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●なぜオーディオ性能を重視したか

アップルは6月5日から開催した世界開発者会議「WWDC 2017」の基調講演で、スマートスピーカー「HomePod」を発表した。2017年12月に発売予定で、米国、英国、オーストラリアの英語圏3カ国から発売となる。日本での発売は未定となっているが、2018年に入ってからになりそうだ。米国での価格は349ドルとなっている。

スマートスピーカーの市場は、米国から立ち上がっており、Amazon Echoが最大の勢力となっている。Echo向けのアプリで「スキル」も1万を数え、スマート家電業界を中心に、台風の目となる存在だ。2017年5月には、ディスプレイを搭載しテレビ電話も可能なAmazon Echo Showを発表した。

2016年10月にはグーグルが、同社の人工知能Googleアシスタントを搭載するGoogle Homeで参入し、Amazon Echo以上に賢いと高い評価を得ている。グーグルは日本でも、夏以降にGoogle Homeを発売する計画。またメッセージアプリのLINEも、人工知能Clovaを搭載するスマートスピーカー「WAVE」と、顔などを表示できるディスプレイ付きモデル「FACE」をアナウンスし、夏以降販売してく計画だという。

AIを搭載するスマートスピーカーは、米国だけでなく日本でも、トレンドの兆候を見せている。そうした中でアップルが送り出したHomePodは、どのようなポジションを発揮することになるのだろうか。

○オーディオ性能を重視する理由

HomePodでまず始めに語られたのは、そのオーディオ再生能力だった。HomePodには7つのツイーター、1つのウーハーが内蔵されており、豊かなサラウンドを作り出す。iPhone 6に搭載されていたA8プロセッサがHomePodにも内蔵されて、音場設計やエコーキャンセリングなどのオーディオ処理を行い、最適な音楽再生環境で部屋を満たすことができる。

こうした「音質へのこだわり」を前面に出すアップルには、既存のAIスピーカーとの強力な差別化を図ろうという狙いがある。

実際にAmazon EchoやGoogle Homeを通じたストリーミング音楽再生を行なっているが、お世辞にも、その音質は良いとは言えない。ちょっとしたBGMがわりにはなるかもしれないが、音楽を本格的に楽しむスピーカーではないし、しっかりと音質にこだわって作られているWi-Fi対応スピーカーのSONOSでの使用に偏るようになった。

AIスピーカーといっても万能ではなく、Amazon Echoはスキルをスマホアプリ追加しなければ、何もできるようにならない。タイマー設定やニュースの読み上げ、ライトの設定はよく使うが、それ以外のことで話しかけることはほとんどなくなってしまった。

そして、こうした音声でのコントロールは、Apple Watchでも可能なわけで、部屋で大声を張り上げる必要性がなくなってしまう。

AIスピーカーというアプローチでは市場が開けない。最後発となるアップルだからこそ、異なる市場戦略での開拓を試みようというアイデアで、過程の中に入っていこうとしているのだ。

●音声アシスタントの利用を広げる第一歩

○Siriの役割

アップルはしばしば、「音楽はアップルのDNAに組み込まれている」と語る。

アップルがMacで音楽を楽しむソフトウェアiTunesを提供し、企業を立て直すまでに成長した音楽プレイヤーiPod、世界最大の時価総額へと導いたiPhone、そしてデジタルストリーミング音楽時代のApple Music、ワイヤレスオーディオのトレンドへ踏み込むAirPodsと、重要なタイミングで、アップルの音楽関連の製品やサービスが登場してきた。

Siriの説明についても、Apple Musicの膨大なライブラリを声で再生できる点を強調していた。ただ、HomePodのSiriが、音楽関連の機能しか扱わないわけではない。iPhoneやApple WatchのSiriに話しかけてできることの多くを、きちんと処理してくれる。

ただし、前述の通り、HomePodはまずは、きちんとした音質を誇るストリーミング時代のスピーカーとして家の中に入り込むことを主としている。その点で、家の中で日常的に使われるスピーカー、という存在を確立することを先決としており、Amazon EchoやGoogle Homeとの直接的な競合で勝っても、それはHomePodの成功ではないのだ。

○Apple MusicからAIスピーカー体験を作る

今回のWWDCの基調講演を通じて、もう1つ感じたことは、iOSの体験の中で、Apple Musicが1つの指標となっている点だ。

今回、iOS 11でApp Storeが大きく刷新し、ただアプリを検索するのではなく、アプリマガジンのような編集コンテンツが増えた。アプリのハウトゥやゲームのチュートリアルなどのコンテンツが配信され、毎日楽しめる場になったのだ。

デザイン面でも、Apple Musicのデザインが「設定」アプリなどにも適用され、メリハリの付いたタイトルと、グラフィカルで分かりやすい雰囲気を前面に押し出した。

HomePodも、Apple Musicをスマホなしで、声だけで操作できるようにするデバイスとして登場した。膨大な編集されたプレイリストの中から最適なものを再生したり、より強い目的性を持ってSiriを利用することになる。

こうした初期の「目的性を持って音声アシスタントを使う」体験を作ることこそ、アマゾンやグーグルと、アップルとの違いだ。アップルは、HomePodでの音楽をテーマとした音声アシスタントの利用から、生活の中でのAI活用を拡げていく、そんな戦略を歩み始めた。