カウンターに苦戦した前節・新潟戦を徹底的に反省。「前からプレスに行くのか否か」を場面ごとに明確にした成果が、甲府戦の完勝劇に繋がった。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第13回。テーマは「攻守の切り替え」だ。相手陣に甲府を押し込み続け、3ゴールを奪って白星を掴んだ今節。この完勝劇を演じられた理由とは? “切り替え”や“プレー選択”に焦点を当てて語ってもらった。
 
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[J1リーグ14節]仙台 3-0 甲府/6月4日(日)/ユアスタ
 
 目指しているサッカーの究極形は、90分間ずっとハーフコートゲームをすること。今節の甲府戦は少しだけ理想に近付けたのかなという実感はあるし、高い意識を持って選手たちは戦ってくれていたと思う。
 
 その意味で、攻守の切り替えがとにかく良かった。守備に回った瞬間にボールホルダーへ寄せて、前で潰す。潰し切れなかったとしても、相手優位のカウンターにさせないようにスピードを吸収することができていた。
 
 ボールを握れていれば、相手を動かし、疲れさせることができる。もし失ったとしても、すぐに奪いに行く。前半のうちに2回、3回とプレッシングが成功すれば選手たちもリズムに乗れる。
 
 そこで1本でもカウンターでフィニッシュまで行かれてしまうとバタついてしまう。それが前節の新潟戦(2-1)だった。だからこそ、徹底的に反省した。特に相手陣内で奪い返すことは休み明けのトレーニングで重点的に行ない、選手たちに刷り込んだ。
 
 その新潟戦も、きちんと下がって守備ブロックを敷けたシーンでは大きなピンチにはなっていない。「奪えるのでは?」と相手陣でプレスに行った際に剥がされて、決定機を作られてしまったのだ。
 
 カウンターを受けて危険なシーンを作られた場面を映像で確認し、「これは前からプレスに行ける。これはダメなのでリトリートする」とプレー選択を明確にさせた。その成果が今節の甲府戦だった。
 
 また、甲府の布陣や戦い方がうちに噛み合ったことも重要だった。カウンター時に飛び出してくるのは2トップ(ウイルソン、堀米勇輝)と田中佑昌。この3人は3バックとボランチ1枚で見ることができる。
 
 あとはウイングバックだが、ここは「背後を取るか、取られるかの勝負。競争だぞ」とハチ(蜂須賀孝治)と(永戸)勝也に発破を掛けた。
 
 加えて、立ち上がりシンプルにロングボールを使用してくると思っていたが、相手は後ろからつなごうとしてくれた。そうなればボールを引っ掛けるポイントを作ることができるし、バックパスをするなら勢いを持ってプレッシャーに行ける。
 守備から攻撃の切り替えも手応えはあった。ボールポゼッションも大切だが、「カウンターの怖さも示そう」という話を少し前からしており、それを出せたのが横浜戦(5月20日の12節)からだった。
 
 元々、仙台はカウンターを得意とするチームだ。マイボールになったら前線が動き出し、そこを目がけて蹴る。これが綺麗に通ればゴールに直結する可能性が高いので、相手の最終ラインは裏のスペースを気にして重心を後ろに下げる。
 
 カウンターをケアされた段階で、ボールホルダーには「前へ運ぶ」という選択肢も提示した。実際に横浜戦では後ろや横にパスをするのではなく、何人もの選手がボールを持ち上がって相手陣に入ってくれた。
 
 以前のコラムでも話したが、ポゼッションは目的ではない。ゴールを奪うためのひとつの手段に過ぎない。「90分間、ハーフコートゲームすることが究極の理想形」とは言ったものの、単にボールを握っているだけでは怖さはないので、「まずは前」や「背後を狙う」必要性も改めて示した。
 
 チームとして「ボールを奪った瞬間にどこを狙う」や「相手ボールになったらどこまで寄せる」という部分は、以前の4-4-2と少し異なる。今のシステム(3-4-2-1)でもようやく、「このタイミングでここ」という点でパスの出し手も受け手も理解が進んできた。
 
 切り替えの瞬間には、感覚的なものが存在する。「今までなら走っていたはずのエリアに味方がいない」、「今までならいなかった場所に味方がいる」というのが、ようやくアジャストできるようになってきた。
 
 欲を言えば、後半にもうふたつ、3つくらいはゴールを奪いたかった。残り5分を切ったあたりからプレーをスローダウンさせたので、ベンチから「もう1点取りに行け」と指示を出した。
 
 しかし、選手たちは無理をしなかった。「もう3-0だから」と考えたのかもしれない。それもひとつの判断。選手自身で試合の流れを読み、コントロールできた証だと考えている。
 
構成●古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
 
※渡邉監督の特別コラムは、J1リーグの毎試合後にお届けします。次回は6月17日に行なわれる15節・鳥栖戦の予定。お楽しみに!

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