AFROJACKが語る、LDH世界展開の可能性「西洋の音楽産業を大きく変えうる」

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 EXILE、三代目J Soul Brothersらが所属するLDHが2017年より「LDH WORLD」を掲げ、アメリカ、ヨーロッパ、アジアに拠点を置いた世界展開を強化している。なかでも世界のダンスミュージックシーンを牽引し続けるヨーロッパ地域には、LDH EUROPEを設立。グラミー賞受賞作品のプロデュースやリミックスを手がけたトラックが全米チャート1位を獲得するなど、世界的に活躍するオランダ出身の音楽プロデューサー、AFROJACKをLDH EUROPEのCEOとして迎えた。リアルサウンドでは、今春来日を果たしたAFROJACKにインタビューを行い、「LDH WORLD」のクリエイティブ・リーダーを務めるHIROとの出会いやLDH EUROPEが目指すもの、さらに日本におけるダンスミュージックシーンの展望について話を聞いた。(編集部)

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HIROさんと出会って、アーティストをサポートする“その先”があることに気付いた

ーーAFROJACKさんは今年、LDH EUROPEのCEOとなりました。まずはLDHと関わることになったきっかけから教えて下さい。

AFROJACK:2014年に友人だったVERVALさんの紹介でHIROさんに出会って、三代目J Soul Brothersのライブを見せてもらったのがきっかけです。これまでに見たことのないスケールの衝撃的なライブで、頭の中にはとにかく“ビッグ”という言葉が浮かびました。まさに“体感する”という言葉がふさわしいショーで、これを実現したLDHに強い興味を抱きました。その後、HIROさんとお話をしたり、一緒にご飯を食べに行ったりしてコミュニケーションが盛んになるうちに、HIROさんが抱いているビジョンが、まさに僕が理想としていたものだと気付いて、どんどん関係性が深まっていったんです。僕が住んでいるアムステルダムから遠く離れた日本で、まさかこんな出会いがあるとは思いませんでした。そして、2015年にリリースした三代目J Soul Brothers「Summer Madness」で本格的にコラボレーションを果たし、ようやく今年、一緒にLDHの精神、考え方を世界に発信していこうということになり、LDH EUROPEのCEOに就任しました。

ーーPitbullのシングル「Give Me Everything」をプロデュースして全米チャート1位を記録し、世界的DJであるDavid GuettaとともにリミックスしたMadonnaの「REVOLVER」ではグラミー賞を獲得するなど、10年代の初頭から若くして輝かしいキャリアを築いてきたAFROJACKさんですが、HIROさんと出会う前は、どんなビジョンを抱いていたのですか?

AFROJACK:当時は個人としてのキャリアを邁進している最中でした。自ら音楽を発信するだけではなく、違う形でも音楽に貢献していきたいと考えてはいたのですが、明確なビジョンは見えていなかったです。もちろん、プロデューサーとしてほかのアーティストの躍進を手伝ってはいたけれど、HIROさんと出会ってから、単にアーティストをサポートするだけではなく、その先があることに気付いたんです。HIROさんは自ら会社を起こして、夢を持った人たちがそれを叶える場所を与えて、最終的にひとつの文化としてエンタテインメントをファンの方々に届けていました。そのことを理解したとき、このやり方こそが自分の目指すところだと思い、深い感銘を受けたんです。

ーーAFROJACKさんはヨーロッパだけではなく、アメリカでも結果を出しています。LDHのように、アーティストが自ら会社を立ち上げて、エンタテイメントに関わる全体をマネジメントしていくのは、世界的に見ても珍しいものでしょうか?

AFROJACK:世界基準で見ても非常にユニークですし、アーティストにとってベストな環境だと思います。西洋の場合、あるアーティストが偶然によって最初のヒットソングを生み出すと、その後に周囲にマネジメントチームができていくのですが、いくらアーティストに才能があってもチームがちゃんとしていないと、あっという間に一発屋で終わってしまいます。ヒットの時点ではパブリッシングのこともわからないし、音楽ビジネスについてもわからないという状況なので、そういうケースはたくさんあるんです。LDHの場合、ビジネスとして軌道に乗っているのはもちろんですが、成功を収める前から育成する機関があり、ちゃんとしたサポートチームもある。こういうバックボーンがあるのは、アーティストにとって非常に心強い。僕もLDHに所属する前はひとりのアーティストとしてやってきたので、身に沁みて思います。僕が立ち上げたWall Recordingsでも、LDHのやり方を参考にさせていただいて、契約するアーティストやプロデューサーに自分の経験を教えることができる環境にしています。

ーーLDH EUROPEのCEOとしては、どんな構想を抱いているのですか。

AFROJACK:LDH JAPANが築き上げたシステムを、ヨーロッパに紹介していくのがミッションです。しかし、ヨーロッパは文化も国柄も異なるので、システムをそのまま移行するのではなく、ヨーロッパに合わせたやり方にする必要があります。どうアレンジすればLDHのシステムが機能するのか、調整を重ねていき、最終的には世界に向けてこのやり方を提案していきたいです。僕は以前から指摘しているのですが、もしこのやり方が西洋のマーケットで通じたら、既存の西洋の音楽産業が大きく変化するくらいのイノベーションになると思っていますし、きっと成功すると信じています。世界中の若い才能のあるミュージシャンに夢と機会を与えて、その夢を世界中の人たちに届けられるような最善のシステムを構築したいです。

ーーヨーロッパで発掘した新たな才能を、あなた自身がプロデュースする可能性は?

AFROJACK:ヨーロッパのアーティスト文化は日本とはまた違うので、いまのLDHのプロデュース方法をそのまま適用するわけではありませんが、もちろんその可能性もあります。アーティストが自分のクリエイティブ以外のこと、税金財務、法務といった諸問題を気にせず、制作に集中できる環境を整えていくのが、まずは目標ですね。それに、ヨーロッパに音楽の学校はもちろんあるけれど、どうすれば成功するアーティストになれるのかとか、どんな風にメディア展開していくのかとか、そういうところを教えてくれる学校はない。アーティストとしての立ち振る舞いも含めて、育成していくことにも興味があります。

■日本でダンスミュージックが広がるか否かは、リスナー次第

ーーAFROJACKさんから見て、日本の音楽マーケットはどんな風に映っていますか? 日本では圧倒的にいわゆるJ-POPが主流で、世界的に流行しているダンスミュージックは、まだそれほどには浸透していません。

AFROJACK:日本でダンスミュージックが広がるか否かは、リスナー次第だと思います。僕自身は、音楽のジャンルやスタイルについてはあまり気にしていなくて、良い曲かどうかを常に重要視しています。なぜなら、どんなジャンルやスタイルであれ、良い曲は常にピックアップされるからです。そのため、もし日本でダンスミュージックを浸透させていきたいのであれば、リスナーに対して良いダンスミュージックをどのように提案するかが鍵になるのではないでしょうか。リアルサウンドのようなウェブメディアや音楽雑誌はもちろん、テレビやラジオの音楽番組で良い特集を組んだりすることが重要で、その提案のさじ加減で音楽マーケットの指標は決まっていくと思います。

ーー先日、配信リリースされたPKCZ®の「PLAY THAT」も、AFROJACKさんがプロデュースを手掛けています。制作エピソードを教えてください。

AFROJACK:この曲ができたのは実は結構前で、2回目にLDHのライブを見に行く途中の車の中で作り始めました。1回目のLDHのライブがあまりに衝撃的だったから、そのヴァイブスをそのまま曲にして、HIROさんたちに聞かせたいと思ったんです。できあがったインストのトラックを、車を降りてその場でHIROさんたちに聞かせたらすごく気に入ってくれたので、ではこの曲をLDHアーティスト向けに仕上げていこう、ということになりました。VERVALさんと東京のスタジオに入って、ボーカルやほかのパーツを組み上げていきました。曲中に「AMS TYO」ってシャウトが入っているんですけれど、それはアムステルダムと東京のつながりを意味しています。

ーーVERVALさんと一緒に制作する中で、なにか発見はありましたか?

AFROJACK:VERVALさんは、僕にLDHのカルチャーを制作の中で体現してくれたメンバーです。彼から学んだ一番大きなことは、謙虚であるということ。彼はキャリアの長い大成功しているアーティストで、僕からすれば大先輩なのに、常に謙虚さを忘れません。ほかのスタッフとの接し方や仕事の仕方、特に日本での姿勢は、彼の背中から学ぶことが多かったです。これがLDHの仕事の仕方なんだって、感銘を受けました。

ーー最後に、改めてLDH EUROPEのCEOとして抱負を。

AFROJACK:LDHのシステムは、夢を実現していくマシーンで、これまでアメリカやヨーロッパにはなかったものです。それぞれが所属するコミュニティに貢献しながら、自分の人生を豊かにしていく方程式として、完全に自立したアーティストマネジメントと、ライブのプロダクションの会社を作り、エンタテインメントの世界を根本から変えていきます。