県決勝で先制点を挙げ、歓喜を爆発させる芝崎(18番)。本大会での活躍も楽しみなルーキーFWだ。写真:安藤隆

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 6月5日、インターハイ大分県予選の決勝が大分スポーツ公園にて開催され、大分工を1-0のスコアで破った柳ヶ浦が3年ぶり2度目の優勝を飾った。
 
 柳ヶ浦は大分県宇佐市に校舎を構える、県内屈指の強豪私立校だ。県内の高校サッカーに詳しい記者の言葉を借りれば、「一貫してもっともカラーがハッキリしているチーム」ということになる。
 
 前線からの激しいプレッシング、ゴールに迫るスピード感、さらにはダイナミックなワイド攻撃を志向しており、絶対的な運動量の多さで勝負するのがスタイルだ。ドイツの名門ボルシア・ドルトムントのジャージに身を包む野口健太郎監督は、「高校年代になると、ボール扱いの部分はもうそんなに変わらないと思っています」と断言し、ひとつの信念を貫いている。
 
 技術的なものは中学年代までに仕込んでおくべきもので、高校で意識するべきはフィジカル面の向上であり、戦い方の部分である。それが野口監督の考え方だ。
 
「フィジカルの要素をトレーニングの最後に入れるチームが多いと思いますが、ウチは最初に入れます。まずグラウンドまで走ります。そこから体幹トレーニングも入れて、それからボールを使っていく。疲れた中でやれるのが本当の技術ですし、それを求めます。(高校年代で)ボール扱いはそう伸びないですが、少ししか足を上げられなかった選手が(柔軟性を強化することで)グッと上がるようになります。そういう部分を大切にしています」(野口監督)
 
 練習でフィジカルの要素が多いというと、日本ではそれだけで入学を敬遠されがちだが、野口監督にブレはない。入学を希望する選手に対しては、「必ず保護者にも本人にも会って話をします」と言い、その上で「来たいヤツは来い」というスタンスだという。
 
 現在のレギュラーのひとりは宮崎から来ている選手だが、県内や鹿児島の希望校には断られたそうで、学校に電話をかけ、直談判の末に練習参加。入学に至ったそうだ。東京出身の選手もいるが、「県トレセンに入る選手とかは全然いない」と野口監督が笑うように、いわゆるエリート選手が集まってくるチームではない。
 
 もうひとつ、韓国人留学生を長く受け入れ続けているのも特色だ。野口監督が「歴代で30人くらいはいると思います」と明かす伝統。昨年もDFキム・ヒョンボムがJ3のFC琉球に加入している。今年のチームで核となるMFキム・ジュンニョンも「この子は凄いモノを持っていると思う。Jリーグを狙える」と指揮官が太鼓判を押す注目株だ。ところが、このキムが今回のインターハイ予選序盤で骨折して離脱。さらに、もうひとりの留学生であるMFジン・ソルも決勝の前半半ばで負傷交代と、アクシデントに見舞われてしまう。
 
 そんなチームを救ったのは、元々はスーパーサブとしての起用を考えられていた1年生FW芝崎翼だ。
 
「相手DFの前に入るのが上手く、得点感覚がある」と指揮官が評価する逸材は、準決勝の大一番・大分戦でハットトリックを完成させて3-1の勝利に貢献すると、この決勝でも前半4分に決勝点となるゴールを決め、チームを優勝に導いた。ベースの身体能力も高く、「1年生なので体力面はどうかなと心配していた」(野口監督)という事前の不安も吹き飛ばし、連戦の中で輝き続けたのだ。
 
 そして看板選手不在の苦境に際して、3年生たちも踏ん張った。
 
「この子たちはキツい練習を要求しても、前向きに取り組んでくれていた」(野口監督)という成果をピッチの中で披露した。「ふたりとも本当のガッツマン」というDF原田涼平、田中竜の両サイドバックに象徴される粘り強い戦いで、決勝でも大分工の反撃を封殺。「走り負けは絶対しないのがウチの約束事」というポリシーそのままの戦いぶりで、全国切符を掴み取った。
 
 全国に向けては「まだまだ厳しいですよ」と野口監督は笑うが、選手たちには3年前の出場時に前橋育英と死闘を演じた試合(1-2の惜敗)の映像を見せて、「相手は日本代表が3人もいたチームだったけれど、先輩たちは意外にやれているだろう?」と早くもポジティブなイメージを刷り込み済み。「大分のドルトムント」が全国大会で台風の目となれるかどうか。それはここから本大会までの2か月弱の時間を、どこまで有効に使えるかに懸かっている。
 
取材・文:川端暁彦(フリーライター)