必要なのは「考えを変える」勇気 英選挙に見る新たなリーダーシップ

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読者の皆さんは英国総選挙の動向を追っていないかもしれないが、そうであれば大きな出来事を見逃してしまっている。多くの識者によると、英国史上初めて、政党が当選前からマニフェスト(選挙公約)を撤回するという事態が起きたというのだ。

公約変更の責任者、保守党党首のテリーザ・メイ首相はこれにより強い批判を浴びたが、私は反対の意見だ。この行動は、新たなリーダーシップの形を体現していると私は思う。このような指導者がより必要とされているのだ。

事の次第はこうだ。保守党は、高齢者の介護費負担方法を変更する提案をした。しかし発表後すぐに批判が集中したため、メイはこの公約に変更を加えた。メイは公約を「明確化」しただけだと主張しているが、実際には変更だった。考えを変えたのは正しい決断だっただけに、それを正直に認めなかったのは残念だ。

いずれにせよ、英国における現在の政治状況は「正気ではない」と表現するのが一番合っている。「全く理解不能」とも言えるかもしれない。つい数週間前に選挙が発表されたとき、全員が保守党の大勝利を予想していた。しかし先日の世論調査では、絶対多数も確保できないだろうということが示された。

こうした環境では、どのようなリーダーが好まれるだろうか? 周りを道連れに崖から飛び降りることになっても断固として決めた道を守る人?それとも状況が変わったときにはそれを認め、状況に合った変更を加えられる人--?

どちらも好ましい選択肢とは言えないが、政策を変更して短期的な辱めを受けることと、不人気極まりない政策を掲げた選挙活動を指揮し、長期的な痛みを受けることのどちらが良いだろう?

これは選挙だけではなく、企業経営にも当てはまるだろうか? もちろんだ。一度ある方針を約束した場合、何があってもそれに従う必要があると感じているリーダーは多い。不安定な状況では、これは良いリーダーシップの取り方ではない。

考えを変えることに対して、私たちはもっと柔軟に考えるべきだ。私たちが考えを変える時は大抵、安全性や倫理的行動、法の順守といった、決して譲れない根本的な問題に関してではない。専念する市場や販売促進する商品といった方向性を変えるわけではなく、新たな情報を受け、目標に近づくための最善策についての考えを更新しているだけだ。

最近では、私自身もこれを実践している。提案を出すのがはるかに早くなり、うまくいかないと思われればすぐ調整できるようになった。自分が「考えを変えて」いることにはぼんやりと気付いてはいるが、周りにはそう受け止められていないようだ。周囲の人々は、私が他者の視点により敏感に反応するようになったと感じ、良い反応を見せている。

最後に、前世紀で最も偉大な知識人の一人である経済学者、ジョン・メイナード・ケインズの言葉を紹介する。彼は、大抵の人と比べて自分が正しいと考えるに足る根拠を持っていたが、考えを変えたことについて人からとがめられた際、次のように返答したと言われる。

「事実が変化すれば、私は考えを変える。あなたならどうしますか?」