カタール・ドーハの高層ビル群(2009年3月9日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】サウジアラビアとアラブ首長国連邦など中東の複数国がカタールとの国交を断絶すると発表したことをめぐり、専門家らは5日、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の中東への新たなアプローチを後ろ盾に、カタールを孤立させるチャンスを逃さなかったと指摘している。

 天然ガスが豊富で外交政策では長年にわたり周辺国と相容れない立場をとってきたカタールだが、先月にはイランを敵対視する米国のスタンスを疑問視する発言が報じられ、これをきっかけに一気に緊張が高まった。

 国営メディアに掲載されたこの発言についてカタール政府は、サイバー攻撃によるもので真意ではないとしており、トランプ氏が隣国サウジアラビアを訪問後、ハッカー集団がタミム・ビン・ハマド・サーニ(Tamim bin Hamad Al-Thani)首長名義で一連の爆弾発言を行ったと主張している。

 問題の発言は、サウジやUAEといったイスラム教スンニ(Sunni)派の首長国に対する侮辱として受け止められた。これらの国は、トランプ氏およびイスラム教シーア(Shiite)派主流のイランに対する強硬路線を支持している。

 同日、サウジ、UAE、イエメン、バーレーン、エジプトが、カタールと断交。一部の国は、交通の遮断も発表した。

 英シンクタンク「欧州外交評議会(European Council on Foreign Relations)」の客員研究員アダム・バロン(Adam Baron)氏は、「湾岸協力会議(GCC)に加盟する6か国間の緊張がこれまでにないほど高まっていることが示されているのは確かだ」と述べる。

 そして、「カタールは長年にわたり独立した立場を持ち続けていたため、それがサウジやUAEをはじめとする隣国からの反感につながった。カタールとムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)との関係をめぐっては特にそうだ」とも指摘した。ムスリム同胞団は今から約90年前にエジプトで創設され、その後、周辺地域で勢力を伸ばした。

 エジプトで行われた民主的な大統領選挙でムスリム同胞団を出身母体とするムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)氏が当選すると、サウジやエジプト、UAEは同団体を「テロ組織」と主張。同政権は2013年、軍によるクーデターで転覆した。

 カタール政府がモルシ氏を支援したことで摩擦が生じ、バーレーンやサウジ、UAEは2014年、ドーハに赴任していた大使を数か月にわたり帰国させたこともある。

 そのような対立が生じた中でもカタール政府はムスリム同胞団の指導者らを擁護し続けた。

■サウジ支持派

 英ロンドン(London)のシンクタンク「英王立国際問題研究所(チャタムハウス、Chatham House)」上級主任研究員のジェーン・キニンモント(Jane Kinninmont)氏は、今回の緊張が「カタールによる新たな行動」に起因していると明確に示されてはいないと指摘する。

 そして、サウジ、UAEの両国政府がトランプ政権とのつながりを強化するなか、今回のカタールとの断交は、これまで伺っていたチャンスに飛びついた恰好だとの見方を示した。

 スンニ派イスラム過激組織が複数の国々で攻撃を行う中、トランプ氏は先月、サウジの首都リヤド(Riyadh)で行った演説で、過激主義者やテロリストらを「排除」するよう湾岸諸国などのイスラム指導者らに対し呼び掛けた。

 この演説でトランプ氏は、イランを名指しして「宗派対立とテロ」を煽っていると述べ、サウジのこれまでの主張に同調してみせた。

 他方で、シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究院(S. Rajaratnam School of International Studies)の中東地域アナリスト、ジェームズ・ドーシー(James Dorsey)氏も5日、「イラン問題の延長としてカタールを孤立化させるためのサウジとUAEによる取り組み」だと今回の動きについて指摘している。

 両国政府の目的についてドーシー氏は、非アラブ国に立場を明らかにするよう求めつつ、「反イランの立場をとらず、またイスラム過激派や武装集団との関係があることを理由にカタール政府を強く非難するようトランプ氏を説得することにある」と報告書に記している。
【翻訳編集】AFPBB News