社会保障審議会企業年金部会 確定拠出年金(DC)の運用に関する専門委員会は6月6日、第8回目の会合を開催し、厚生労働省に提出する報告書をまとめた。(写真は、第8回 確定拠出年金の運用に関する専門委員会の様子)

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 社会保障審議会企業年金部会 確定拠出年金(DC)の運用に関する専門委員会は6月6日、第8回目の会合を開催し、厚生労働省に提出する報告書をまとめた。「確定拠出年金の運用商品選択への支援」という副題がついた同報告書は、改正確定拠出年金法で定められた「運用商品提供数の上限」について「35本以下」とし、「指定運用方法」について基本的な考え方の基準を設けた。議論を通じて、最も重要視されたのは法の第1条が定める「確定拠出年金制度は、加入者が自己の責任において運用の指図を行い、その運用結果に基づいた給付を受ける制度」という定義。副題が示すのも、「もとより加入者は商品選択を自らの責任で行うものであるから、できるだけその選択が難しくならないようにサポートしよう」という考え方の表れだ。
 
■DC制度の普及で求められる「正しい情報の伝達」と「丁寧な説明」
 
 今回の報告書を受けて、厚労省では、政令で定めるとされた運用商品数の上限、そして、省令で示す「指定運用方法の選定基準」について、具体的な文書作りが始まる。会議に出席した厚労省年金局長の鈴木俊彦氏は委員を労うとともに、「改めて、国民・加入者に認識、知識向上に努めていくことが大事」とし、運営管理機関や労使代表など関係者による「正しい情報の伝達」と「丁寧な説明」を求めていきたいとしていた。
 
 運用商品の除外、または、指定運用方法の設定にあたっては、選定理由等を加入者に対し、「周知し、説明する」ことが繰り返し強調された。特に企業型DCでは、労使で協議して「指定運用方法」(加入者が掛金の運用商品を選択しなかった場合に、制度が自動的に指定する運用商品)を設定し、加入者にはその結果が知らされることになる。その指定する運用商品の選定では、「実質価値(購買力)の維持可能性」、「累積投資額を上回る可能(確実)性」などという、耳慣れない言葉が説明会等で使われることになりそうだ。
 
 周知し、説明することが大事といいながら、それを伝える言葉が難しい。そもそも確定拠出年金では、「拠出」、「運営管理機関」、「限度額」、「元本確保型商品」など、普段の生活では使わない言葉が多数でてくる。そこに加えて、「購買力の維持可能性」とか、「累積投資額を上回る確実性」などという一度聞いただけではピンとこない表現が使われると、よほど関心がある人以外は、「考えることを後回しにしたい」と感じてしまうだろう。
 
■専門家の正確だが難しい言葉を「分かりやすく」伝える工夫が必要
 
 今回の議論は、資産運用や年金制度などに精通した専門家が議論して、その意見を集約した報告書をまとめた。その報告書で使われる言葉が、専門的になることは仕方がない。たとえば、「購買力の維持可能性」というのは、「物価が上昇した場合、現金の価値(購買力)は定期預金で運用しているだけでは実質的に目減りしてしまう」ということを言いたかった言葉だ。ただ、定期預金金利が1%あって、インフレ率が0.8%であれば、購買力は維持されているため、定期預金などの元本確保型商品を全否定するものではないということが込められている。
 
 「累積投資額を上回る確実性」というのも、毎月の掛金の拠出は、ドルコスト平均法の効果も踏まえて、累積して積み立てた総額に対する価格変動のリスクを考えるようにしようということ。ドルコスト平均法は、ある程度の価格のブレがある資産の方が、より効果が発揮されるという側面もあるため、価格変動リスクが小さい方が良いと単純に評価してはいけないなど、実際的な評価を怠らないように求める思いも背景にある。
 
 また、このような言葉を使う背景には、「リスク」というと、「危険」と読み取ってしまって、「リスクのある運用はしない」と考えてしまいがちな、多くの日本の国民の「リスク」という言葉に関する感性の問題もある。「リスク」という言葉がネガティブな印象を与えるので、できるだけリスクという言葉を使わないという配慮だ。