米国のパリ協定離脱 口実にされたビジネス界が一斉に反論

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ドナルド・トランプ大統領は先週、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から米国が離脱すると発表した。米企業の支援と支持者層の要求を満たすことを目的とした、極めて後進的な動きだ。

トランプの視野が非常に狭いことはすぐに明らかになった。発表の際、トランプは「私はパリではなく(かつて炭鉱産業で栄えた)ピッツバーグの市民の代表として選出された」と主張。ともにPで始まる二都市の名前を持ち出した手法はスピーチとしては良いが、内容は全くの誤りだった。

ピッツバーグ市のビル・ペドゥート市長は、同市の市民が実際にはパリ協定を強く支持していると即座に反論。「ピッツバーグ市長として、私たちの市民、経済、そして未来のために、パリ協定の指針に従うことを保証する」とツイートした。

協定を離脱することで、不況に苦しむ石炭産業などには短期的な利益がもたらされるかもしれない。しかし米実業界の思想リーダーたちは、深刻な懸念を即座に表明した。ここではそのほんの一部を紹介する。

アップル

「気候変動は現実であり、私たち全員がこれと闘う責任を負っています。今日の出来事は、アップルの環境保護の取り組みには全く影響しません」

ゼネラル・モーターズ(GM)

「GMの環境に対する誓約が揺れることはなく、気候変動に対する私たちの立場も変わっていません。国際的な合意とは別に、当社は環境改善に向けた取り組みを継続します」

ゴールドマン・サックス

「本日の決定は、環境、そして世界のリーダーとしての米国の立場にとって後退となる」。(余談だが、これは同社のロイド・ブランクファイン最高経営責任者の初ツイートとなった)

パリ協定離脱によって恩恵を受けるとされていたビジネス界から「余計なお世話」との返答が突き付けられた形だ。これに私がどれだけ驚いたかと言えば、きょうは太陽が東から昇ったと言われるのと同じくらいだ。

フォーチュン500に選出された企業の元役員として、さまざまなビジネスリスク委員会に何年も所属してきた私は、天然資源、農業、サプライチェーン、オペレーションのインフラなど、気候変動がマネジメントにもたらす多くの実質的なリスクについては以前から関心を持っている。

時が流れるにつれ、ビジネス界では気候変動対策が着実に支持を集めてきた。大統領選挙からまもなく、ビジネス界のリーダーたちは思慮深い長文の公開書簡を発表し、懸念を表明。この書簡には300社を超える米企業が署名し、そのうち72社は年間収益が1億ドル(約110億円)を超える企業だった。

それも効果はなかった。支持者層に対する誤った選挙公約を果たす方が重要だと考えた大統領は、結局ビジネス界のほとんどが望まない贈り物をすることになったのだ。

これに対する大多数の反応は、ワシントン州のジェイ・インズリー州知事のテレビインタビューにうまく表現されている。インズリー知事は大統領を「Flat Earth Society(地球が平面だと信じる人の集まり)」の一員だとした上で、今まで常に「進歩のエンジン」だった米国が、今や列車の最後尾でけん引される車掌車となってしまったようだと嘆いた。