手堅い試合運びで県決勝を制した星稜。スタイル変更が浮上のきっかけに。写真:森田将義

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 昨年までに積み上げた全国大会の出場歴は、インターハイが25回で、選手権が26回。現主将のDF敷田唯が、「星稜は王者であり続けないといけない」と語るように、石川県内における星稜は、負けが許されないチームだ。
 
 選手権に至っては1999年度から17連覇を果たしていたが、昨年は予選決勝で鵬学園に敗れ、記録がストップ。「17年間当たり前だった優勝が、ある日突然当たり前じゃなくなった。あの負けによって、当たり前なんてないってことをチーム全体で知らされた」(MF高岸憲伸)という。
 
 捲土重来を期して臨んだ2017年。だが、新チーム立ち上げ当初は調子が上がらなかった。敷田は「昨年、僕らは選手権予選での負けを目の前で見ている。負けはもう許されないので、勝利に対する意識が強い」と振り返る。練習から大声を出し、士気を高めることで勝負に対する意識を高めたが、1、2月の対外試合では黒星が先行した。
 
 浮上のきっかけとなったのは、スタイルの変化だ。昨年までは、FW窪田翔(現・筑波大)をはじめ確固たるターゲットがおり、ボールを奪ったら素早く前線に展開できた。FWを起点に二次攻撃を仕掛ける形が定番だったが、今年のチームにはその基準点がいない。理想とする崩しが、上手く機能しなかったのだ。

 そこで、小柄な技巧派が多い新チームの特徴を考慮し、4月のプリンスリーグ北信越の開幕前から後方からパスを繋ぐサッカーに方向転換。これが奏功する。試合を重ねるごとに、「パスを繋ぎながら数的優位を作ったり、長い時間ボールを保持することの大切さが学べたし、試合に勝てたことですごく自信になった」(高岸)。
 
 迎えたインターハイ予選では、「勝って当たり前の試合なんてひとつもない」(高岸)ことをチーム全員が理解し、どんな試合であっても貪欲に勝ちにこだわり、全力を尽くした。プレー面では、“当たり前に”パスを味方へ繋げることを徹底し、その結果、金沢との決勝では前半18分に奪った高岸の先制点を皮切りに3点を奪って快勝。6年連続26回目となるインターハイ出場を手にした。
 
「勝てたことは良かったけど、内容はまだまだ。もっと点が取れたと思うし、自分たちのミスからカウンターを受ける場面が大会を通じて何回もあった」
 
 敷田がそう反省したように、まだまだ改善の余地はあるが、「対人のところで戦うという強さは、昨年の先輩から教えてもらった部分」(高岸)と、星稜らしさが見受けられた点など収穫も少なくない。
 
 昨年の選手権予選後、高岸は昨年の主将だったGK高橋謙太郎(現・東京学芸大)から「頼むぞ」と声をかけられ、「短い言葉だけど、気持ちをすごく感じた」という。
 
 選手権の連続出場は途絶えたものの、先輩たちの想い、そして絶対王者・星稜のDNAはしっかりと今年のチームに受け継がれている。“当たり前”である全国の舞台に戻った彼らが、どんな戦いを見せてくれるのか。宮城での本大会がいまから楽しみでならない。
 
取材・文:森田将義(フリーライター)