乳がん検査、マンモグラフィーの画像。

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 産業技術総合研究所(産総研)は、検査画像から「癌があるかどうか」を高精度で識別する人工知能(AI)を開発した。現状での精度は乳癌の超音波画像において85%程度で、さらなる精度の向上を図るとともに、企業を通じて早期の製品化を目指している。

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 癌治療の要は、早期発見である。医学がいかに進歩したとはいえ、この大前提は変わらない。早期発見には何が必要かといえば、初期ステージの癌による病変を、どう検査画像などから診断するか、ということである。

 画像からの診断を専門に行う医師は不足している。この種の診断は知識、経験などの「職人芸」的な要素が今なおどうしても欠かすことができず、医師の育成は容易なことではない。

 今回の人工知能の開発にあたっては、正常な組織や細胞の画像データをAIに学習させた。AIは、検査画像を示されると、それを解析し、「正常ではない」と判断できる要素が検出できたときに、「異常あり」という判定を示す。

 乳癌を見つける実験では、癌の疑いのある病変部分を85%以上、自動で検出することができたという。ただし、癌ではない組織や細胞を誤って偽陽性に判定してしまうエラーもまだ少なからず生じており、今後の改良の余地は残っている。

 なお、このシステムは乳癌診断専用のものではなく、手術や内視鏡などで採取した組織を顕微鏡で調べる病理診断(こちらも専門医の数が極めて不足している)、カプセル型内視鏡による画像データからの診断などにも応用することができる。

 近年、将棋や囲碁で「AIが人間を破る」というニュースが相次いだが、この種のフィールドにおいては「人間とAIのどちらが勝っているか」という問題には、あまり意味はない。

 AIが人間の医師のサポートをすることができれば、慢性的な人手不足で過重労働が問題になっている医師の負担軽減に繋がり、また、AIが現場に出られるまでに成長を遂げられば、そこからフィードバックを得て、さらなる改良を進めることもできるのである。