前半10分で負傷交代を余儀なくされた香川。イラク戦には出場できるのか。写真:田中研治

写真拡大 (全5枚)

 キリンチャレンジカップの日本代表対シリア代表は1-1の引き分けに終わった。この試合は、13日のワールドカップアジア最終予選で対戦するイラクを想定した相手との対戦ということだったけど、どうやらイラク戦もなかなか厳しい戦いを強いられそうな予感がするよね。

 日本はまず試合の入り方が悪かった。スタートからシリアのほうが随所に鋭い動きを見せていて、日本はその勢いに押されていた印象だ。ミスも多くて攻撃にリズムは出ないし、逆にミスを突かれてピンチを招く場面もあった。前半は決定的なチャンスもほとんどなかったよね。
 
 こうした試合展開になってしまったのにはいくつかの理由があると思う。まずひとつは明らかにコンディションの良くない選手が何人かいたことだ。とりわけ1対1の場面ではそれが顕著に現われていた。サイドの攻防で何度かシリアの選手の突破を許していたし、暑さのなかで追いかけるのも相当しんどかったと思うよ。
 
 例えば、失点のシーンは1対1で軽くかわされてしまったプレーが起点となっている。そこから精度の高いクロスを送り込まれてヘディングシュートを許してしまったんだけど、マークに付いていた倉田も相手の切り返しにちょっと踏ん張りが利かないような状態だった。国内組も日曜に試合が終わって合流したばかり。やっぱり疲労は残っていたんじゃないかな。
 
 それともうひとつ、今回はセンターバックの森重が落選して、先発には昌子が起用された。吉田とのコンビはほとんど初めて見る人も多かったと思うけど、やっぱりどこかぎこちなさがあったよね。後ろに安定感がないと、チームも自然と後ろをカバーしようという意識が働いてしまうもの。これは別に昌子ひとりの問題というわけじゃなくて、チーム全体で乗り越えていかなくちゃいけない部分になる。
 
 CBコンビ、とくに昌子には今後、よりプレッシャーが掛かってくるかもしれない。その時にいかにカバーしていけるかがポイントになってくると思うよ。

【日本代表】シリア戦を彩った「美女サポーター」たち

 後半も日本は、やはり試合への入り方が甘かったよね。立ち上がりの48分にいきなりショートコーナーからの流れで失点を喫した。前述したサイドでの1対1の甘さもあったけど、全体的に危機感が足りないような感じだった。
 
 それでも日本は後半すぐに巻き返して、10分後には左サイドを崩して長友のクロスから今野が同点ゴールを奪ってみせたね。そして、その後も勢いを持続できたのは、やっぱりこの試合がワールドカップ予選ではなく、親善試合だったから。日本は後半スタートに本田を投入して、その後も交代枠をすべて使ってフレッシュな選手をピッチに入れ続けた。
 
 当然、あとから入った選手はよく見えるよね。その典型的な例が乾だったけど、持ち前のドリブルの技術がいいアクセントになっていた。スタートから起用されていたら、まだどうなるのかは見てみたいところだけど、オプションとして計算の立つカードにはなったんじゃないかな。
 
 後半は交代枠を使って新しい血を入れながらエネルギーを落とさず戦えたと思うし、相手もアウェー戦というハンディキャップを背負って、途中からは引いた戦い方をしてきた。状況的にも、後半は日本に流れが来るようになっていたのは間違いないよ。それだけに、最後は勝ち切って、すっきり終わりたかったよね。
 
 親善試合とはいえ、シリア相手に1-1の引き分けという結果は、批判されてしかるべきもの。勝っておかなければいけない相手であるのは間違いないし、しかもホームゲームだ。全体的なパフォーマンスは決していいものではなかったよ。
 
 ただ、個々の選手を見ると、コンディションにはバラつきがあったように見えた。90分フル出場した選手に関しては、まずまずの動きを見せていた。連係面でやや問題があったとはいえ、最終ラインは全員がフル出場。前線でも比較的長く出場していたのは大迫で、起点として身体を張ったプレーも見せていたね。
 
 それ以外の選手となると、いつもの動きではなかったように思うよ。負傷交代した香川は残念だったけど、本田と前半だけで交代した久保はミスばかりで精彩を欠いていた。欧州でのシーズン中は本当に大活躍だったから、ここにきて少し調子も落ちているのかもしれないね。
 
 さらに同点ゴールを奪った今野にしても、僕はいつものパフォーマンスではなかったように思う。たまたま点を取ったけど、攻守に躍動感のあるプレーはそんなに見られなかった。今野は先週末のJリーグでようやく途中出場で戦列に復帰したけど、本調子に戻すにはもう少し時間が必要なのかもしれない。
 
 欧州組はリーグ戦が終わったばかりで、疲れが残っている選手や怪我が完全に治り切っていない選手もいる。一方で国内組はリーグ戦が続いているなかでの招集。みんなが一斉にベストコンディションで揃うなんてことはほとんどないけど、やはり今回はちょっと落差が大きいように感じたね。
 さらに、さっきも触れたけど、香川が欠場となった場合に、誰を先発起用するのか、という問題もありそうだ。シリア戦で香川に代わって途中出場した倉田なのか、あるいはインサイドハーフで後半頭から起用された本田なのか。そのあたりもハリルホジッチ監督の頭を悩ませそうだね。
 
 ただ、ここまでいろいろと不安材料を挙げたけど、ホームで勝てる相手に楽勝の試合をやってアウェー戦に挑むより、危機感を抱きながらアウェーの地へ出て行ったほうがいいと僕は思っている。
 
 13日のイラク戦(※イランで開催)に勝てば、いよいよ6回目のワールドカップ出場にも大きく前進することになるんだ。そんな大事な一戦に臨むうえで、多少なりとも緊張感を持つことは大切だよ。最終予選で戦う相手は、いずれも生易しい相手じゃない。親善試合のシリアとは違うんだ。
 
 しかも決戦の地は中東のアウェー。日本のピッチよりも凸凹なのは当然だし、キックオフ時間が16時55分じゃ、西日が残っていて暑さも半端じゃない。代表はこれまでの経験値があるから、そうした環境は百も承知だろうけど、最後のオーストラリア戦、サウジアラビア戦に余裕を持って臨むためにも、逆境を撥ね返してぜひ勝点3を持ち帰る決意で戦ってほしい。