ウォルマート、店員が「帰宅途中に配送」は労働力の搾取か?

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米小売り最大手のウォルマートは国内の実店舗で働く従業員たちに対し、「新たな働き方」に応じることを求め始めた。インターネットで注文を受け付けた商品の配送サービスを、終業後に帰宅する途中の従業員に任せるというのだ。

この配送方法は現在のところ、アーカンソー州の1店舗と、ニュージャージー州の2店舗で試験的に導入している。米国の電子商取引部門を率いるウォルマート・eコマースU.S.のマーク・ロア社長兼最高経営責任者(CEO)は自社のブログでこれについて、「企業と店舗従業員、顧客にとってのウイン・ウイン・ウィンの関係だ」と述べている。

「この配送方法によって、より迅速に、効率よく商品を顧客に届けることができる。また、輸送コストを削減できるほか、従業員たちは追加業務に対する賃金の支給を受けることができる」という。

追加業務を請け負う従業員は希望者のみで、「配送する荷物の重量や個数、対応可能な曜日」は本人の希望に基づき設定する。米国の人口の90%はウォルマートのいずれかの店舗まで約16km以内の距離に居住しており、同社は従業員が最短距離のルートで配達をしながら帰宅できるよう、届け先を割り当てる。

ロアCEOは店舗従業員に配送業務を委託するこの方法は、市場シェアの拡大に向けた競争においてウォルマートの形勢を一変させる「ゲームチェンジャー」になり得ると考えている。

業界関係者の見方

一方、ウォルマートはこれまでのところ、配送を請け負う従業員に支払う賃金やガソリン代などを含めた経費の算出方法について、詳細を公表していない。そのため業界関係者らも、この配送方法が従業員にとって利点のあるものか、同社による労働力の搾取に当たるのか、判断するだけの十分な情報がないと指摘している。

ただし、小売業に関する情報交換の場を提供しているオンラインフォーラム「リテール・ワイヤー」には、この方法は問題の原因を生むだけだと警告する専門家らの声が寄せられている。

小売コンサルタント、ザ・リテール・ドクターのCEOは、「従業員のためになるとはとても思えない」「百貨店のノードストロームが同じ方法を採用したが、事故が起きるなどうまく行かなかった…同じことになると思う」と話す。

また、ある市場調査会社の社長はこの取り組みについて、「ウォルマートにとって長期的な利点があるとは思えない」「…成功と失敗が混在するものになるだろう。失敗があれば、顧客はそれをウォルマートに責任があるものとして記憶する。従業員たちへの悪影響が心配だ」と語る。

一方、この方法は「納得のいくものとは思えない」としながらも、今後への可能性を示すものだと見る人もいる。

顧客経験に関する専門家の一人は、「いつ惨事が起きてもおかしくない」との見方を示す一方で、「…少なくとも、本当に既存の枠に捉われない考え方をしている。その点では好意的に見ることができる。生き残るためには、小売業者は時々ではなく常に、(アマゾンCEOのジェフ・ベゾス)のように考える必要がある。この配送方法は、そうした考え方に基づいている」と述べている。