スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツなどのIT業界の巨人が取り組んでいたことが知られる「瞑想」は、脳をリフレッシュすることでさまざまな良い効果をもたらすものとして、大企業の研修プログラムに取り入れられるなど、世界的に注目を集めています。しかし、誰にでも手軽にできる瞑想には良い効果だけでなく、「魔境」と呼ばれる悪い効果が潜んでいることも分かっており、魔境について科学的な研究が始まっています。

The varieties of contemplative experience: A mixed-methods study of meditation-related challenges in Western Buddhists

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0176239#sec028

What does meditation help? The benefits and surprising drawbacks of the art of meditation - Quartz

https://qz.com/993465/theres-a-dark-side-to-meditation-that-no-one-talks-about/

道具が不要で誰でも気軽に始められる「瞑想」は、脳をリフレッシュさせてリラックス状態にしたり、ストレスを緩和したり、心身の疲労回復を促したりと、優れた効果をもたらすと言われており、世界中に愛好家がいます。しかし、瞑想をすることで、感覚が研ぎ済まれ過ぎて幻覚が見えたり、幻聴がしたり、強迫観念に襲われたりという負の影響が現れることも知られています。この瞑想による悪影響は「魔境」と呼ばれており、瞑想に取り組み始めて数カ月で体験することになる人が多いそうです。ちなみに瞑想は英語で「meditation」と表現されますが、魔境は「makyo」と記述します。



瞑想に関するさまざまな研究が行われていますが、脳で起こる現象は科学的に証明されてはいません。それにもまして魔境についての研究は進んでいないのが現状ですが、ブラウン大学で宗教学を研究するJared Lindahl博士と心理学を研究するWilloughby Britton准教授が、瞑想に取り組む60人にインタビュー形式で瞑想体験を聞き、その中で魔境についての実態が報告されています。

インタビューされたのは瞑想をし始めたばかりのルーキーや「マスター」の域にまで達しているベテランを含む人たちで、多くの人がのべ1万時間以上の瞑想体験をしていたとのこと。Lindahl博士らは、瞑想によって発生する「認知的」「知覚的」「感情的」「身体的」「意識的」「自覚的」「社会的」という7つに分類された感覚の中に、予期せず望ましくない59種類の感覚を特定しました。この不快な感覚には、「不安」「恐怖」「不眠」「虚無感」「光の幻覚」「幻聴」「時空のゆがみ」「過敏症」「デジャブ」などが含まれ、比較的、症状の軽度な「一時的」なものから、効果が継続する「持続的」な重度な症状まで含まれていたそうです。



Lindahl博士らの研究では、いわゆる「魔境」において発生する感覚のパターンが探り出されており、研究ではさらに進んで「どのような状態の人が魔境体験をするのか?」という要因に関する固有のパターンを探そうとしています。被験者の数が増えてサンプル数が増えることで、魔境を引き起こすメカニズムや、魔境自体の効果がより深く理解されることにつながる可能性がありそうです。

なお、Lindahl博士らの研究で魔境体験を語った被験者は、必ずしも魔境を否定的なものとしてとらえているわけではなかったとのこと。回答者の中には意図的に「有害な」という単語を避けて「挑戦的な」というような形容を望んだ人がいたそうです。まだまだ現象の解明作業が始まったばかりの「魔境」ですが、体験者の主観的なとらえ方自体も魔境の影響・効果を解明するのに大きな役割を果たすかもしれません。