電子版号外で「世紀の大誤報」の過去

写真拡大

 フジテレビの亀山千広社長の“電撃退任”に続いて、5月23日に同じフジサンケイグループの産経新聞社の新社長人事発表された。新聞業界に詳しいジャーナリストが語る。

「社長を6年務めた熊坂隆光氏が会長となり、専務の飯塚浩彦氏が社長に昇格することになりました。フジテレビと違って業績低迷によるものではなく、人事そのものは順当です。飯塚氏は大阪の社会部畑で活躍後、編集局長を務めるなどいわゆる“社長コース”を歩んできた。ただ、この人事に一部の記者たちは複雑な気持ちを抱いているんです」

 どういうことか。産経の記者がこう言う。

「2011年7月に産経は電子版号外で『江沢民氏が死去』という“超特大スクープ”を飛ばしましたが、10月に本人が北京の公式行事に現われたことで生存が確認され、“世紀の大誤報”として赤っ恥をかきました。当時、東京本社編集局長だった飯塚さんは、その記事の責任者だったんです。産経では“記者たるもの人の生き死にだけは絶対に間違えるな”と教育されてきた。世界的な大誤報を出したことで、いまだに現場では“産経の信用を貶めた”という声がある。その当事者がたった6年で社長になるなんて……」

 産経新聞が2011年10月10日に掲載した誤報の経緯説明記事では、〈東京編集局で情勢を全般的に分析した結果、江氏が「死去」したと判断し(中略)伝えました〉〈情報をより精密に確認する慎重さが足りなかったことで、誤報を招いてしまいました〉と説明している。

 現場の記者たちがいまも不満を抱いているのは、この記事が特殊な経緯で掲載に至ったからだ。

「その“死去”情報は、当時の清原武彦・会長(現・相談役)、住田良能・前社長(故人)が“独自のルート”から入手したというものでした。中国情報に強い記者や北京の中国総局の記者でもウラ(事実確認)が取れなかったため現場は懐疑的でしたが、トップが掴んできたネタということで、編集局長の飯塚さんが『何かあったら責任は俺が取る』とゴーを出した。飯塚さんには3か月の減俸処分が下りましたが、過去の誤報問題の時と比べると処分は甘かった。しかも説明記事で“編集局全体のミス”とされてしまったことに納得いかない記者は多い」(同前)

 飯塚氏はその後、2013年に常務、2015年に専務と順調に出世し、6月23日の株主総会後の取締役会で正式に社長に就任する。

「むしろあの大誤報で飯塚さんが上をかばって泥を被ったという“功績”があったからこそ、今回の社長抜擢になったという見方もあります」(同前)

※週刊ポスト2017年6月16日号