柏レイソルの勢いが止まらない。難敵・浦和レッズをホームに迎えたJ1リーグ第14節。柏は前半終了間際に奪った虎の子の1点を守り抜き、ついに8連勝を達成。勝ち点を30に伸ばし、前節に奪った首位の座をしっかりと守り抜いた。


日本代表にも初招集された柏の守護神・中村航輔 この勝利の裏には、特異なふたつの才能があった。ひとつはMF中川寛斗の献身。もうひとつがGK中村航輔の圧巻のセービング力だ。もちろん、細部を詰めればピッチ上にはさまざまな駆け引きがあり、勝負を分けたポイントはいくつか存在するだろう。しかし極論すれば、このふたりの示したパフォーマンスこそが、浦和撃破の最大の要因となったのだ。

 身長155cmの中川は、Jリーグでもっとも小さな選手である。ただ、小柄ながらもがっしりとした身体つきで、技術とスピード、そしてパワフルさを兼ね備えている。

 前半終了間際にゴールを奪ったのはこの中川だったが、決して得点を奪ったことだけが彼を評価する理由ではない。90分間、絶え間なく走り、前線から浦和にプレッシャーをかけ続ける。そのハイプレスの徹底こそが、浦和の攻撃から自由度を奪っていたのだ。

 柏の下平隆宏監督は、この試合を迎えるにあたり、ひとつの選択をしていた。

「攻撃力の高い浦和さんにボールを持たれると厳しいというのは、どのチームにも共通していること。その浦和さんにいかにボールを持たせないか。そのために、プレッシャーをかけ続けることを選択しました」

 後方にブロックを敷いて対応するのではなく、出どころを抑えるために前からプレスをかける。ポゼッション能力に長ける浦和攻略の常とう手段ではあるものの、それを貫徹するのは難しい。ところが柏は中川を中心に、その難易度の高いミッションを見事にクリアしてみせたのだ。

 試合後、その献身ぶりを称えられた中川は、自身も走り切ったという実感があったのだろう。「何km走ってましたか?」と記者に逆質問するほどだった。

「相手にはうまい選手がいっぱいいるので、サボらず走り続けることが大事だと思っていました。ハイプレスだけじゃなく、プレスバックもしっかりできた。続けることで、勝利の確率を上げることができたと思います」

 浦和の武器のひとつであるGK西川周作からのロングフィードも、中川がプレスをかけることで、その精度を低下させた。執拗にボールを追う姿は、まるで最前線のディフェンダーである。「柏のハイプレスを剥がす動きが足りずに後ろからつなげず、ロングボールが多くなってしまった」と浦和のDF槙野智章が敗因を語ったように、この試合で果たした中川の功績はあまりにも大きかった。結果的に中川は、両チームトップの12.427kmを走っている。

 もうひとつの異能を示した中村は、昨年のリオ五輪にも出場した若手ナンバーワンのGKとしてすでに認知されており、このたび満を持して日本代表にも初招集された。184cmとGKとしては決して大きくはないものの、最大の特長は鋭い反射神経を生かしたセービングにある。この日も圧巻のセーブを連発し、文字どおり柏のゴールに鍵をかけた。

 37分にDF森脇良太の強烈なミドルを俊敏な動きで枠外にはじき出すと、54分にはMF関根貴大の至近距離からの一撃を完璧にブロック。73分にはエリア内から放たれたFW興梠慎三のボレーシュートも見事に食い止めた。いずれも、決まったと思われたシーンである。

 まさに鬼神のごとく、柏のゴールマウスに立ちはだかった中村は、後半立ち上がりのPKの場面でも名GKの佇(たたず)まいをかもし、冷静な対応を見せた。

 キッカーはリーグ得点王の興梠。「スカウティングもしてますし、リオ五輪で一緒に戦った仲間ですので、選手の情報はわかっていました」という中村は、興梠の動きをしっかり見極め、右にフェイク。読まれたと思った興梠は逆方向に蹴ったものの、ボールを大きく枠の外に外してしまった。

「ゴールはイメージで決まる」。元日本代表FWから、そんなフレーズを聞いたことがある。「ゴールが小さく見える」。ノッているGKと対峙すると、そんな錯覚に陥ることがあるとも、そのFWは言っていた。あるいはこの場面、目の前に立ちはだかる中村の威圧感を受け、興梠はゴールが小さく見え、得点のイメージを持てなかったのかもしれない。

 GKでありながら、これほどの存在感を放つ選手は稀有(けう)だろう。近い将来、日本代表のゴールマウスに立っていることが容易に想像できる、中村のパフォーマンスだった。

 もちろんこのふたりだけではなく、柏の選手たちは全員が躍動的だった。この日のスタメン平均年齢は24.18歳。若さゆえの勢いが、今の柏の原動力となっているだろう。

 実は、柏は昨シーズンも若手が大いに躍動し、1stステージ第6節から第10節まで5連勝を達成。しかしその後に失速し、ステージ優勝争いから脱落した経験がある。

 その”若気の至り”はおそらく、今季の戦いにおける教訓となっているはずだ。浦和相手の堂々とした戦いぶりからは、勢いだけでなく、真の実力が備わり始めているように感じられた。

「去年は半信半疑だったけどさぁ、今年はいけるよぉ!」

 観客席ではそんな言葉が響いていた。上機嫌に叫ぶ熱狂的なサポーターも、どうやら今年は違うと感じているようだ。シーズンはまだ半分も終わっておらず、現実はそれほど甘くはないだろう。しかし、今の柏は夢を見られるチームである。それは断言できる。

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