場所・時間にとらわれない柔軟な働き方

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2016年9月16日、政府は「働き方改革実現会議」を設置した。最大の焦点のひとつが「長時間労働の是正」であり、そのカギのひとつが在宅勤務の推進だ。制度導入で私たちの仕事は、暮らしは、どう変わるのか?

■安倍総理が口にした「テレワーク

「目指すは戦後最大のGDP600兆円。さらには、希望出生率1.8、介護離職ゼロ。この3つの『的』に向かって『1億総活躍』の旗を一層高く掲げ、安倍内閣は『未来』への挑戦を続けていきます。その最大のチャレンジは、『働き方改革』であります」

安倍晋三総理大臣が2016年8月3日の内閣改造を受けた記者会見において、「最大のチャレンジ」と表現した「働き方改革」。「長時間労働の是正」「非正規雇用という言葉の一掃」がうたわれ、加藤勝信1億総活躍担当大臣が働き方改革担当大臣を兼務することになった。そして、この1億総活躍・働き方改革を考えるうえで重要なキーワードは、実は約3年半前の施政方針演説で、すでに安倍総理大臣の口から語られている。

そのキーワードとは「テレワーク」だ。「tele=離れたところで」「work=働く」を組み合わせた造語で「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」を意味する。つまり、自宅やカフェ、サテライトオフィスなど、会社と離れた場所で仕事をする働き方を指す。今年に入り、三菱東京UFJ銀行、三井物産など、日本を代表する大企業が相次いで導入。なぜ、急速に機運が高まっているのか。

一般社団法人日本テレワーク協会会長の宇治則孝氏は、その理由を3つ挙げる。

1つはICTの進歩だ。近年、インターネットを使うためのインフラや端末、そのためのセキュリティ技術を、格段に便利に、安価で利用できるようになった。

データをサーバー上に保存し、パソコンやスマートフォンなど、さまざまな端末から自由にアクセスできる、というクラウドの概念が浸透したことも大きい。

2つ目に2011年に起こった東日本大震災の影響を挙げる。

「震災後、『節電のために自宅で仕事をしましょう』という流れが生まれた。また、BCP(事業継続計画)の観点から、緊急事態が起こったときに、仕事ができるような仕組みを企業も考えるようになりました」(宇治氏)

3つ目は女性活躍を推進する動きだ。背景には人口減少がある。「労働力の確保のために、女性の活躍に代表されるような多様な働き方を実現する、というムーブメントが世の中に起きている」と宇治氏は指摘する。

■アメリカの導入率は日本の5倍超

在宅勤務をはじめとしたテレワークは、さらに増えるのか。

「確実に増えるでしょう。テレワークを導入している日本企業は、全体の16%しかありません。アメリカの導入率は83%。しかも、ほぼすべての就業日にオフィス外で働く『常時テレワーク』の導入率も34%に上ります。日本では、大企業の導入が増えているものの、中小企業の導入率が低いのが特徴です。今後、裾野は広がっていくでしょう」(宇治氏)

在宅勤務を「企業にとっては、生産性を向上させる秘訣であり、個人にとっては、働き方を柔軟に選択できるオプションである」と宇治氏は続ける。

が、はたして本当か。もし、自分の会社で制度が始まって、自宅で仕事をするようになったら、サボってしまうんじゃないか。上司とのやり取りが面倒になるんじゃないか。給料も減ってしまうんじゃないか……。

次回からはすでに制度を導入し、運用している3社の社員の声を中心に、在宅勤務のリアルに迫る。

(朽木 誠一郎 写真=amanaimages)