インターハイ予選準決勝、国見とのライバル対決を2−0で制した長崎総科大附。大エースの安藤(写真)は全得点を叩きだして見せた。写真:川端暁彦

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 ペナルティーエリアの外、左寄り。ボールを受けて前を向く。縦への勝負。シンプルな仕掛けだったが、速く、強く、なにより鋭かった。延長後半4分まで完封ゲームを演じてきた国見のディフェンス陣が、たったひとりのストライカーに切り裂かれる。抜け出しての左足シュートから放たれた弾道にGKの反応は追い付かず、ゴールネットが揺れた。
 
「なんだか左足のほうが確率のいいシュートが撃てるようになっているんですよね。パーンというボールが行くようになったんです」
 
 そう言ってニコニコ笑った殊勲者は、長崎総科大附のFW、安藤瑞季である。
 
 6月8日、インターハイ長崎予選準決勝。長崎総科大附と国見の因縁深い対決は、延長までもつれる熱戦となっていたが、このゴールで完全に潮目が変わった。安藤はさらに、こぼれてきたボールを抜け目なく押し込む2点目も決めて、2-0の勝利に貢献してみせた。
 
「腐っても鯛(たい)だったな! あの子らしいゴールだ」
 
 長崎総科大附の小嶺忠敏監督がそう言って笑ったビッグプレー。ここで指揮官が言う「腐っていた」のは心の話ではなく、もっぱら身体の話。
 
 U-19日本代表の一員として参加したフランス・トゥーロンでの国際大会から長崎へ帰ってきたのは、試合2日前だった。当然ながらベストコンディションではない。当初から「様子を観ながら行けるところまで行く」というプランニングで、じつは交代の準備もしていたという。
 
 ところが、延長前半に相手DFに疲れが見えるなかで、むしろ切れのあるプレーを見せ始めるのだ。ニアハイを狙った左足の強シュートがバーを叩くなど可能性を感じさせるようになり、いったん思いとどまった指揮官の判断に、安藤はプレーで応えてみせた。
 
「身体が本調子じゃないぶん、ゴール前では“仕事”をしてチームを勝たせたかった」
 
 この日の安藤は立ち上がりから国見DFの反則も辞さないハードマークに遭ったが、「外国のDFもああいうのは多いので、『よし来い、もっと来いよ』くらいに思ってました」と笑う。「ガッと来るところをワンタッチでいなしてとかもやりたかったんですけれどね」というプレーは、ゴールにこそ繋がらなかったが、どんなに削られてもゴールへ勝負するマインドを落とさず、常に狙い続けた意識が延長戦で実を結ぶこととなった。
 
 トゥーロン国際トーナメントではイングランド戦で見事なゴールを決めたものの、「決めるところで決め切れないし、最後は守り切れない。いい試合はするのに勝てない日本の悪いところが出てしまった」と、課題を痛感した。特にあらためて外国勢と差を感じたのは、「とにかくゴール前の部分」だと話す。
 
「イングランド代表のボランチとか観ていても、けっこうプレーは雑なんですよ。日本のほうが器用で巧いと思います。でも、ゴール前の守備では絶対にやらせないという感じで身体を張って防いでくるし、攻めに出るとすごい迫力を出してくる。日本は守備でもっともっと戦わないといけないし、自分もゴール前ではもっと怖さと迫力を出せる選手にならないといけない」
 
 欧州の大会を通じて高校ナンバーワン・ストライカーの目線はまた少し高くなったように見える。どこと当たってもハードマークに遭うのは避けられそうにないが、この男ならばその激しい守備を逆に成長の糧とし、さらなる飛躍を遂げていくに違いない。
 
取材・文:川端暁彦