あらゆるモノがインターネットで繋がるIoT(Internet of Things)。その仕組みを活用すれば、大きなチャンスが生まれるという。多くの日本企業が期待を寄せ、取り組みを進めるIoT化は、現在どのような局面にあるのか。チャンスを生かすためにはどうすればいいのか。IoTの先駆けとなる「TRON(トロン)」プロジェクトを主導し、「いつでも、どこでも、誰もが情報を扱えるユビキタス社会」実現のための研究を推進する坂村健・東洋大学情報連携学部長に、IoTの「いま」を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、松野友美)

全く新しい技術ではない?
「IoT」とはいったい何か

――坂村教授は、30年来、「TRON(トロン)」プロジェクト(リアルタイムOS策定を中心としたコンピュータ・アーキテクチャ構築プロジェクト)を主導してきました。あらゆるモノをインターネットで繋ぎ、最適なコントロールを行うという発想は、その後「ユビキタスネットワーク」、そして現在の「IoT」へと繋がります。いわゆるIoT的な概念は、これまでどのように発展してきたのでしょうか。

 IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」と呼ばれますが、単に様々な機器をネットにつなぐという意味ではありません。重要なのは「インターネットのように」会社、組織、ビル、住宅、所有者などの枠を超えてモノが繋がれる、オープンなインフラを目指すという概念です。あらゆるモノに超小型チップが付き、センサーネットワークにより状況(モノや人の位置などの空間情報、モノが何か、人が誰かなどの属性情報、温度や湿度などの総体的状況情報など)を高精度で把握でき、それを「インターネットのように」オープンにやり取りできるようになって、初めて全体最適なコントロールを行えるようになります。

 機器の中にマイクロコンピュータを入れて、それらをネットでつなげるという発想自体は、すでに30年くらい前からありました。当時はマイコンの能力が足りず、通信技術も発達していなかった。しかし、機械の制御が主目的だったマイコンの性能は、その後大きく向上し、昔の大型コンピュータを上回るようになりました。一方であらゆるモノがインターネットによって速い速度で繋がるようにもなりました。そうした下地ができてきたため、IoT的な概念が本格的に広まり始めたのです。

 そもそもTRON、ユビキタス、IoTは全く同じもので、私が1980年代半ばから携わっていたTRONプロジェクトは、IoTの先駆けです。2000年代からユビキタスという言葉が流行ったのは、1990年以降、インターネットが米国の軍事用途から産業用途へとオープン化されたのと、機器に組み込まれる部品が小型化・低価格される兆しが出て来たためです。

 ユビキタスの語源は「神様はどこにでもいる」というキリスト教由来のラテン語で、そこから「コンピュータがどこにでもある」という意味になり、2010年代に入ると実用段階に近づいてきました。そうしたときに「ユビキタスという言葉はわかりにくい」ということで、より端的な「IoT」という呼び方へ変わったのです。

 つまりIoTは、最近になって出始めた概念でも、全く新しい技術でもなく、もともとずっと研究されてきたものなのです。

続きはこちら(ダイヤモンド・オンラインへの会員登録が必要な場合があります)