東京の女性たちは勘違いをしているかもしれない。

結婚できれば、それでハッピーエンドだと。

だが、生活を共にし始めてからが本番だ。結婚した後は、夫婦生活を継続するための「結婚維持活動」が必要である。

ー人間は判断力の欠如によって結婚し、 忍耐力の欠如によって離婚し、 記憶力の欠如によって再婚する。

フランスの劇作家、アルマン・サラクルーの言葉のように、「結婚維持」のキーワードは果たして、忍耐なのか?

この連載では、東京で「結婚維持活動」に勤しむリアルな夫婦の姿をお届けしよう。

今週は、DINKSカップルの妻・いずみの夫である、聡の結婚維持活動についての告白だ。




<今週の結婚維持活動に励む夫>
名前:聡
年齢:35歳
職業:外資系消費財メーカー→同業界内で転職
結婚生活:5年目


美人で稼げる、自慢の妻。


妻に対する不満っていうのがね、あったわけじゃないんですよ。

いずみは美人だし、結婚当初から太ったりして外見が劣化するわけでもなく、33歳にしては若く見える。

それでいて自分でもそこらの男くらい稼いできますからね。本当、できた妻だと思います。

僕は大学入学の時に上京してきたんですけど、いずみは生粋の東京生まれ東京育ち。

新卒で同じ会社に入ったのですが、どこか他の新入社員とは違う垢抜けた感じがいいな、とずっと目をつけてたくらいですから。

会社のやつはみんなどんどん結婚していったし、外資でしたが当時の上司もほとんど既婚で。特に迷わず、付き合って1年目には結婚の話が出ました。

彼女の欠点ですか?うーん、まぁ…どうですかね。全くないと言えば嘘になりますけど…。


美人で稼げる妻に、欠点などあるのか?


自分の意見をハッキリ言いすぎるのは否?


彼女、本当に自分の意見がある女性なんですよ。

結婚当初から「子供は好きじゃないから、作らないよ。」とずっと釘を刺されていましたし。

その時は、こんないい女を逃したらバカだろ、って思ってとりあえず僕も意見を合わせてたんですけど。

あの時は自分が父親になる姿なんて、想像できなかったですしね。

でもやっぱり、周りのやつがどんどん父親になってくのを見てると、いろいろ思うところが出てきまして。

1番堪えたのは、弟に子供ができたときでしょうかね。

僕は3人兄弟の次男だし、田舎でも別に跡継ぎとかではないんですけど、自分の弟に先を越されるっていうのが、兄としては結構、精神的にキツかった。

うちの親はおおらかですが古風な人間なんで、妻と田舎に帰省したりするとそれとなく子供の話とかを出しちゃうんですよね。いや、悪気とかは全くないんです、うちのお袋は。

そもそも子供のこと聞くのなんて、別に普通ですよね?




でも、いずみってそういう時、すぐ顔に出るんです。

僕の親に対してムスッとした態度とっただけじゃなく、東京に帰ってからもものすごい剣幕で責め立ててきたんですよ。

「なんであの時カバーしてくれなかったの?!」って。子供を持たないのは、2人で決めたことじゃないか、って。

まぁその通りではあるので、仕方なく聞いていたんですけど。自分の中では、色々と溜まっていきました。

その後も、例えば部屋の中が凄く荒れてきたりするじゃないですか。

そういう時、自分としては、なんで子供もいないのに部屋がこんなに荒れてるんだよ、って思うわけです。

自慢じゃないですけど、僕の家は田舎ということもあってかなり広いのに、お袋は子供3人を育てながらも常に家を綺麗にしてました。

フルタイムの仕事は大変ですけど、子供3人育てるのも同じ負荷だろうと思うんですよ。

だから、それくらいできないのかってぽろっと言ったらもう、ヒステリーを起こしてしまって。

本人は論理的に、理路整然と喋ってるつもりなんでしょうけど、なんか、自分で作ったチャートみたいな資料見せつけられて、嫌なら家政婦雇えとか、ひどく感情的になってましたね。

あの時が、1番酷い喧嘩だったと思います。

その後はとりあえず、適当な飲み屋の女の子と遊んでなんとか怒りを抑えましたけど。

それ以来、自分はなんで結婚し続けているんだろう、子供もいないのに…って思うことが増えましたね。

いずみは、いくら美人とはいえ言い方もかなりキツイし、価値観も微妙にズレてきて。多分、僕が守ってやらなくても生きていけるんじゃないかな、と。

美人でもなく稼いでこなくてもいいから、普通に若くて子供産んでくれる女性と結婚した方が良かったんじゃないか、と思ったことも1度や2度ではありません。

何より、兄貴ならともかく、弟ができてることを僕ができないっていうのが癪でしたね。お袋にも、やっぱり聡の子供も見たい、って言われてましたし。

当時はかなり真剣に、いや、本気で離婚を考えていました。


そんな夫を変えたきっかけとは?


男としての自信を取り戻す。


あの頃は、ちょうど社内でくすぶっていた時期とも重なり、夫婦関係はかなり最悪でした。

仲が良い時に一緒に契約したジムも、一緒にいるのが嫌でいかなくなったり。

顔を見ると文句言われそうで、なんとなく男としての自信まで無くしそうで、妻を避けてました。

ただ、僕その後転職したんですよ。

同じ外資で、業界内なんですけど大分ランクの上がる会社です。職場は中目黒とかなり遠くはなりましたが、最寄駅から30分程度ですし、通勤はそう大変ではありません。

何より、管理職ではないものの入社時にかなり交渉したのでまずまずの額の年収が担保できたことで精神的に大分落ち着きました。

前の会社と違って未婚の男女も多く、子供がいないこともそんなに気にならない。今はここで頑張って成果を出したい一心ですね。

転職が決まった時に、いずみと『THE CHINOIS Taste of Canton』を予約したんですよ。




2人で外食したのも久々でしたし、こんな風に煌びやかな空間で贅沢に中華を楽しむ、なんてことはやっぱり子供のいない僕達にしか出来ない楽しみかもしれない、なんて思えるようになりました。

非日常感漂うレストランの内装に少しも引けを取らない、クラス感のある美しい妻を見つめていると、あぁ、やっぱり僕はこの女性で選んで正解だったんだな、とも思わせられましたね。

やっぱり転職がきっかけだったかな。

仕事がうまくいってるのもあって、それ以降いずみとの関係は好転したんです。

男ってやっぱり、仕事の出来不出来がプライベートにもかなり影響出てきちゃうと思うんで、彼女には申し訳なかったかもしれません。

旅行に行っても、相手にしてやれないことも多かったですしね。

100%妻を養っているわけでもない僕なので、「夫って何なんだろう」とか考え込んでしまった時期もありましたが、今は大分落ち着きました。

何より僕も仕事が忙しく、会社も変わったので平日はほとんどすれ違いなんですよ。

だから、2週間に1度はディナーの約束をして2人の時間を作るようにしてます。

そういう時間を楽しんでいると、田舎のお袋が言ってることとか、弟のこととか、会社のゴタゴタとかそういうのもあまり気にならなくなりますから。

まぁ、長い人生また色々あるんでしょうけど、1度危機を乗り越えられた僕達なので、これからも大丈夫なんじゃないかな、と思います。

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一見優雅な生活を送る、専業主婦の結婚維持活動とは