、道路事情が劣悪な北朝鮮では、1日で走破できない。夜道の走行は危険であるため、泊まりとなったのだが、北朝鮮軍の基地に乗り入れて駐車。兵士が紹介してくれた近所の旅館で1泊したと情報筋は語った。

もちろんタダで駐車させてくれるわけではない。中国の東風汽車製の6トントラックの場合、積荷のない場合の龍社料金は1時間2000北朝鮮ウォン(約26円)、積荷のある場合はその倍だ。宿代は1泊素泊まりで4000北朝鮮ウォン(約52円)だ。

わざわざカネを払ってまで基地の中に車を停めるのは、安全性が極めて高いからだ。路上に駐車した場合、強盗に襲われる可能性がある。しかし、基地の中なら民間人が許可なく立ち入ることもできず、兵士が24時間体制で警備しているため、強盗や窃盗の被害に遭う危険性が低いというわけだ。

このような警備兵付き駐車場は、他の地域にも存在する。両江道の情報筋によると、恵山市の松峯洞(ソンボンドン)にある恵山旅客バス運送事業所と恵山長距離運送事業所の敷地には、多いときで60台以上の車がビッシリと停められている。これらのほとんどが、駐車料金を払っているソビ車だ。

恵山長距離運送事業所は、人民保安省の8総局(軍需動員総局)の兵士7人が交替で警備するため、非常に安全だと評判だ。1ヶ月の駐車料金は270元(約4370円)で、庶民にとっては大金だが、ビジネスを展開する車のオーナーからすれば、大した額ではない。カネさえ払えば、何台停めてもいいという料金体系になっている。

このニュービジネスによって、軍の収入がどれほどになっているのかは不明だが、儲けの約3割は部隊の維持費に、残りは大隊長と政治指導員のポケットに入るという。つまり、実際に警備を行っている兵士は何ももらえない。車のオーナーたちは不憫に思ったのか、警備の兵士たちに酒と食事を振る舞っている。

軍が生き延びるため、このようなビジネスに進出するのは自然の成り行きだろうが、その利益を部隊に還元しないとなれば単なる腐敗にしかならない。そうでなくても、軍隊内では軍の上官や職場の上司が部下の女性を「入党させてやる」と誘い出し、性的関係を迫る「マダラス」(マットレス)と呼ばれる「性上納」の強要行為も横行するなど、規律が乱れている。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

金正恩体制が「白頭山革命強兵」と自画自賛する北朝鮮軍だが、その実は腐敗とセクハラが横行するお粗末きわまりないポンコツ軍隊なのだ。