物理学者アルバート・アインシュタイン(撮影日不明)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が100年前に提唱した理論の一つを裏付ける現象を、ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)を用いて観測することに成功したとの研究論文が7日、発表された。アインシュタイン自身は、この現象を直接確認できるとは思っていなかったようだ。

 米科学誌サイエンス(Science)に掲載された論文によると、遠方の星の前を別の天体が通過する際に星の光が曲げられ、そこから天体の質量を知ることができる「重力マイクロレンズ効果」として知られる現象を、天文学者チームが初めて観測したという。

 この重力マイクロレンズ効果は1919年、皆既日食時の太陽の周りで星の光が曲がったことで確認された。

 当時、この発見は、重力を時間と空間の幾何学的関数として記述するアインシュタインの一般相対性理論に対する説得力のある証拠の一部を提供した。

 米エンブリー・リドル航空大学(Embry-Riddle Aeronautical University)のテリー・オズワルト(Terry Oswalt)氏は、サイエンス誌に今回の論文と同時に掲載された解説記事で「背景の星と前にある星と地球とがちょうど一直線上に並ぶと、重力マイクロレンズ効果で光の完全な円環が形成される。これがいわゆるアインシュタイン・リングだ」と説明している。

 だがアインシュタインは、この現象を太陽以外の恒星で観測するのは不可能と考えていた。その証拠に、1936年にサイエンス誌で発表した論文では、恒星同士が離れすぎているために「この現象が直接的に観測される見込みは全くない」と記している。

 当時はまだ、2009年にハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられ、遠方の星や惑星をかつてない高精度で観測できるようになることまでは予想できなかったのだろう。

■星の化石

 米宇宙望遠鏡科学協会(Space Telescope Science Institute)のカイラシュ・サフ(Kailash Sahu)氏率いる国際研究チームは、この米航空宇宙局(NASA)の望遠鏡を使用して、太陽の近傍にある「スタイン2051B(Stein 2051 B)」と呼ばれる白色矮星(わいせい)の周囲で遠方の星の光が曲げられる現象を重点的に観測した。

 白色矮星は、恒星の一生の中の水素燃焼過程を終えた星の残骸。いわば銀河系の前世代の星々の化石だ。

 今回の研究では、この白色矮星と背景の星とが一直線上からわずかに外れ、非対称型のアインシュタイン・リングが形成されているのを確認。これに基づいて白色矮星の質量を算出した。背景の星の光が曲がる度合いは、白色矮星の質量と重力に直接関連している。

 太陽に6番目に近い白色矮星のスタイン2051Bについて研究チームは、その質量が太陽の約3分の2であると結論づけている。

 オズワルト氏は「アインシュタインの予言のこの部分は『位置天文的重力レンズ効果』と呼ばれており、この現象を太陽以外の恒星で観測したのはサフ氏のチームが初めてだ」と指摘する。

 今回の成果は「他の手段では容易に測定できない天体の質量を求める新たなツールを提供」し、「銀河系などの銀河の歴史と進化」の理解に向けた新たな機会を開くという理由で重要だとしている。
【翻訳編集】AFPBB News