<CIA協力者を殺害し日本人を人質に取る、「遠交近攻」を逸脱して膨張する習政権に国際社会は警戒を強めている>

遠きと交わり、近きを攻める――。「遠交近攻」は古来、中国で覇権を争う諸国が生き抜くための外交の要だった。

遠くの国には友好を掲げて安心させ、近隣の国々を侵食し併合する。こうして覇権国家となると、遠方にあったかつての友好国ものみ込む。まさに分裂と統一が繰り返されてきた歴史から得られた論理と言える。

現代の中国共産党政権においても、その論理は形を変えながら脈々と受け継がれている。反日の共同戦線を組んできた韓国が北朝鮮の脅威を前にアメリカに頼るようになると、そこに米韓の「遠交」の脅威を見た中国は「近攻」に急変。5月中旬の「一帯一路」国際会議でも早くから北朝鮮を招待する一方、韓国に対しては左派政権が発足する開催直前まで招待を見合わせるなどの外交攻勢をかけた。

「近攻」は南方にも及んでいる。一帯一路国際会議に参加したフィリピンのドゥテルテ大統領が南シナ海の油田掘削を主張したところ、習近平(シー・チンピン)国家主席は「戦争になる」と警告。投資を引き出そうと中国に笑顔を振りまいてきたドゥテルテに冷や水を浴びせた。

こうした冷遇は中国が同胞と見なす「小国」台湾も同様だ。「全ての人と国に公平に医療機会を提供する」という国連の精神など眼中にないかのように、5月下旬にスイスで開かれたWHO総会への台湾参加を妨害。

一方で同時期に中国との統一を志向する国民党が呉敦義(ウー・トゥンイー)を新主席に選出すると、習自ら祝電を打って祝った。独立志向の強い民進党の蔡英文(ツァイ・インウェン)政権を窮地に追い込み、台湾国内の分断を図る謀略だ。

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親中派の議員を熱烈歓迎

こうした「近攻」の一方で、中国は近年「遠交」よりも「遠攻」を志向しているようだ。既に対米政策は冷戦時代のスパイ映画さながらの摩擦を生んでいる。ニューヨーク・タイムズ紙によると、中国は10〜12年の間に少なくとも12人ものCIA情報提供者を殺害したという。

中国外務省の報道官は、「中国の安全と利益を脅かす組織と人員への調査と処罰は当然の権利」と主張して事実を認めた。中国共産党系の「環球時報」紙も「わが国のスパイ防止作戦の成果は素晴らしい」と称賛の社説を載せた。アメリカのような超大国に対してさえ、「交渉せずに攻める」姿勢を示している。

[2017.6. 6号掲載]

楊海英(本誌コラムニスト)