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 6月1日、トランプ大統領が、地球温暖化対策の国際ルールであるパリ協定から米国が離脱することを発表した。トランプ大統領は以前から温暖化がでっち上げであるという陰謀論を信じているようなことをTwitterなどで表明しており、その予兆はあったものの、最終的に離脱という決断がくだされたことに世界は大きな衝撃を受けることになった。

 さて、そのトランプ大統領だが、いかにして彼が温暖化否定論を信ずるに至ったかということを考える際に、外せないのが保守系シンクタンクの存在だ。

 少々古いが、2008年にアメリカの環境社会学者でオクラホマ州立大教授のライリー・ダンラップが発表した論文によれば、1972〜2005年までの間に出版された英語で書かれた環境問題に懐疑的な書籍141冊を定量的に分析したところ、1990年代からそれらの本は急速に増加しており、大半が米国、しかも92%が保守系シンクタンクに関連する書籍だったという。(参照:「The organisation of denial: Conservative think tanks and environmental scepticism」)

 トランプ大統領の背後にも、ヘリテージ財団やアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AIE)など保守系シンクタンクが控えており、それらは程度の差こそあれ一様に気候変動について否定的な見解を支持している。

 特に熱心なのは、「ハートランド研究所」である。

◆「ハートランド研究所」とは?

 トランプの熱心な支持者であるアメリカの富豪、マーサー一族や、コーク兄弟など共和党のパトロンの多くが寄付・献金を行っている保守系のシンクタンクで、アメリカのNPO「CENTER OF MEDIA AND DEMOCRACY」によれば、創設時の出資者にはエクソンモービルなどの石油メジャーやジョン・M・オリン財団など保守系団体に数多く出資する富豪などが名を連ねている。また、2014年4月には国連の『気候変動に関する政府間パネル』を否定する報告書を『気候変動に関する非政府間パネル』(NIPCC)なる団体名で出したシンクタンクでもある。

 彼らによれば、「温暖化はまったく憂慮するようなことでではなく、過去において何度となく起きてきた自然の流れに過ぎない」のだという。いやそれどころか、同報告書は「温暖化は二酸化炭素が過剰に排出されるということは、植物がもっと呼吸できるようになるから良い結果をもたらす」とさえ書いている。

 これが多くのまっとうな環境学者などからすれば、まったくのデタラメに過ぎないシロモノなのは言うまでもないのだが、多くの保守系の「パトロン」筋から献金を受け取っているハートランド研究所は、このデタラメをゴリ押しすることが可能なのだ。

 カナダの環境保護NPO「デスモッグ」によれば、マーサー一族の税務申告書を分析すると、気候変動を否定する団体に2200万ドルの寄付を行ったことが明らかになっており、ハートランド研究所もその一つだという。(参照:「Desmog」)

 また、ハートランド研究所は環境問題だけではなく、ティーパーティ運動を支援・参加したりと、より直接的に政治的な活動も行っている。

 同研究所は、過去にユナボマーことセオドア・カジンスキーの顔写真を掲げて「I still believe in global warming.Do you?(私はまだ地球温暖化を信じています。あなたは?)」と描かれた看板を掲げるなど派手なキャンペーンを行うなどして温暖化否定を広めている。

 このような盛大なキャンペーンを裏付けるように、2012年には同研究所が気候変動否定のために数百万ドルを投じたキャンペーンを行い、米国やカナダの気候変動懐疑論者たちに資金を提供していたことまでが暴露されている。

 現在の同研究所のサイトでは「Action Plan for President Trump(トランプ大統領の行動計画)」と題したコンテンツの中で、パリ協定からの離脱を挙げており「大部分は終わった」と表明している。

 アメリカの共和党支援者の富豪はこうしたシンクタンクに資金を提供し、シンクタンクはロビイングや広報活動を行った。その結果が、トランプ大統領の取ったパリ協定離脱として「実を結んだ」と言えるのだ。

<文/HBO取材班>