「Thinkstock」より

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 厚生労働省医薬・生活衛生局は3月21日、催眠鎮静剤、抗不安薬、抗てんかん薬で使用されるベンゾジアゼピン受容体作動薬などの医療用医薬品について、依存性が生じることがあるとの旨を注意喚起し、該当医薬品の添付文書を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知した。

 専門的な内容で、一般の読者にとってはピンとこないだろう。要は、国がベンゾジアゼピン系受容体作動薬という薬について、依存性があるとの注意喚起を促したということ。ベンゾジアゼピン系受容体作動薬は、「マイスリー」「ハルシオン」などに代表される睡眠薬のほか、抗不安薬の「デパス」も有名だ。

 不眠や不安、頭痛などの症状に対して汎用されてきたデパス(一般名:エチゾラム)は、ベンゾジアゼピン系受容体作動薬のひとつだ。田辺三菱製薬(旧吉富製薬)が開発し、商品名・デパスとして1983年9月に承認され、その後、1984年3月に発売されたが、分類は普通薬だった。しかし2016年10月14日、「麻薬及び向精神薬取締法」(麻薬取締法)により、向精神薬に指定された。

 その背景には、日本における薬物乱用の高位にデパスがランクインしているという事実がある。また、複数科の受診を受ける高齢者への重複投与などが多く発生している現状が理由となっている。麻薬取締法により規制されたということは、危険な薬と認識されていることを意味する。その一番の危険性は、依存性といえるだろう。

 ベンゾジアゼピン系は、脳にあるGABA-A受容体に存在するベンゾジアゼピン受容体に作用し、その働きを増強する。GABA-A受容体は、脳の働きを抑制することから、「抑制系受容体」と呼ばれる。その作用は、催眠作用、抗不安作用、筋弛緩作用、抗けいれん作用で不安・焦燥・緊張などを呈する症状に効果を示す。したがって、睡眠障害のほか緊張性の頭痛や筋肉の痛みの改善や抗不安薬として処方される。服用した経験がある人も少なくないだろう。

 実際のところ、ベンゾジアゼピン受容体作動薬では、覚せい剤や大麻のような強い依存性は起きにくい。それは、服用によって多幸感や興奮をもたらすことがないからだ。

 では、ベンゾジアゼピン受容体作動薬で起きる依存はどのようなものなのか。そもそも、依存には精神的依存と身体的依存があり、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、身体的依存が生じる傾向が強いといえる。例えば、不眠で長期間マイスリーやハルシオンを服用した場合、服用を中止すると「反跳性不眠」と呼ばれる強い不眠症状が現れることが多い。そのため服用を再開することになり、結果として薬なしでは寝付けないといった状況に陥る。薬を中止する際は、長いスパンで徐々に減薬していくことが大切だ。

 常用量を医師の指示通りに服用した場合でも、依存が起きる可能性がある。ベンゾジアゼピン系受容体作動薬の服用を長期間続けると、脳は薬の作用を受けた状態を「普通」ととらえ、その状態の体を保つようになる。そこで突然、薬の服用を中止すると、体は「普通」を保てなくなり、さまざまな不調となって現れるのだ。

 本来、医師はベンゾジアゼピン受容体作動薬の漫然とした長期連用を避けるべきで、類似薬の重複処方や多剤併用に十分留意して処方しなければならない。だが現状は、そういった医師としての義務を怠っているケースも多く見受けられる。筆者は薬剤師として医療現場にいるが、患者がお薬手帳の提示をしているにもかかわらず、しっかりと見ていない医者が多くいるのは事実で、そういった医師の意識改革は、医療現場での今後の課題のひとつといえるだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師)