天才子役・谷花音、『夜明け告げるルーのうた』で好演! “言葉にならない言葉”をどう表現?

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 人気子役のひとりである谷花音が、現在公開中のアニメーション映画『夜明け告げるルーのうた』(湯浅政明監督)でルーの声優を務め、その違和感のない自然な声の演技に絶賛の声が上がっている。昨年の大ヒット映画『君の名は。』(新海誠監督)ではヒロインの妹・宮水四葉の声も担当しており、声優としての新たな才能に今注目が集まっている。

参考:芦田愛菜はやはり天才だったーー『山田孝之のカンヌ映画祭』で示す“子役”からの進化

 谷は、2004年生まれの現在13歳。この2004年度の生まれはほかに、鈴木福、芦田愛菜、小林星蘭、本田望結、鈴木梨央といった天才子役たちが勢揃いしており、まさに子役たちの黄金世代である。この世代に天才と呼ばれる子役が集結したのは、同世代のライバルが多く、幼くして演技の競い合いが生じたためではないだろうか。その中でも谷は、大人びたルックスと愛らしい笑顔から“小悪魔系子役”と呼ばれ、まるで大人の女性が魔法をかけられ子供になってしまったような唯一無二の存在感を放っている。

 5歳でドラマデビューした谷。泣きの演技を得意とし、2011年に放送された連続ドラマ『名前をなくした女神』(フジテレビ系)では、いじめの加害者なのに被害者を装うという難役に挑み、“悪魔”の顔を持ちながらも“天使”のような笑顔というギャップで視聴者を魅了した。親のネグレクトに悩み泣く姿は見る者を圧倒させ、7歳にして一気にブレイク。

 2015年にはアニメ原作のドラマ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』( フジテレビ系)で、ヒロインめんま役の幼少期を演じた。好きな男の子に「ブス」と言われ、ショックを受けながらも涙を耐え微笑むという繊細な心を見事に表現し、最後の泣きながら別れを告げるシーンの演技はまさに圧巻。アニメに匹敵する感動を呼ぶと同時に、谷は女優としての成長を見せつけた。

 子役として、バラエティ番組から、CM、舞台、歌手デビューまで、様々なことに挑戦をしている谷。声優としての仕事は、2015年の映画『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』があるが、あくまでもこれは当時の人気子役たちを集めて吹き替えをした企画ものであった。そのため、声優の才能をしっかりと見せたのが、先述した『君の名は。』での四葉役。しっかり者の小学4年生の役で、田舎の方言も違和感なく自然に演じている。

 声優の定型なクセを嫌い、声にリアルさを求めて俳優を起用する劇場版アニメもしばしばあるが、リアルを追求した分、素人っぽさに違和感を覚えることも少なくない。しかし谷の場合は、クセもなく自然に演じてしまっているところに、声優の才能を感じさせた。現在公開中の映画『夜明け告げるルーのうた』で、湯浅監督が谷を選んだ理由について、「徹底した演技指導で芝居が固くなってもいけないし、『素』すぎて意思が弱い様に聞こえてもいけない。彼女は2つの方向のバランスをいい按配で表現してくれました」(引用:パンフレット)と語っているが、『君の名は。』での声優もまたそれであった。

 『夜明け告げるルーのうた』は、どうしても『崖の上のポニョ』を連想させてしまう雰囲気なのだが、『マインド・ゲーム』や『四畳半神話大系』を手がけた湯浅監督による独特な世界観と、『夜は短し歩けよ乙女』でも見せたエキセントリックなダンスシーンやトリップしたかのような描写が至るところに見られ、湯浅監督にしか表現できない普通じゃない映画に仕上がっている。そして映画『コクーン』(ロン・ハワード監督)のような哲学と感動が押し寄せ、伏線も綺麗に回収される、まさに傑作だ。

 谷は人魚であるルーの声を担当。普通に人の役でも声優は難しいのに、監督からは「人間ぽくしないでほしい」という指示で悩んだという。そのため、悲鳴の「ギィー」であったり、歌も「ラー」とか「ピー」で歌ってみたり、言葉にならない言葉で人魚を巧みに演じている。

 また物語で一番重要な「好き」というセリフが、恋愛対象なのか、人として好きなのかということを谷は考えたのだとか。当時12歳の子がひとつのセリフを深く考え行き着いた答えが、素直な気持ちで言う「好き」というセリフだった。このセリフひとつとっても、子役として培ってきた経験から来る声優としての高いセンスが伺えた。

 湯浅監督は舞台挨拶で「人間ではないということで難しかったと思いますけど、谷さんのおかげで、ルーというキャラクターがすごく可愛らしくありながらも、皆の心に残るキャラクターになったと思います。ピュアで優しく元気一杯で、でも少し大人なところもあるルーのキャラタクターは谷さんなくしてできない感じだった思います」と絶賛。湯浅監督特有の世界観をキッチリと受け止め、純粋に応える演技力があり、なおかつ有名子役なのに声優の時は彼女の顔が見えてこない。だからこそ声優にも向いているのだ。『君の名は。』でも感じたが、まさかここまでキャラに馴染んで声優ができるのかと、正直驚きである。

 今の声優業界は坂本真綾、花澤香菜、悠木碧など上げればキリがないほど子役上がりが目立つ。天才子役と言われた美山加恋も最近では『魔法つかいプリキュア!』(テレビ朝日系)などで声優を担当。また、『君の名は。』で主人公・立花瀧の声優を勤めた神木隆之介のように、役者業と両立している俳優も少なくない。幼いうちから確かな演技力を身につけている子役出身者は、キャリアが長く業界も知っているため重宝されるのだ。

 今年、中学生になった谷花音。容姿も生活も急激に変化を遂げる年齢となり、誰しもが迎える子役の過渡期である。同世代の芦田や本田らが次へのステップを踏み出している中、谷もまた声優の才能を開花させ、可能性の幅を広げた。今後芸能界で活躍する上で、彼女らの新たなる選択肢は大きな武器になっていくことに違いない。そして、成長期という子役と女優の間に立つ難しい時期をきっと乗り越えていくことだろう。(文=本 手)