ドヴィツィオーゾがドゥカティに乗って母国イタリアGPで今季初優勝 イタリアメーカーのバイクを駆るイタリア人ライダーがイタリアのサーキットで優勝する。母国GPが盛り上がるには、これ以上ない結果だ。

 トスカーナ渓谷のムジェロ・サーキットで開催された第6戦・イタリアGPで優勝を飾ったアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)は、これが最高峰3勝目。昨年の第17戦・マレーシアGP以来の優勝だが、ドライコンディションでの勝利は今回が初めて。

 また、ムジェロ・サーキットからクルマでわずか1時間のボローニャに本拠を構えるドゥカティにとって、母国での勝利は2009年のケーシー・ストーナー以来。そして、冒頭に挙げたイタリア尽くしの最高峰クラス完全制覇は、1974年にジャンフランコ・ボネラがMVアグスタを駆りイモラで勝利して以来43年ぶり、という快挙だ。

 レースを終えた直後に、ドヴィツィオーゾは「ムジェロで勝つことは全イタリア人ライダーの夢。それをついに叶えることができた」と、じつにうれしそうな表情で述べた。今回のレースで彼が優勝を獲得する過程には、偶然や幸運が左右するような要素はなにもなかった。フリー走行から着々と積み重ねてきたセッションの取り組みが、決勝レースの走りにしっかり反映された、というべきだろう。

 実際に、金曜午前のフリープラクティス(FP)1回目ではトップタイム、午後のFP2でも僅差の2番手と初日から快調で、夕刻にドヴィツィオーゾはこの日のセッションを振り返って「自分たちの持ち味である速さをしっかりと活かすことができた。ドゥカティは旋回性の課題をずっと抱えているけれども、今回はコースの特性上、その損をしている部分をブレーキングと加速でうまく埋め合わせている」と説明した。

 土曜の予選では3番手タイムを記録して、今季初のフロントローを獲得。レースでトップ争いをする準備は万端のように見えたが、唯一の想定外は、食あたりで少し体調を崩してしまったことだ。決勝日午前に20分間行なうウォームアップセッションは、大事を取って走行を見合わせた。

「マシンはすでにいい状態だったし、ウォームアップで試さなければいけないようなことも特になかった」と、体力を温存した理由を説明。午後の決勝レースでは最後までエネルギーが持つかどうかわからなかったといいながらも、最後まで力強いペースで駆け抜け、トップでチェッカーフラッグを受けた。

 優勝で25ポイントを加算した結果、年間ランキングでも首位を走るマーベリック・ビニャーレス(モビスター・ヤマハ MotoGP)に次ぐ2位に浮上した。だからといって「チャンピオン争いを目指す」というような浮き足立ったリップサービスをしないところが、この選手独特の性格でもある。

「今シーズンここまで速さを発揮できたレースもあったけれども、全18戦を戦いきるベース(セットアップ)はまだ十分ではない。1戦ごとに展開は異なるし、次戦(カタルーニャGP)のコースは完璧に特性が違う。グリップも低いし、路面状態もあまりよくなく、実際に去年のレースでは苦戦をした。どこまで自分たちの力を発揮できるかは、行ってみないとなんとも言えない」

 日々の取材でドヴィツィオーゾの話を聞いていて、いつも感心するのは、この落ち着いた慎重な姿勢だ。自分たちの状況はもとより、ライバル陣営や他選手の寸評でも、分析的かつ多角的に捉えている様子が、その言葉の端々ににじみ出る。もちろん、トップライダーといわれる選手たちは全員が優れた観察眼や冷静な分析力の持ち主だが、いいときも悪いときもけっして浮き足立たないこの沈着冷静さは、ドヴィツィオーゾならではの資質だ。

「人はそれを悲観的だというけど、現実的なんだと自分では思っている」

 そう、ドヴィツィオーゾ自身は言う。だが、ある意味ではこの言葉にこそ、彼の性格がもっとも端的に示されているとも言えるだろう。

「今はランキング2位で悪くないけれども、チャンピオン争いをするのは厳しいだろう。もちろん、そこを目指して走っているのだから全力でがんばるけど、『次で(優勝を)狙いたい』と言ってしまえる性格ではないし、だからこそ開幕以来、自分たちの長所と短所をしっかり見極めてきたんだ」

 一般に、高い能力を持つ人ほど自己評価が厳しいともいうが、彼の場合こそ、その典型例かもしれない。そして、ドゥカティがアンドレア・ドヴィツィオーゾをファクトリーライダーとして遇し続ける理由もまた、そこにあるのだろう。

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