Photos: Alex Cranz/Gizmodo US


「Predator 21 X」は、Acer(エイサー)の放つ究極のゲーミングラップトップです。スペックもトップクラスなら、価格やサイズもトップクラス。正直ラップトップにする必要があったのか疑問になるレベルですが、以下の体験レビューをした米Gizmodo記者のAlex Cranz氏も同感なようです。


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これを読んでいるアナタは、Acer Predator 21 Xを買いたいという燃えるような情熱を持っているかもしれませんが、買うことはおそらくないでしょう。なぜなら、買おうと思うような層はそんなお金を持っていないし、買えるような層は、子供1人分くらいの重さの9,000ドル(約99万円)のラップトップなど、買おうと思うには年寄りすぎるからです。持ち運べないでしょうし。

しかし、ギズモードを読んでいるということは、少なくとも「9,000ドルのラップトップがどんなものか理解したい」と思う程度にはガジェット好きなはずです。そこで私は、このAcerのやりすぎ感満載のラップトップと9日間すごしてみました。


1日目: 到着


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US
300台のうちの1台らしいです。「なんでドラゴンが描いてあるの?」と誰かが訊きました。逆になぜドラゴンがいてはいけないんですか?


編集部のオフィスマネージャーが、10歳くらいの子供3人を詰め込んでいそうな箱と私を訝しげに見比べました。

「ラップトップなんです」と説明する私。

マネージャーはそれでも疑り深い目で見ていましたが、他の皆は大喜び。「箱の中に入りたいな」と同僚が写真を撮りながら言いました。

説明書を読みながら、私は段ボール箱と、その中に見えるペリカンケースを開けました。とにかくゲームがやりたくて、私はMacBookでそうするようにPredator 21 Xを膝の上にのせました。幸運なことに、私は頻繁に自転車に乗るので太ももが強く、平均的なラップトップの重さを4倍も上回る19ポンド(約9kg)のコンピュータでも泣きを入れませんでした。

興味深く見ている人に値段を教えると、仰天した顔で私を見ました。「9,000ドルのコンピュータなんてどうして存在するの?」 そんな問いに答えることが出来ませんでした。


Photo: Alex Cranz/Gizmodo US


なので、トラックパッドをスロットから抜いて、裏返すことでテンキーとして使えるのを見せると、誰もがそれは格好良いと認めました。このトリックが、サイズや価格以外で初めて周りから驚かれた特徴でした。

1時間10分使用したところ、コンピュータの電池が切れてしまいました。5時を過ぎていたし、必要なコンセント2つ(2つ!!)が見つからなかったので、同僚のデスクに置いて帰宅しました。


2日目: セットアップ


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US
Tobiiアイトラッカーは常に不格好ですが、このコンピュータの大きさだとヒンジに紛れてしまいます


オフィスについた後、ようやくPredatorの330ワット電源2つのためのコンセントを見つけたので、本格的にラップトップを使い始めました。Tobiiのアイトラッカーが付属していたものの動作せず、NVIDIAビデオカードのドライバも古いバージョンのままでした。

あとNVIDIA GeForceがドライバをアンインストールしてしまい、コンピューターが20分ほど故障しました。仕方なく、NVIDIAという名のつくものをすべてアンインストールして再インストール。3回目の再起動で、どういう訳かアイトラッカーも動作するようになりました。

ドライバや設定を3時間ほどいじくった結果、PCゲームの『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』が作動しました。同僚たちは私のコンピューターを取り囲み、真っ直ぐ歩く方法を叫んでアドバイスしてくれます。このとき、友達の家に泊まり込みで、夜通しスーパーファミコンを遊んだことを思い出しました。そういうときってコントローラーが1個なかったのを覚えてますか? あんな感じです。

しかし、その中に1人だけ全く関心のない人もいました。Windowsの通知が次から次へと現れ、その度にコンピュータの4つのスピーカーとサブウーファーが叫び声をあげるので、静かにしてくれと命じてきた人です。


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US
サブウーファーが無いと思っている方の為に


彼女は、仕事の時間が終わったのに、みんなコンピュータを取り囲んでいるのが気に入らなかったのです。「ビール飲みにいきましょうよ」と彼女は苛立って叫びました。

同僚はそれに従い、私もゲームをセーブしてラップトップを閉じました。電池はまだ完全に充電されていませんでした。


3日目: ダウンタウンを通って パート1


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US
キャリーケース


「君はこれを持って帰るんだ」これは提案ではありません。上司も私も、ラップトップのレビューに機動性-どれだけ持ち運びやすいか-の確認は欠かせないと判断したからです。

Predator 21 Xの場合、ディスプレイの曲線のおかげで収まりが悪く、簡単にバッグに放り込めません。21インチのディスプレイが割れてしまうかもしれないからです。仕方なくペリカンケースに戻して1時間半早く帰宅しました。誰もそれを疑問に思いませんでした。

電車に向かうまでの階段で、女性が手伝おうかと尋ねてきましたが、「自分でやらなきゃいけないんです」と丁寧に断りました。


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US
比較のためにMacBook Airに置いてみました


電車の中では皆からジロジロと見られました。その視線は、ラッシュアワーにドでかいカバンを持って入ってくる失礼な人間に向けられるそれと同じでした。時間はまだ午後4時45分でしたが、ブルックリンに近づくにつれて乗客は増えていき、私の駅についたときには周囲の人を押しのけて出なければならず、ケースについたローラーが人の足を轢かないよう祈らねばなりませんでした。苛ついている乗客に怒鳴られるのに耐えられるほどのメンタルがないんです。

電車を降りて階段を上るときは、私の後ろにイライラした客の列を作ってしまい、後ろの男性は何も言わずに手で押して助けてくれました。

ニューヨークって、意外にあったかい場所なんですね。


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US
21Xの上に置かれたMacBook Airはまるでオモチャのようです。


駅から家までは約640m。歩道はフラットアイアン地区に比べて荒くてゴツゴツしており、コンクリートがはがれてそこら中で突き出ています。Predatorを持ち帰った日は直前まで雨が降っていて、道は乾いていましたが、すべての交差点は茶色い水たまりで覆われていました。とにかくラップトップを必死に持ち上げ、水を避けながら急いで帰宅しました。オフィスに届けられたときの段ボール箱の重さは70ポンド(約32kg)でしたが、ペリカンケースに入った電源と19ポンドのラップトップは、その70ポンドすべての重みを手で引っ張っているように感じました。

我が家のイヌとネコは、リビングルームに鎮座しているバケモノのような箱を警戒し、夜に帰ってきたルームメイトは、私の膝に乗っているラップトップから目が離せませんでした。「それって…軍用か何か?」と彼女は訊いてきました。もっとも、ラップトップの轟音で微かにしか聞き取れませんでしたが。

いいえ、軍用ではありません。


4日目: つま先の感覚がなくなった


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US
電源オン


帰宅時の体験が影響したのか、19世紀の小説に出てくる主人公の親友のように咳や鼻水、説明不可能なダルさに悩まされました。

唯一の救いがラップトップです。コンセントを2つ見つけて、膝に乗せてPCゲームの『マスエフェクト アンドロメダ』をダウンロードしました。ラップトップは我が家のネット環境がお気に召さなかったようで、環境を3回調節し、再起動すること1時間後にダウンロードが始まりました。9,000ドルもあればいくらでもラップトップは買えますが、悪いネット環境や古いドライバの前には何の意味もなかったようです。

そしてラップトップの重さに太ももが耐えきれず、膝から下の感覚がなくなっていました。

「つま先の感覚がなくなった」と午後3時半に友達にメールを打ちました。


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US


インストールしたマスエフェクトをPredatorのキーボードとトラックパッドでプレイするのは、苦痛なほどのフラストレーションでした。全く馴染めなかったのです。チェリーブラウンスイッチのキーボードはいい感じだし、トラックパッド自体にも問題はありませんでしたが、キーボードとパッドの間の空間が、特に膝に乗っているときにおかしく感じたのです。

結局あきらめてXbox Oneのコントローラーを接続すると、一気にゲームが快適になりました。


5日目: 訂正。全身が痛い


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US


周囲に言ったらひかれるレベルの時間をマスエフェクトに費やしましたが、ラップトップのパフォーマンスだけは流石でした。NVIDIA GTX 1080ビデオカード2枚に、RAID 0設定のデュアル512GB SSD、更に64GBのRAMにKaby Lake i7プロセッサ。スペック上では世界最速のラップトップです。パフォーマンス上の問題は一切無く、2,560×1,080のディスプレイで120fpsを叩き出しました。NVIDIA GTX 1080が2枚あるということは、ゲームにラグが生じるのはほぼ不可能と言っても過言ではありません。

しかしそれも、ラップトップの電源が繋がっていればの話です。貴重なトイレ休憩の後、改めて座って膝に置くと、ゲームが止まりかけるほどスローなのに驚きました。終了して再起動しても遅いまま。コンセントからプラグが抜けているのに気づいて繋ぐと、全てが元通りになりました。


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US
電源。ACアダプターが2つ必要


…と思ったら、コントローラの接続が数分ごとに切断されるようになりました。まるでマスエフェクトの12時間耐久プレイに、コンピューターが音を上げているかのようです。煩わしくなった私は、電源を切って就寝しました。


6日目: 熱い


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US
コンピュータを立ち上げるとロゴが輝きます。いい感じです


外は27度でしたが、それでも平気でした…ラップトップを膝に置くまでは。次の瞬間、テキサスの夏を思い出しました。名付け子が膝の上に乗っかり、ゴツゴツした骨と汗、暖房にも負けない熱を感じたときのことです。

このラップトップは、1日の終わりに箱にしまえる子供を抱えているようなものなんです。

居心地の悪さはついに限界を超えました。小さなデスクに置こうとしましたが、あまりにも大きすぎ、重すぎて支えきれませんでした。


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US
このスキマを見よ


結局あきらめ、マスエフェクトを普段のPCでプレイしました。始めた直後から、Predatorのワイドな視野が恋しくなりました。21:9の画面は、例えPredatorの小さい21インチスクリーンでもゲームには最高です。私の50インチ 4KTVに表示すればすべてが大きく感じるはずですが、16:9の画面はせせこましく感じるのです。

でもプレイはやめませんでした。熱も、頻繁な接続切断も、膝にのしかかる破壊的な資本主義の重みも、もう沢山だったからです。


7日目: 休みの日


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US


ソファーに座って必死に仕事し、Predatorは携帯ホルダーと化していました。

このほうが良いと思います。


8日目: ダウンタウンを通って パート2


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US


私のイヌは、荷物を詰め込んだバッグが嫌いです。それを知っている私は、旅行の荷物を詰めるときは、おやつで釣って誤魔化しながら行ないます。私がPredatorの電源を慎重にケースにしまいこんで上を向くと…

イヌは私が永久にいなくなると思っていたようです。

勿論そんなことはなく、Lyftでオフィスに向かい、エレベーターで上へ行きました。「それ、ラップトップ?」同僚が笑って尋ねてました。

「ええ」私は答えました。


9日目: さらば友よ


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Photo: Alex Cranz/Gizmodo US


午後に写真を撮りました。静かなニュースルームに響くファンやビープ音のおかげか、ラップトップがいつもより重く感じました。

Predatorは静音性のために設計されたものではありません。注目を集めるためのものです。いたるところで視線を集めるし、コメントをもらうし、動かそうとすれば腕が疲れます。

その夜オフィスに置き去りにした時、後悔はありませんでした。もう十分に活躍したのです。私はこの9,000ドルのラップトップについて書いて、体験しました。そうすれば、アナタとアナタの財布が体験しなくてすむからです。


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しまいこんで暫く経った今も、誰のためのものなのか理解できないでいます。車に1,000万円、携帯に50万円とかポンと払える人のためでしょうか? でも、ボディーは安っぽいプラスチックです。ということは、欲しい人には手の届かない金額なのに、買える富裕層にとっては魅力的な見た目ではないのです。

じゃあゲーマーの為でしょうか? PCゲーマーの中でも、私たちが値段を一々気にするように、スペックやベンチマークを気にするタイプの人達です。その純粋なパワーとチカチカと光るライトはゲーマーに魅力的かもしれません。でもアップグレードできないので、4年も経てばほぼ間違いなく時代遅れになり、スマートフォンやVRヘッドセットとしか性能で勝負できなくなるでしょう。それではゲーマーにも適したコンピュータではないですね。

これは、きっとアナタの為のものなのです。このレビューを読んでなお財布に手を伸ばし、9,000ドルの話題のネタにデスクを支配されたいと考えている、そこのアナタ。そりゃあもう、話題にはつきないことでしょう。

・Acerから、ラップトップとは思えぬ豪華スペックのゲーミングPC「Predator 21 X」が発売

Source: Predator

Alex Cranz - Gizmodo US[原文]
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