秋篠宮眞子さまの婚約が明らかになり、嬉しいニュースでマスコミはもちきりである。皇室典範第12条で「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは皇族の身分を離れる」との規定に従い、眞子さまは皇籍を離脱されることになる。

 一方で天皇陛下の譲位のための法案が審議されている。本来、天皇の譲位と眞子さまの問題は全く関連のない事案である。

 しかし、女性宮家推進の民進党などはここを先途と、安定的な皇位の継承と公務を担う皇族の減少が問題だとして、譲位の特例法案の付帯事項で女性宮家創設を検討課題にしようとしている。

 永い皇室の歴史を見た場合、8人10代の女性天皇を含めて125代のすべての天皇が男性天皇の子孫(いわゆる男系天皇)である。8人の女帝も男系天皇で、次の男系天皇への中継ぎとして在位されただけである。

 皇室典範第1条の「皇位は、皇統に属する男系の男子がこれを継承する」という規定も、憲法第2条の「皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」も守られてきた。

 しかし、民進党などが主張する女性宮家の創設は、皇室典範(や憲法)の改正を意味する。すなわち、女性宮家主張の裏には、かつて日本の歴史になかった女系天皇の臭いも漂う。

 これを「皇室の終わりの始まり」という人もおり、日本国家の在り様を根本的に改変することを意味する。

 一昨年の安保法案国会で、民主党(当時)をはじめ多くの野党は、憲法を拡大解釈するもので、立憲主義に反すると主張して政府・与党を論難した。その野党が、今度は皇室典範も憲法も無視する暴挙に出ようとしており、場当たり主義の独善としか言いようがない。

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女性宮家創設より旧皇族の復帰が先決

 連合国総司令部(GHQ)は、日本を高度な民主国家にするためとして大規模な改革に着手する。その第1が国家の基本法である憲法、そして歴史と伝統を担い、日本国家の真髄である皇室の改革であった。

 戦争に伴う法規慣例を謳うハーグ条約は「敵国の領土における軍の権力」を定めている。

 それによると、「占領者は絶対的の支障なき限り、占領地の現行法律を尊重」するとなっており、憲法と皇室典範の改正はGHQが日本の意志にも国際条約にも反して強行した不当なものであったことが明瞭である。

 そうした中で、皇統の維持に必要な皇族は、昭和天皇の直宮(じきみや)の3宮家(秩父宮・高松宮・三笠宮)だけが許され、11宮家は廃止となり、51人が皇籍を離脱した。

 ただ、「重臣会議で鈴木貫太郎元首相が『皇統が絶えることになったらどうであろうか』と質問すると、加藤宮内次官は『かつての皇族のなかに社会的に尊敬される人がおり、それを国民が認めるならその人が皇位に就いてはどうでしょうか』と述べ、また皇籍離脱する皇族について『万が一にも皇位を継ぐべきときがくるかもしれないとの御自覚のもとで身をお慎みになっていただきたい』と述べた」(竹田恒泰著『旧皇族が語る天皇の日本史』、2008年刊)と記している。

 新憲法・新皇室典範・皇室経済法が昭和22年5月3日に施行され、11宮家は10月14日に廃止される。

 18日に赤坂離宮で(昭和)天皇主催のお別れ晩餐会があり、天皇からは「身分は変わるようになったけれども、自分は今までとまったく同じ気持ちをもっている。どうか今後もいつでも会いに来てくれるように」との御言葉があり、皇室と11宮家の交流は、菊栄親睦会という会を通じて今も続いていると、竹田氏は同書で書いている。

 また、不本意に皇籍を離脱させられた旧皇族ではあるが、𥶡仁親王は同書の竹田氏との対談で、「陛下も皇族と旧皇族からなるこの菊栄親睦会を大切になさり、正月や天長節など、事あるごとにメンバーをお集めになられています。私のなかには現職皇族と元皇族の垣根などありません」とさえ語っておられる。

 世評では、皇籍を離脱して70年にもなる旧皇族にはもはや皇族としての矜持はないのではないかと見がちであるが、上述の𥶡仁親王の発言からは、旧皇族が菊栄親睦会を通じて現皇室ともしっかり繋がっていることが伺える。

 このような状況を無視して、一足飛びに歴史上になかった女性宮家の創設はないであろう。旧皇族が皇族に復帰する違和感(むしろ親和性と言った方がいいかもしれない)と、女性宮家の婿になった一般人男性が抱く違和感は比較するまでもないであろう。

 女性宮家の創設を主張する民進党などは、皇室典範第1条の男系天皇の継承を無視ないし軽視し、女性天皇を実現して、歴史にもとる女系天皇への道を拓く深謀遠慮があると思われてもおかしくない。 

旧宮家の皇族復帰のために

 眞子さまの婚約準備が進む一方で、心ある国民は公務の問題も然ることながら、皇統の断絶を心配し、あれこれ知恵を出している段階である。

 ざっくり言って、天皇の譲位に託けて女性宮家の創設が提議されているが、皇室の歴史と伝統に基づく皇統の安定的な維持が真剣に考慮されたのであろうかという疑問がある。

 皇族方には選挙権・被選挙権や居住の自由など、一般国民に認められている基本的人権の多くが制約されている。そうした中で、婚姻については大きな自由が認められるようになってきている。

 ただ、今日は皇統の維持が非常に困難な時代である。そこで、GHQが一方的に皇籍を剥奪した旧宮家に対し、皇籍復帰を願う意見も出ている。

 そのためには、旧皇族の存在をより身近なものとして国民が感じる環境醸成が大切であろう。その有力な一助は、内親王の結婚相手に見定められることではなかろうか。

 皇室・皇族にとって、皇統の持続は至上命題であろう。そこで、国民は皇統の維持について皇族方がまずは熟慮されることを、声なき声として求めている。国民が皇室を愛し、弥栄を願う故であり、決して僭越でも不遜でも不自然でもないであろう。

 旧宮家の皇族復帰が決まっているわけではないが、それを現実化するためにも、未婚の内親王方が旧皇族から伴侶を見つけて、皇籍復帰への助走に勢いをつけてほしいと筆者は願っている。

おわりに

 女性宮家という、かつてなかった人為的な制度の創設よりも、旧宮家の皇籍復帰は自然であり、国民の祝福も受けやすいのではないだろうか。

 明治以前には4つの世襲親王家が存在し、皇位継承の対象者が数多く存在した。しかし、現在は皇位継承者が数人でしかない(『正論』2017年3月号、p222)。この杞憂を払拭する最良策が旧宮家の皇族復帰であろう。

 譲位の特例法案では女性宮家の創設を検討事項に上げているが、創設される場合は公務の一部を分担される範囲に限定し、歴史に鑑みて皇位とは無関係であることを明確にしておく必要があろう。

筆者:森 清勇