5大会ぶりのU-20W杯での歩みは、ラウンド16で終わった。世界の舞台を経験したこの世代は、今後、どのような成長を遂げていくのか楽しみであり、興味深い。 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 U-20ワールドカップ、日本はラウンド16でベネズエラに延長戦の末に0-1で敗れ去ったが、試合を重ねるごとに、チームは逞しさを増していった。

 立ち上がりに失点が多い点など、流れを失うと取り戻せず、ディフェンスの甘さなどは目についた。しかしエース小川航基を膝の怪我で欠きながらも、抜群のスキルを見せ、戦い方をアジャストし、この世代が、"世界に通用する"ことを証明した。ベネズエラ戦では、成長著しい姿を見せている。
 
 試合で駆け引きを重ねるなか、若き日本の猛者たちは成熟していった。誰に言われるのでもない。自らが思考し、決断することで、短期間に、見違えるほどに腕を上げた印象がある。
 
 育成年代としては仕上げの大会、この舞台に立った意味は決して小さくはない。
 
<選手を育成する>
 
 それは簡単なことではない。人を育てる、そこに絶対的な正解がないからだろう。
 
「教えたい気持ちを、どれだけ我慢できるか」
 
 それが世界最高峰のリーガ・エスパニョーラの育成で語られる、指導者の基本である。
 
 促す、導く――。
 
 こじ開けてしまったら、中身も外見もグシャグシャになる。指導者としては、ここをこうすれば良くなるのに、というプレーが幾つも見えるだろう。しかし一つひとつまで細かく矯正するようなら、良い部分の芽まで摘み取ってしまう。選手自身が気付き、良い部分を伸ばしていくような指導が必要なのだ。
 
 例えば、ストライカーのようなポジションで、それは顕著に表われる。
 
「ストライカーは育てるのではない。生まれるのだ」
 
 それは暗黙の了解としてある。
 
 もっとも、放置しておけば良いストライカーが育ってくるのか、といえば、そうではない。
 
 スペインが生んだ最高のストライカーのひとりであるラウール・ゴンサレス(レアル・マドリー他)は、十代前半でFWの得点パターン練習を毎日のように反復練習した。
 
 プルアウェイして、ボールを受け、ニアとサイドに打ち分ける。ひとつの得点パターンのディテールを積み上げることで、自身の得点のかたちを確立していったのだ。
 肝心なのは、強制されたトレーニングではない、という点だろうか。
 
 ラウール自身が、トレーニングを率先して望んだ。さらに彼は、週末になると朝から晩まで1日中、あらゆるカテゴリーの試合を見続け、そこでの得点パターンを自身に取り込もうとしている。周りが呆れるほど、サッカーを見ることを続けていたという。
 
 自発的な鍛錬だったからこそ、身についたのだ。
 
 育成は人に巡り会えるか、という運もあるが、結局のところ、選手は選手自身によって成長を遂げる。
 
 ポルトガル代表FWのリカルド・カレスマは少年時代、コーチの話に決して耳を貸さなかったという。「協調性に欠け、大成はしないだろう」と言われた。コーチたちも、力が及ばなかったことを残念がっていた。
 
 事実、十代でバルセロナに移籍しながら、その後は不遇を託った時代もある。しかし、三十代に入ってから成熟を見せ、ポルトガル代表を欧州王者に導いているのだ。
 
 長所も短所も、個性として失わなかったことで、プロ選手として道を切り開けた、ということか。
 
 育成にはロジックがない。
 
 ひとつ言えるのは、戦い続けることで、成長のきっかけを掴むことはできるということだろう。
 
 日本の新鋭選手たちは、U-20W杯で勝負の厳しさを学んだ。それは、学習という生やさしいものではなく、身体に刻み込んだものだった。激闘の経験は、成長の触媒になるだろう。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、今年3月にはヘスス・スアレス氏との共著『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』(東邦出版)を上梓した。