W不倫がバレて、2組の夫婦の日常は、まさに地獄絵図……。そんな展開を迎えている『あなたのことはそれほど』(TBS系)の第8話。地獄が語られるときは、欲に溺れて罪を犯すまいと心を戒めるとき。“嘘つきは閻魔様に舌を抜かれるよ“のように、“不倫すると涼太(東出昌大)や麗華(仲里依紗)が怒るよ“という代名詞になりそうなくらい、ふたりの怪演技が続いている。

参考:不倫経験者が語る『あなそれ』波瑠の恐ろしさ 「決して手を出してはいけないタイプ」

 主人公・美都(波瑠)は何枚離婚届を用意しても、夫の涼太が“涼犬“だの“涼天“だのと、わざと名前を間違えて記入してしまい、なかなか離婚が成立しない。それどころか「妊娠したかもしれない」と告げれば「僕の子だよ」と、すんなり受け入れようとする。その理解しがたい言動に、美都はおののくばかり。涼太の何があっても美都と一緒にいようとする姿は、見返りを求めない“愛”か、それとも自己中心的な“押し付け“か、人によって見え方が大きく分かれそうだ。

 8話では、涼太の愛情の形が両親に強い影響を受けていることが判明する。「お天道様は見ている」と言う美都に惹かれたのも、母親がよく口にしていたから。涼太の同僚・小田原(山崎育三郎)は、その言葉を“道徳的なルールを持っているしっかりした女性“と解釈したが、どうやら涼太の言い方を見ると“大人になってもどこか夢見がちな愚かな女性“を指しているように思える。何もできない母親に代わって、料理をしてきた涼太。今では美都に手料理を振る舞うことで、“愛すること“ができていると実感しているのだろう。相手から愛されているかどうかよりも、自分が愛を注げていることが大事だという涼太。まるで、自分を形成した親の愛の形を否定されたくないかのような強い口調だった。

 一方、有島(鈴木伸之)も、妻・麗華のジリジリと責められる日々に耐えきれなくなり、不倫を自白。その結果、家の中の雰囲気は最悪に。派手でモテる有島が、地味で真逆な存在だった麗華を、人生の伴侶に選んだ理由として「カッコ悪いところも見せられる唯一の人だったからだ」と話す。きっと不倫がなければ、素直に受け入れられたであろう、この言葉も今の麗華からすれば「結婚式の言葉みたいね」と、あざ笑うしかない。素を見せられる間柄であったとしても、何もかも許されるわけではないのだ。

 「どうしてずっと嘘をつき通してくれなかったの?」ふたりの間に漂う空気は、どうしようもなく重苦しくて冷たい。嘘をつくことも、つき通さないことも罪。罪から逃れるためには、正しくないことをしない、ただ一択だ。でも、有島はそんなに真面目な人間ではない。だからこそ、カッコ悪い自分を許してくれる人に吸い寄せられてしまう。正しいことが、人を息苦しくさせるときがあるのだ。そんな有島が麗華から逃げるように後輩と飲んでいると、今度は美都の親友・香子(大政絢)が責めにやってくる。まるで麗華のように、正論を並べる香子に、有島は「いつでも正しいよね、俺らとは違うもんね」と言い「独身だけどね」と付け加えた。結婚したいと願う香子にとっては、正しいけれど武器になる言葉をつきつけ、さらに「あんたのいい人は、他の人にもいい人じゃないだろ……俺は、あいつの旦那は怖いよ」と続ける。もちろん有島にとって、涼太の狂気じみた行動は身から出たサビだ。だが、ここで興味深いのは、涼太というひとりの人間が「本当にいい人なんだから」という香子と「怖いよ」という有島とで、これほど見え方が異なるというところ。

 自分にとっての正義が、人から狂気の沙汰だと思われることは、往々にしてある。小さなコミュニティになればなるほど、それぞれの「普通」や「常識」と呼ばれる独自の正義が存在して、日々ルールを作ったり、破ったりしながら生活しているのだ。第8話では、有島家の隣人である皆美(中川翔子)の夫婦に、モラハラがあることがハッキリした。夫にとって正しいと思っている発言が、妻を傷つけていることもある。友人を思っての行動が、傍からみたら「よその夫婦を偉そうに、あーだーこーだ言う下品な人」と見られることもあるのだ。

 そして今回、最も印象的だったのは、美都の母・悦子(麻生祐未)の「愛を求めて引っかきまわしたくなるのもわかる」の言葉に対する、小田原の「俺は誰かに愛されたいと思うほど欲深くありませんから」という返事。これまでも迷彩柄のメガネに変えた涼太に合わせるように、迷彩柄のジャケットを着るなど、特別な感情を抱いているように見えた小田原。愛し、愛されることを強欲だと考える、彼の背景が気になる。また、美都の不倫を中傷するビラを配った犯人は、誰なのか。その目的も、愛を求めて引っかきまわす類のものであれば、実に悲しい連鎖だ。ドラマは残すところ、あと2話。果たして、それぞれが愛に満たされる日は来るのだろうか。(佐藤結衣)