シリア戦での本田(4番)は、かつての遠藤(7番)のプレーを思いさせた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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[キリンチャレンジカップ] 日本 1-1 シリア/6月7日/東京

 シリア戦は、「いいね」と思える発見があった。本田圭佑のインサイドハーフだ。
 
 後半開始から出場し、最初は久保裕也との交代で右サイドハーフに入った。
 
 ここでの本田は、さほど“違い”を見せつけることも、攻撃のリズムに変化を生じることもできていなかった。そして、63分、今野泰幸が浅野拓磨との交代でピッチを去ると、本田はそのまま右のインサイドハーフに入った。
 
 そこから本田の良さが出てきたのだ。

 中央付近でボールをもらって“タメ”を作り、ボールを左右に散らした。するとノッキングしていたチームがスムーズに動き出した。ワイドに張り、ちょっと窮屈そうにプレーしていた右ウイングとは異なり、楽し気にプレーし、“違い”を見せてくれたのだ。
 
 前半、攻守にパっとしなかった要因のひとつは、このタメがなかったからだ。
 
 そのため全体が間延びして選手間の距離が遠くなり、攻撃が機能しなかった。また、縦に急ぐあまり、厳しい場面でも前にボールを出して奪われ、カウンターを受けた。
 
 だが、本田がインサイドハーフに入り、中盤でボールを受けることでタメができた。それが最終ラインを押し上げることにつながり、全体をコンパクトにすることができた。選手間の距離が縮まって攻撃が機能し、相手を押しこめることができた。本田が歪んだチームを修正したのだ。
 
 本田は左利きの特性も活かしている。

 左利きの本田が右サイドから中央でボールをもらうと、身体が内に開いてプレーするので自然と逆サイドの選手、あるいは中に視線が行く。左サイドの状況を見極めた上で、攻撃力の高い長友佑都や乾貴士に素早く展開し、多くのチャンスが左サイドから生まれた。この日は2本のシュートを放ち、惜しくも決めることができなかったが、本田が本来持っている攻撃力をいかんなく発揮したのだ。
 
 その存在感は大きく、チームメイトからも絶賛された。
 
「圭佑くんが中盤に入るとタメができるのでチーム全体が落ち着きます。それでラインも上がりますし、自分たちが押しこむ時間帯が増える。自分にとってもプラスですし、チームにとってもすごくプラスだと思います」(乾)
 
「中盤でタメを作ってくれてすごくありがたかったし、そこから僕にも(ボールが)入ってチャンスが増えた」(大迫勇也)
 
 インサイドハーフでの本田のプレーを見ていると、遠藤保仁を思い出した。
 ザッケローニ監督時代、ポゼッションサッカーを進化させるうえで本田が一番頼りにしていたのが遠藤だった。とかく早く前に攻撃に急ぎすぎるチームにあえて“待った”をかけ、タメを作り、リズムを変え、試合の流れさえも変えた。

 2013年、欧州遠征でのオランダ戦、後半からボランチに入って攻撃を活性化し、流れを変えた遠藤を本田は、「ヤットさんの存在感はすごい」と絶賛した。その頃の遠藤は本田だけではなく、日本代表にとって重要かつ大きな存在だった。
 
 もしかすると今、本田は遠藤のような役割を果たそうとしているのではないか。そう思えるほど、インサイドハーフの本田は遠藤っぽいプレーをしていた。タイプは違うがチームに変化をもたらした選手の傍でプレーしていただけにタメを作ってチームの流れを変える術は、しっかりと身につけている。
 
 それが縦に早く攻めるコンセプトのこのチームには効果的だ。

 ゆっくりとボールを回すとハリルホジッチ監督に「早く前に出せ」と怒鳴られるが、本田が時間を作り、左右に展開することには何も言わなかった。それを繰り返し、結果を出していけば今後、ポゼッションを可能にするキッカケになるかもしれない。
 
 守備も悪くない。

 もともとフィジカルが強いので目前や近くの相手選手をガツンと潰してくれる。危ない時には自ら後ろに下がるなど気の利いた守備ができる。後ろに戻るスピードに難があるが、背中にいるアンカーの山口蛍か井手口陽介がフォローしてくれるはずだ。
 
 4-3-3を継続するなら今後は本田をインサイドハーフで起用すべきだ。

 今の本田はサイドハーフではなく、インサイドハーフでこそ生きる。

 遠藤のように、ひとり違う空間を作ることができる。

 それが目に見えて分かったことは、シリア戦の大きな収穫のひとつだった。
 
取材・文:佐藤俊(スポーツライター)

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