ジュビロ磐田の川又堅碁とアダイウトン。ガンバ大阪DF陣に脅威を与え続けた【写真:Getty Images】

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持ち味を発揮した川又とアダイウトン

 4日、明治安田生命J1リーグ第14節が行われ、ジュビロ磐田がガンバ大阪に3-0で勝利した。最近の試合では勝ちがなかったどころか得点も奪えていなかったサックスブルーだったが、リーグ屈指の強豪を相手から勝ち点3を奪取。川又堅碁とアダイウトン、決めるべき選手がゴールを奪ったことで、名波浩監督率いるチームは勢いづくことができるだろうか。(取材・文:青木務)

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 複数ゴールを奪った上に無失点と、前節まで暗いトンネルの中を彷徨っていたジュビロ磐田が鮮やかな勝利を挙げた。しかも相手は、リーグの主役の一角を担うガンバ大阪だった。

「勝ち点3と同じくらい先制点に執着してやってくれた」と、名波浩監督は選手たちの姿勢を評価する。5試合勝ちなしのうち4試合でノーゴール。先にスコアさえ動かせていれば、という試合を繰り返すチームにあって、人一倍責任を感じていた川又堅碁とアダイウトンがついに持ち味を発揮した。

 強靭なフィジカルと馬力のあるランニングで圧力を与える彼らは、相手CBを弾き飛ばし、入れ替わることでゴールを記録した。J1制覇を狙う強豪に敢然と立ち向かい、3-0という結果を得られたのは、2人の活躍によるところが大きい。

 特に、川又にとっては待望の1試合2得点だ。前節までに挙げたゴールは『3』。前線からのプレスやポストプレーと数字に表れないところでの貢献は確かに目を見張るものがあった。しかし、爆発しそうな気配を漂わせながら燻り続けた。

 最後にネットを揺らしたのは、明治安田生命J1リーグ第9節・北海道コンサドーレ札幌戦だ。この得点は立ち上がりに2点ビハインドを背負ったチームの目を覚まさせるものだったが、結果は引き分けに終わった。

 磐田は勝利から遠ざかり、翌節のヴァンフォーレ甲府戦からはチームとして得点すら奪えなくなる。

 どの試合もチャンスはあった。完敗となった川崎フロンターレ戦や柏レイソル戦、スコアレスドローのサンフレッチェ広島戦でも、最初に決定機を迎えたのは磐田だった。川又自身にも千載一遇の場面があったものの、シュートを放った後の表情は悔しさで滲んだ。

勝利の原動力。チームとして統一された戦い方

 迎えたG大阪戦でも、磐田は試合の入りに成功している。前半開始早々の2分、大井健太郎が左サイドへ蹴ったボールに川又が走り込み、三浦弦太が処理するより一瞬先に触って抜け出した。ゴールライン際まで持ち込むと、マイナスのパスをアダイウトンがシュートを放つ。これは相手にブロックされたが、こぼれ球を拾った中村俊輔から二次攻撃が始まり、PA内で川又が左足で狙った。

 そして31分、三浦を弾き飛ばしたアダイウトンが先制点を奪い、40分にはセットプレーから最後は川又が決めてリードを広げる。55分にも、川又がファビオと入れ替わって抜け出すと、試合を決める3点目をゴールへ蹴り込んだ。

 G大阪を相手に3-0と、消化不良だった過去5試合からは想像できない成果だ。スコアラーの川又とアダイウトンが本領発揮したと言えるだろう。

 だが、勝利の原動力はそれだけではない。彼らが爆発できたのは、チームとして統一された戦い方があったからだ。

 最近の磐田は試合2日前に紅白戦とセットプレーを行い、翌日は選手たちの笑い声も聞こえるリラックスゲームなど軽めの調整で試合に備える、というサイクルだった。

 しかし、G大阪戦に向けたトレーニングでは試合前日も11対11を実施。主に相手ボール時の守備陣形の確認に時間を費やした。スタメン出場することになる11人の配置は【3-4-2-1】。シャドーの位置にはアダイウトンと、左ハムストリングス肉離れからの早期復帰を果たした中村俊輔が入った。

中村俊輔が即答。ペースを握れた要因

 ブラジル人アタッカーと背番号10は守備面において重要な役割を担った。試合後、中村俊輔は立ち上がりからペースを握った要因を「前の守備だと思う」と即答し、こう続けた。

「アダがしっかり相手の右サイドバックを見てくれて、僕は左サイドバックを見て。これまではサイドバックへのファーストアタックをウイングバックがやっていたけど、それだとズレる距離が長すぎてしまう」

 後ろから次々と人が出て行くことで自分たちからアクションを起こす、という積極的な守備を磐田は目指している。戦前、名波監督が「引いて守って構えるサッカーをしていたらこのクラブに未来はない」と話したことからもわかるように、相手のミスを待つだけのサッカーは選択しない。

 中村俊輔も「ベタ引きはネガティブ」と話しており、考え方は指揮官と共通している。その中で「守りの入り方って大事だと思う」と強調する。“ピッチ内の温度”を大切にする指揮官は実際にプレーする選手たちの意見を尊重しつつ、G大阪という強者に対抗するための処置を施した。

 結果、高い位置から追っては剥がされるというシーンは減少。守備陣は常にいい状態で対応することができた。中盤で相手ボランチにボールを持たれる場面はあったが、『泳がせていた』と言い換えていいだろう。ボールアプローチは常に鋭く、球際の強さでも上回った。ミス待ちではなく、ミスを誘う戦いを見せた。

 右WBで奮闘した櫻内渚も好感触を得た様子で、今後への期待感と修正点を語っている。

「シュンさんがあそこまで相手についてきてくれた分、守備のところが明確になった。相手サイドバックが高い位置に上がってくる時は自分に受け渡してもらうなど、やり方がハッキリしていた。だからやりやすかった。僕が高い位置まで追いすぎて(右CBの高橋)祥平がカバーするスペースが広がったらしんどくなる。

 ただ全体が下がりすぎてしまうと、自分たちから奪いに行くというアクションサッカーができないと思うので、それは時間帯によって使い分けていた。自分たちの新しいオプションにできれば」

川辺が明かした監督とのやり取り。指揮官からの信頼

 守備が機能したことが歓喜に繋がり、川又とアダイウトンの『個』も際立った試合でもう一人、忘れてはならない選手がいる。川辺駿である。

 名波監督からムサエフと共にこの試合のキーマンに指名されていた21歳は、G大阪の攻撃を遅らせ、ボールを刈り取り、セカンドボールも迅速に回収するなど確実に仕事を遂行した。相手ゴール前へ侵入した際はヒールで流し、味方のシュートを演出するなど随所にアイディアを発揮した

 磐田は【3-4-2-1】の布陣で完封したが、川辺は名波監督との間であるやり取りがあったことを明かす。

「(試合前日の)フォーメーション練習の時に名波さんから「やってみてどう? やりづらさはないか?」って聞かれて、確認した中で2シャドーになった。信頼してもらっているなと感じたし、チームの結果で示さないといけないと思っていたので、それができて良かった」

 サンフレッチェ広島からの期限付き移籍も3年目を迎えた川辺は、今や『名波ジュビロ』で不可欠な存在だ。チームにはパフォーマンスが結果に直結する選手が何人かいるが、背番号40もその一人だろう。契約の関係で出場できなかった広島戦以外、今シーズンは全試合スタメン出場中だ。このことからも指揮官からの信頼の大きさがうかがえる。

 川辺の言葉に耳を傾けると、やはりこのホームゲームは相手のミスを待つだけの戦いではなかったことがわかる。

「自分たちの前に(ボールホルダーが)いる時は、下がるんじゃなくて少しでもプレスに行って相手に自由にさせないようにと思っていた。何本かサイドチェンジされて、そういうところではもう少し行きたい部分はあったけど、ただ出て行って間を使われるのも嫌だった。出た後も素早く戻って、また出て行くということを繰り返した」

川又とアダイウトンの活かし方。再認識した彼らの長所

 適切な守備対応と効率的な攻撃で白星を掴んだ磐田だが、相手の中心選手を抑えつつ味方FWを躍動させた点に、川辺は手応えを感じていた。

「奪った後の質も良かったと思うし、特に井手口(陽介)選手とか倉田(秋)選手を自由にさせないようにしながら、うまく堅碁くんやアダを活かせたと思う。そういう部分で相手をひっくり返して、なおかつ得点にも繋がった」

 集中力の高いゲームを実現し要所で得点を加えるなど、チーム全体が安定したパフォーマンスを見せた。川辺もクオリティを見せ、相手の戦意を削ぐ3点目を演出している。そして、川又とアダイウトンを活かす術も再認識した。スペースを縦横無尽に走った時の彼らは怖いものなしだということを。

「ああいう活かし方が一番いいのかも。2人とも追ってくれるので、今日みたいな形をもっと増やしたい。もっと綺麗に、と今までは思っていた。でもベースはラフなボールを入れつつ、違う形も作っていくのというのもありかなと」

 日本代表5人を揃えるリーグ屈指のビッグクラブから勝利を挙げ、これまでの鬱憤も晴れたことだろう。G大阪の井手口は「前半も後半も、相手のサッカーにしてやられた」と振り返った。強豪の持ち味を封じ、自分たちの特徴を最大限に発揮したこの日のサックスブルーは、ひとつの戦い方を見出したのかもしれない。

(取材・文:青木務)

text by 青木務