「Thinkstock」より

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 ぽっこりしたおなかをさわりながら、「なかなか痩せない……」とため息をついているビジネスパーソンのみなさんに朗報です。それは、「内臓脂肪は皮下脂肪よりもはるかに減りやすい」という事実。

 脂肪全体の量は減らなくても、細胞の中身は数日間で入れ替わっています。内臓脂肪が減らないとすれば、それは毎日せっせと脂肪の源を供給し続けているからです。その供給源と蓄積の仕組みさえ知れば、あなたも必ずや“スマート”なビジネスパーソンの仲間入りをすることができます。

●痩せていてもメタボリック症候群になる?

 そもそも、なぜ内臓脂肪が増えると体に悪いのでしょうか。内臓脂肪は、腸管のまわりについた脂肪細胞の塊です。肥満になると、まず脂肪細胞の一つひとつが肥大し始めます。体積でいえば、2倍以上に大きくなるといわれています。また、大きさが変わるだけではなく、脂肪細胞は肥大すると性質が変わってしまいます。

 脂肪細胞は、単なる貯蔵庫ではなく、活発に活動してホルモンのような物質を出しています。これを「アディポサイトカイン」と呼びます。脂肪細胞が正常な大きさのとき、アディポサイトカインはバランスが取れていて、悪さをすることはありません。しかし、細胞が肥大すると、悪玉のアディポサイトカインが多く生まれてしまいます。

 たとえば、「TNFα」という物質はインスリンの効き目を悪くします。その結果、インスリンが分泌されても血糖値が下がりにくくなり、高血糖につながります。同じ血糖値に対してインスリンがたくさん必要になるため、脂質代謝などにも影響を与えます。

 また、「アンギオテンシノーゲン」は血圧を上げる物質です。「PAI(パイ)-1」は、血栓を溶かす作用を阻害して血栓をできやすくします。脂肪細胞が肥大するということは、糖尿病や高脂血症のほかに血管が詰まるリスクが増大するということです。

 皮下脂肪が多くて太っている人と、内臓脂肪が多くて太っている人の違いは、そこにあります。痩せていても、内臓の脂肪細胞が肥大していればメタボリック症候群となります。メタボになると、糖尿病や高脂血症、高血圧、そして脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。

 薬で血圧を下げることはできても、脂肪細胞を小さくすることはできません。そのため、やはり食事療法によって、一つひとつの脂肪細胞を小さくすることが大切になります。

●実はステーキよりおにぎりのほうが太りやすい?

 では、脂肪細胞はどうすれば小さくなるのでしょうか。脂肪細胞に「脂肪を蓄えなさい」と命令するホルモンはインスリンです。インスリンは血糖値が上昇すると分泌され、血糖値を下げる役割があります。インスリンの分泌を必要最小限にすることが、脂肪を減らすコツです。

 糖質や炭水化物を摂取すると、血糖値が上昇してインスリンがたくさん分泌されます。反対に、油脂やたんぱく質は血糖値をあまり上げないので、インスリンはあまり分泌されません。

 つまり、食べ物を選ぶときには低カロリーのものを選ぶ人が多いですが、実は高カロリーのステーキ(たんぱく質)のほうがおにぎり(炭水化物)よりも太りにくいということです(ただし、ステーキにはご飯やパン、デザートをつけないようにしてください)。そして、インスリンの少ない状態が続けば、脂肪細胞はだんだん小さくなっていきます。

 ダイエットをするとき、カロリーを減らそうとすると、おなかがすいてしまって続きません。運動して痩せようとすると、運動の後に食欲が増して消費した分より多くのカロリーを摂ってしまいがちです。いわゆる「低糖質ダイエット」のメリットは、血糖値の急激な上昇や下降がないため空腹感が少ない点にもあります。つまり、カロリーではなくホルモンをコントロールすることが大切なのです。

●遅い夕食ではおかずのみで主食を抜く工夫を

 ただし、自己流の糖質制限ダイエットは要注意! たとえば、よく例に挙げられるビールと唐揚げは低糖質ではありません。ステーキばかりや野菜と豆腐だけを食べる、などもやめましょう。

 昼食をコンビニエンスストアのおにぎりやサンドイッチ、ラーメンや丼もので済ませている人は、ぜひ定食に変えることをおすすめします。おかずをしっかり食べて、小鉢をひとつ足して、ご飯は最後にごくごく控えめに食べましょう。夕食を食べるのが遅いという人は、おかずだけを食べて主食(ご飯やパン)を抜くだけでも違います。また、寝る前のお菓子も我慢しましょう。

「インスリンを制する者は内臓脂肪を制する」

 あなたも、今日から内臓脂肪のコントロールに挑戦してみてはいかがでしょうか。
(文=西澤真生/ひめのともみクリニック 医師)